2018/01/26発行 ジャピオン951号掲載記事


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誰もが数学を好きになる場所
数学博物館

 マディソンスクエア・パークの北通りにあるのが、全米で唯一の数学をテーマにした、その名もずばり「数学博物館」。「数学」と聞いただけで学生時代の悪夢がよみがえるという人には腰が引けるが、中に入るとライドや遊具が多数あって、ゲームセンターさながらに盛り上がっている。

 「数学というと難解で退屈なイメージが付きまといますが、そんな考えを180度変えます。教室や本ではなく、数学を『体感』し、興味を家に持ち帰ってもらうのが、当館の目的です」と話すのは同館エグゼクティブ・ディレクターのシンディ・ローレンスさん。全部で40ある展示は、パネルや文字解説をほとんど使わず、視聴覚や触覚を使って原理や考え方を理解できるようになっている。

 例えば、19世紀幾何学の大発見「メビウスの帯」(長方形の帯片方の端を180度ひねり他方の端に貼り合わせた形状の図形)。これを天橋から吊るし、その上を走るリモコン車を地上の運転台から操作するライドでは、車載カメラで進行過程が分かり、帯の裏が表になる様を視覚で実感できる。

 また「ガリレオの軌跡」は、高所から球を転がすだけのシンプルな装置だが、スピード計が設置されていて、坂の位置や傾斜角度を変えることで「誰が最高速で転がせるか?」を競い合うゲームになっている。

 椅子に座って回るだけで難解な「双曲面」の概念を体得できる装置などは、見た目も美しい。

 「数学にはアートに近い美しさがありますし、法則や原理を発見して競い合うのはゲームと同じ感覚です」とシンディさん。見学者は小・中学生が主体だが、体を使って楽しんでいるうちにいつの間にか数学に興味を覚える子たちが多いそうだ。バスケットボールのフリースローマシンでは、統計学でベストショットの角度を割り出すなど、結構高度な作業を要求されるが、子供たちは歓声を上げながら熱中している。

 2008年に数人の数学者とIT起業家、投資家によって企画された同館は、教育界からの期待も大きく、初年度で3000万ドル近い寄付金を集めた。また、展示には世界のトップレベルの数学者が監修、協力しているため、子供たちだけでなく専門家も楽しめる内容になっている。

 展示スペースは1階と地下の2層構造。地下では、発光フロアを使ったインタラクティブゲームや図形パズルが楽しめる。未来的デザインの参加型展示は、どれも心をそそられる。

大きさが違う四角いタイヤでスムーズに動く三輪車。展示はキュレーターと数学者が検討を重ねて決めている

展示物は形や光を使って、まず興味を抱かせる

 

地上階から地下にわたって設置されている、糸と空間を使った計算機

 

National Museum of Mathematics
11 E. 26th St.
(bet. Madison & 5th Aves.)
www.momath.org
入場料:一般17ドル、12歳以下11ドル


お金の歴史はウォール街で学べ
アメリカ金融博物館

 世界の「金融センター」ニューヨーク。世界が注視するアメリカ経済の行方は、いつだってこの街の最大の関心事だ。マネーや経済に詳しくなりたい人にオススメのミュージアムがウォール街の一角にある。その名も「アメリカ金融博物館」。

 どっしりした石造の建物は、旧ニューヨーク銀行が所有していた土地に1927年から建つ、同銀行の第3代本店ビルを譲り受けたもの。入り口で8ドルの入館料を払って、優雅ならせん階段を上がると、かつて銀行業務が展開されていた広大なロビーが待ち受けている。見上げるほど高い天井を支えるのは美しいアーチ。アメリカ文化が最も花開いた時代に最高の贅(ぜい)を尽くして作られた空間で、しばし思いをはせると良い。

 荘厳なマネーの館は今、いくつかに区切られ、「証券取引」「先物市場」「債券市場」「相場の動き」「商品取引」など金融活動の基本を、分かりやすくパネルと映像で紹介してくれる。

 中でも見ものは「アメリカ紙幣の歴史」コーナー。英国植民地時代に州ごとに発行されていたポンド紙幣から始まって、ずらりと並んだお札はアメリカ史を代弁する。独立戦争後から20世紀初頭までの大判紙幣時代は、まだドルが世界通貨として定着していないためか、デザインが実に多様だ。1929年に現在のサイズになってからも、年代による微妙な違いが面白い。34年発行の1万ドル札は一見の価値がある。

 オブジェとして興味深いのは「雄牛と熊の決闘像」。雄牛は上昇気味の強気市場、熊は「bear(=耐える)」に掛けて弱気市場のシンボルで、同ブロンズ像は1900年の作品。長年、ニューヨーク銀行の役員食堂に飾られていた。雄牛の角は験担ぎでみんなが触ったため、ピカピカだ。

 同館のもう一つの魅力は、アレクサンダー・ハミルトンの記念室だ。ハミルトンといえば、最近、人気ミュージカルのおかげで再び脚光を浴びているアメリカ建国の偉人。初代財務長官を務め、最大の功績は中央銀行と造幣局の設立だ。現在のアメリカ経済の基礎を築いたのはハミルトンに他ならない。そもそもニューヨーク銀行時代からあったという同記念室にはその生い立ちから非業の死まで、遺品や手紙とともに丁寧に展示されている。

 中型の博物館ではあるもののスミソニアン博物館との連携活動もあり、膨大な史料を保管している。証券取引所や連邦準備銀行の見学と合わせてぜひ一度は訪れて欲しい。

見どころの一つ、紙幣の歴史コーナー。約束手形のようなものから最新のものまでを展示。1万ドル札紙幣もある

展示フロアは、旧銀行をそのまま利用

ハミルトンの天才ぶりが分かる展示

Museum of American Finance
48 Wall St.
(at William St.)
www.moaf.org
入場料:一般8ドル、6歳以下無料


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