2018/12/21発行 ジャピオン998号掲載記事

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舞台通して初心にかえれた
俳優、映画製作者 本田真穂

俳優としては、オフブロードウェーの「Time’s Journey Through a Room」の公演、ネットフリックス制作ドラマ「Maniac」への出演。主演、プロデュース作品では、短編映画「First Samurai in New York」が12の映画祭で上演され四つの賞を受賞、ウェブドラマ「報道バズ」のクラウドファンディングの成功もあった。いかにも飛躍の年に見えるが、自身は、「特別という意識はあまりない」という。目の前にあることに全力で挑み、コツコツ積み上げる姿勢は来米当初から変わらない。

ただ、「Time’s~」は、「1年にいくつか、『これを取れなかったら俳優を辞めた方がいい』と思う仕事があるのですが、その一つでした」と振り返る。数カ月全力で取り組み、文字通り体力勝負。約6キロほど体重を減らし、周囲からそれを指摘されて初めて、「今年は頑張ったのかな」と思ったと笑う。

日本での芸能活動を経て、2009年に演技の勉強のため来米し、来年6月でちょうど10年になる。

「初めに目指していた場所、考えていたことはあまり実現していない。自分で何かを、日本向けに何かを作るとも思っていなかった」という。

舞台演技を学校で学んだ後、ブロードウェーの舞台のオーディションも受けたが、成果が出ず、活動を映像に絞った。「組合員が優先だったり、アジア人の役が少なく、オーディションすらそうそう受けられないって、10年前に言われてたら挫けて帰っていたかな。それが分からなかったし、日本の仕事をすべて辞めて来たことを無駄だと思いたくなかったし、不確定だからこそパワーが出て続けてきた」

今回の舞台への出演は特別な時間だった。「映像の現場はシーンの感情のつながりもばらばらで撮影します。でも舞台は毎回一貫したジャーニーを楽しめるのがぜいたくな時間でした。体力のなさとか、課題も感じる一方で、舞台演技の楽しさも思い出しました」

「First~」の撮影は2年ほど前、今観ると「演技も殺陣も、自分の実力以上のものが映っている」と感じる。「監督、共演者、そして殺陣(たて)を指導した香純恭さんたちチームが映画のために力を尽くしてくれたんだと思うと、謙虚な気持ちになった」

初心にかえれたことがこの1年で一番大きな成果かもしれないという。これまで活動の節目ごとに自身のすべきこと、立ち位置を確認し、そのたびにモチベーションを新たにしてきた。「ちょっとずついろいろ動いている」と実感はある。

今後も目の前のことに全力で挑む姿勢を崩さず、俳優業にもプロデュース業にもますます力を入れていきたい。

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本田真穂
2009年来米。今年はオフブロードウェーの舞台「Time’s Journey Through a Room」、ドラマ「Maniac」(ネットフリックス)に出演。主演、プロデュースした短編映画「First Samurai in New York」が数々の映画賞を受賞した。インスタグラム@mahohonda_
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(写真上)「Time’s Journey Through a Room」の舞台(同下)「報道バズ」の撮影現場


海外で殺陣を存分に広める
映画製作者、殺陣師 香純恭

プロデューサー、殺陣師として参加した短編映画「First Samurai in New York」が今年12の映画祭で上映され四つの賞を受賞した。1860年のニューヨークに移住した武士の一家の話で、女性の主人公が繰り出す本格的な殺陣(たて)が魅力の一つ。

「ちいさな短編ですが、賞をいただいたとき、やってきたことを肯定され、『海外で殺陣を広めていいんだよ』と背中を押された気がしました」

5年前、風の噂で「殺陣師がいる」と聞き付けた親子が自宅を訪ねてきた。「カンフーでは世界レベルの男の子で1時間ほど教えたら、夜に『どうしても習いたい』と連絡してきました。私が日本で初めて殺陣を習ったとき、『これが私の世界だ』と衝撃を受けたのと同じだと。こんな子が海外に一人でもいるのならやらなきゃ」。家族に無断で自宅の地下室を改築、道場を始めた。

「殺陣」とは映画や舞台での戦闘シーンに用いられる格闘を見せる技術で、刀の使い方だけでなく武士道の精神や所作も学ぶ。生徒が少しずつ増える一方で「刀を使うけど嘘の武道」「女性が武士というのはおかしい」と言われることも多かった。

6月、国連の要請で、平和を考えるための行事に参加し、武士としての所作を各国大使の前で実演する機会があった。最初は刀の借用の依頼だったが、最終的には香純さんが女性の武士としての所作を実演することになった。武器の刀を侍女に預け、にじり口から入り、位や宗教、人種も関係ない茶室という空間で茶を一緒にいただくという趣向だ。

「抗争する国同士や女性差別が残る国の代表に、疑問と提案を投げ掛ける意味で、女性の武士が所作を見せることに意味があったと思います」

以降、「女性なのに」という雑音は聞かなくなった。さらにこの後、世間では女性の権利を求める運動が盛んになった。「タイミングだったのかもしれないですね」と振り返る。

今年はプリンストン大学をはじめ、教育機関での講義の依頼も増えた。「講義は英語なので丸暗記です」と苦笑いする。殺陣を広めるためにはどんな苦労もいとわない覚悟だ。2019年には映像作品の制作にさらに力を注ぎたい。そして立ち返るのは道場での指導だとも。

