2018/07/27発行 ジャピオン977号掲載記事


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日本からの挑戦者
世界のエンタメの中心で歌う。オープンマイクはそんな夢を叶えてくれる貴重な場。日本から挑戦に来る人にも門戸を開いている。

香里さん(大阪在住・主婦)

「ハロー、エブリワン! アイム・フロム・オオサカ!」

ピンクのヘアで元気にステージに飛び出したのは、愛称「マヨネーズ」こと香里さん。大阪在住の主婦で、当地に留学中の娘の部屋で長期滞在している。

「アニソンや昭和のポップスが大好きで、3年前アラフィフ・アイドルとしてデビューしました。同世代の女性3人組のユニットを作り関西圏で活動しましたが、いろいろな事情で最近グループを解散しました」

同じ頃、10年勤めた図書館の仕事も退職した。子供たちは成人し、圧倒的に自由な時間が増えた。ふとニューヨークに行ってみたくなった。「タイムズスクエアや本場ブロードウェーのライブで歌うのが夢でした」と香里さん。

劇場街の裏にあるライブハウス「ドン・テル・ママ」(ライザ・ミネリやベット・ミドラーも若い頃歌った名店)で行われる毎晩9時からのオープンマイクの存在を知って、飛び入りを決意したのが1週間前のこと。曲はミュージカル「ジャージー・ボーイズ」でも有名な「Can’t Take My Eyes off You(君の瞳に恋してる)」に決めた。1967年、フランキー・ヴァリの大ヒット曲。「私は80年代にディスコ調のカバーで知りました。アメリカへの憧れをかきたてた思い出の歌です」

ユーチューブでの映像と首引きで毎日3時間以上特訓。アメリカ人に発音を直してもらい、娘からは何度もダメ出しを食らった。「でも、やるしかない。せっかくニューヨークに来ているのだもの!」

当日は午後8時からタイムズスクエアにある楽器店の片隅で最終音合わせ。9時少し前に会場入りすると、専属ピアニストの弾き語りで早くも店内は盛り上がっている。親切なウエーターが教えてくれた。「キミ歌うのかい?グレート!曲名をナプキンに書いてチップと一緒にピアノの上の鉢に入れてね」

ビリー・ジョエルやエルトン・ジョンの歌がひとしきり続くと突然、「次は、マヨネーズさんの登場で〜す」の呼び出し。なんと今夜のトップバッターだ。

「♪ユー・アー・トゥー・グッド・トゥー・ビー・トゥルー」

歌い出しでは、ちょっと迷ったが、すぐに伴奏に慣れた香里さん。有名な間奏のフレーズで客席はグッと盛り上がり、サビの「アイ・ラブ・ユー・ベイビー」は、店内大合唱。3分弱のパフォーマンスはあっという間に終わった。

「楽しかったあ!思っていたほど緊張しませんでした」。興奮覚めやらぬまま席に戻った香里さんに、周囲の客が握手を求める。

「よかったわよ」「かわいい」「盛り上がったね」。店員たちも口々に温かい言葉をくれる。「日本に帰ったら今度はソロで活動してみようと思います。今夜のステージで勇気をもらいました」

ニューヨークの舞台は、アラフィフ・アイドルに新しいページを「オープン」させたようだ。

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ナプキンに曲名を書いてチップとともに鉢に入れて、リクエストする
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緊張のニューヨーク初舞台。サビの部分では、店内が大合唱になった

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歌い終わると、「よかったよ」と客が声を掛けてくれた

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香里さんの初舞台には、留学中の娘さんも駆けつけた
Don’t Tell Mama
343 W. 46th St.
TEL: 212-757-0788
www.donttellmamanyc.com


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熱田慶子さん(神奈川在住/薬剤師)
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熱田さんがダイアナ・ロスの名曲、「If We Hold on Together」を、ニューヨークの観客の前で歌い上げたのは昨年5月のこと。 ミュージカルとその楽曲が好きで、1999年からボイストレーニングを始めた。「2005年にニューヨークを訪れて以来、2、3年に1度、観劇とボイストレーニングを受けるために訪れていました。数年前から『ニューヨークで歌いたい』と思うようになりました」。それからは毎日練習を重ねた。

そして迎えた本番。「出番前には吐きそうなほど緊張して、『何でこんな無謀なチャレンジを』と思いました」。しかし、始まってしまえばピアノの音に声を委ね無心で歌った。歌いながら、じっと歌に耳を傾ける客の姿も見え、舞台から降りると、「よかった」と声を掛けてくれる人も。「音楽が世界共通言語だと改めて感じました」

「ニューヨークで歌う自分」を実現したことで、「この街でライブをする」という夢に近づいたと喜ぶ。「当たって砕けろ! くらいの勢いでいいのではないかなと思います」

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浜口祐夢さん(東京在住/アーティスト、プロデューサー)

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初めてニューヨークを訪れ、この街に恋をして以来、自身の誕生日には毎年ここを訪れている。昨年10月にオープンマイクに挑戦したのは、日本でアーティストとして活動する浜口さんにとって、「シンガーとして世界に通用するか知りたかった」という思いからだった。

選んだ曲はブルーノ・マーズのヒット曲「Talking To The Moon」。「来米1カ月前から、自分のライブのときより練習しました」と笑う。日本では何度となく舞台に立っている浜口さんも、本番前には緊張したという。ワンコーラスが歌った後、観客の声援と拍手に鳥肌が立ったと語る。

「英語があまり上手ではありませんでしたが、音はやはり人種を超えて伝わるんだなと思った。また必死さや思いを受け入れてくれるニューヨーカーの懐の深さも感じました。『これがニューヨークだ』という実感と、夢を叶えたうれしさが一緒になった瞬間でした」

「何事も挑戦することが大切」と浜口さん。「自分が勝手に敷居を上げていたり、勝手に思い込んでいたりすることが多いけど、自分は自分でしかない。人の顔色や、状況をうかがったりする必要なんてないんだって事を知りました。人生は一度きりです」と浜口さんは、力強く語った。

www.facebook.com/Youmuhamaguchi-645238795502238



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