2018/07/27発行 ジャピオン977号掲載記事

Pages:      

毎回新たな刺激と出会い
大山栄作さん(NY在住/医師)

 「参加するたびに新たな刺激を受けます」とオープンマイクの魅力を語るのはニューヨーク在住歴11年の大山栄作さん。本業は精神科医だ。

 日曜日の夕方、ハーレムにある「シュライン・ワールド・ミュージック・ベニュー」に、ポロシャツにジーンズ姿のリラックスした格好の大山さんが、にこやかな笑顔を浮かべながら現れた。手にはサックスの入ったケース。

 エスニックのお面が壁いっぱいに飾られ、どこか神聖な雰囲気の店内はほぼ満席。オープンマイクのジャムセッションは毎週日曜日午後6時から8時。レギュラーバンドの演奏が終わり、ボーカルの女性が、「奏者はステージに上がって」とアナウンスし、オープンマイクがスタートした。

 サックスを手に大山さんがステージに上がる。それまでの柔和な表情から一転、真剣なまなざしで共演者らと音合わせを始める。

音楽で縮まる距離

 3年前、初めてシュラインのオープンマイクに参加。2週間に1度は来店している。この日共演した5人のうち、4人とは初顔合わせで、演奏曲は直前に決まる。まずは「All the Things You Are」、あとの2曲は、1曲目の後、飛び入りしたボーカルのリクエストだった。

 いざ曲が始まると、初共演だと感じさせないほど息が合っているから驚きだ。細やかな指さばきで、大山さんが奏でるサックスの伸びやかな音色が店内を包む。スポットライトを浴びること約30分。

 客からは大きな拍手が起こったが、大山さんは興奮冷めやらぬ様子で「ちょっとキーが低かったかな。申し訳ない」とはにかむ。一方で「ピアノの子は余裕があったね。ボーカルもうまかった」と一人一人褒めちぎり、共演の機会を喜んだ。

 魅力は「友達の輪や知らなかった世界が広がること」だという。特にジャズでは、音やリズムが少し外れても、共演者が互いにリハーモナイズ(再調和)する気遣いがだいご味という。「初対面の人でも一緒に演奏することでぐっと距離が縮まる」

ここでならできる

 デビュー戦では挫折を味わった。5年前、サックスの先生の紹介で訪れた店のオープンマイクに参加した。演奏が進むにつれ、他の奏者がキーをどんどん上げていくため、曲についていけない。「上級者が集い、素人をシャットアウトする雰囲気だった」と振り返る。「1回で心が折れました」

 傷心後しばらく演奏を控えていたが、音楽仲間に誘われて演奏を聴きに来たシュラインで、奏者を包み込む温かい雰囲気を感じた。「ここでならできる」

 「ちょっとぐらい下手でも熱意がある人の演奏は教科書通りではなく、味があって印象深いんですよね」
 ニューヨークという街には、音楽に対する懐の深さがあることを知る。

 大山さんは、昼休みと業務終了後の練習を毎日欠かさない。ジャズ研究会に所属していた大学時代から30年近くサックスを吹き続けるベテランだが、オープンマイクに出るたび「新たな課題が見つかる。プロには程遠いけど、自分の中で段々上達しているって分かるんです」と言い目を細める。

 自分の腕前を試してみたいけど、どうもふんぎりがつかない。そんな人に向けて大山さんは「『旅の恥はかき捨て』って言うでしょ。人生自体旅みたいなものだから、恥かいてなんぼですよ」と笑う。

977_OpenMic_1
サックスを演奏する大山さん。華麗な指さばきで観客を魅了する
Shrine World Music Venue
2271 Adam Clayton Powell Jr Blvd.
www.shrinenyc.com


Pages:      

過去の特集

NYジャピオン 1分動画


ただいま配布中2018/12/14発行

巻頭特集
ニューヨークらしいバッグがほしい日本で使ってい...

   
Back Issue 9/14/2018~
Back Issue ~9/7/2018
利用規約に同意します
おすすめの今週末のイベント