「殺陣はお互いが尊重し相手を思いやる気持ちがないとうまくいかないんです」と香純さん。それを稽古で身に付けることで人としても成長し自信を持てるようになる。道場を開いてから4年、子供たちの成長を見てもそう思う。

「自分の道場を広げるというより、殺陣の楽しさを広げたい」


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香純恭(かすみ・きょう)
東京都出身。1995年にホリプロ所属。98年藝道殺陣波濤流高瀬道場に入門。テレビ、舞台での活動を経て2012年来米。14年に殺陣波濤流NY設立。殺陣師、映画プロデューサーとして活動。
www.tate-hatoryuny.com

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(写真上)国連での催しの様子(同下)アルテミス女性アクション映画祭では、武器を持った戦い部門最優秀賞を受賞



視野広げるきっかけ作り
ダンサー 中澤利彦

4年目の「TheRide」の出演他、11月には舞台、「Grindhouse the Ballet」に出演するなどニューヨークでの活動も継続している。

しかし、自身が今年の飛躍と捉えるのは当地での活動と並行して2013年から取り組む日本での「教育事業」だ。

子供たちのキャリア教育の一環として、日本で学校や教育施設を訪れ、ダンス公演や講演会を通じて自身の経験を伝える活動を続けている。かつて教師を目指していたことが背景にある。今年は例年の活動に加え、日本の文化庁による学校巡回事業「これがヒップホップダンス!」に初参加。愛知、岐阜、神奈川、静岡など21カ所の学校で公演を行った。活動の幅が広がったという。

「米国と違い、日本の学校はまだ文化事業にお金を払うことに消極的です。でもこれまでも請われれば交通費のみの条件でも公演や講演会をやってきました。実際には交通費としてすら足りないこともありますが、僕が前例を作れば、続く人が増えるかもしれない」

今回の国の事業への参加は、規模の違いはもちろん金銭面での支援も大きかった。今年初頭にNPO団体カルティベイトの代表から声が掛かり参加が決まった。「これまでの活動をきちんと誰かが見てくれていた」と実感した。

目標は踊り方や技術を教えることではなく、世界への視野を広げてもらうこと。

「自分が来るまで知らなかったこと、ダンスのこと、海外で暮らす実体験。そうした話ができる教師は日本ではなかなかいないですから。刺激を受けてダンスを始めてくれるのもうれしいですが、海外に出ること、好きなものを仕事にすることについて考えてほしい。進むことを決めるのは本人ですが、視野を広げるきっかけを作りたい」

「モチベーションを0から0・1へ上げること」が自分の役割と実感した1年だった。「細胞レベルで自分はこういうことが好きだと改めて思った」

2019年もニューヨークと日本での両輪の活動が続く。


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中澤利彦
新潟県出身。大学を卒業後、飲食店に勤務。2010年11月に来米。12、13年に「So You Think You Can Dance」、2014年から「The Ride」に出演中。日本での教育事業も積極的取り組む。
www.toshihikonakazawa.com

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(写真上)日本で行なっている講演会での様子(同下)2014年から続けている「The Ride」(© Triangle NY)



その場でしか生まれない感動
イベントプロデューサー 河野洋

今年、新たな取り組みはシンガーソングライター、Ka―Na(植村花菜)のマネジメント、NPO団体、「CATCHUSパフォーミングアーツ」の副代表理事への就任、ニッポン・アメリカ・ディスカバリー映画祭の立ち上げ。まさに獅子奮迅の活躍だった。

さらに今年はレコードレーベルとして会社を立ち上げてから15年、イベント事業を始めて10年という節目の年でもあり、撒いてきた種が花開いた1年だったと実感しているという。

「ようやくスタート地点に立てたという気持ち。これまで求められれば赴いて話を聞いて、の繰り返し。あちこちに点在する小さな芽をどうつなげたら線にできるか考えてきました。その中で大切なのはやはり人とのつながり。地道にやってきて周りから信頼を得て、僕だから開けてもらえるドアが増えたのかなと思います」

10年前、音楽の枠を超えて、より広範囲なイベント事業を手掛けることを決めたときに抱いた思いが今も根底にある。既製品や複製できるものは、「それが生み出される瞬間を捉えられない」。その場所で、その時にしか体験できない、ライブイベントでしか生まれない感動を伝えることが自身のライフワークだと感じた。

「感動が伝えられるものは、人を動かすと思っています。感動した人はそれをさらに伝えるために次のアクションを起こす。既製品はどうしてもキレイに補正されてしまいザラザラ感がなくなる。キレイなものは感心はするけど感動はしない」

大切なのは「継続」。「継続」でしか人と人をつなぐコミュニティーはつくれない。12年に立ち上げた独立系の短編映画祭、ニューヨーク・ジャパン・シネフェストは7年目。09年から始めた音楽イベント、「Jサミットニューヨーク」はすでに40回を超える。 

「人間の作るものは面白い。よくこんなこと考え付くなという人がまだまだいっぱいいる。もっとつなげていきたい」

2019年も継続がテーマだ。


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河野洋
愛知県出身。2003年にレコード会社「Mar Creation, Inc.」を設立。08年からイベント事業を手掛ける。CineFest、アーティストマネジメント、音楽、映像制作など、エンターテインメントに関連するサービスを提供。
www.marcreation.com

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(写真上)今年で7年目のCineFestの舞台あいさつ(同下)1月に発売されるKa-NaのEP。1月25日にライブを開催



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