2018/01/19発行 ジャピオン950号掲載記事

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線路は終われど
興味は尽きない終着駅

 ニューヨークのMTA地下鉄終着駅は、①地上高架線型と②地下型に大別できる。地上型は、大通りの上に架かる高架線が、突然、ナイフで切ったように終わっている形状が多い。大通りには大抵、商店も並んでいるので、時間に余裕があれば降りて散策するのも面白い。

各駅で違う顔

 例えば、N、Wラインの終点ディトマス・アストリア・ブルバード駅周辺には銀行やレストラン、スポーツジムがにぎにぎしく並んでいて、明るく安全な雰囲気だ。一方、1、2、4ラインの終点などはブロンクスの公園の中にあるため、周囲に人通りは少なく「最果て」感が強い。日が落ちたら歩き回らない方がいい。それでもピザ屋かドーナツ店ぐらいはあるので、用を足したり、休息をする時は利用できる。

 地下型は、文字通り、景色が見えないのだから、駅を降りて地上に出てみないとどんな駅前なのか分からない。新線Qラインの終点96ストリート駅周辺は、高層住宅群がひしめいている。7ライン終点34ストリート駅は、現在、開発中の新エリア「ハドソンヤーズ」のど真ん中で工事現場のけん騒が絶えない。

 一方、Dラインの終点ノーウッドは、駅を出たら店一つないブロンクスの住宅地。勝手の分からない他人の街で道に迷う異邦人のような不安にさいなまれる。

終着駅の向こう

 今回、本紙が総力取材した全29終着駅の中から、わざわざ出掛ける価値がある「駅近」をここでは2カ所紹介しよう。どちらも「地下型」だ。

 一つはAライン終点のインウッド・207ストリート駅。地上に出るとなだらかな坂の上に低層アパートが整然と並ぶ。カリブ海や中近東からの移民が多い街なのだろう。路上には英語でない言葉が飛び交っている。ヘアサロンやエスニック食材を並べるマーケット、ナイトクラブ、1ドルショップなど活気にあふれている。少し、山の手の方に歩くとインウッドパークの原生林があり、マンハッタンで最古クラスの民家「ダイクマンハウス」(1784年ごろの建築)が博物館として公開されているので、歴史散歩にはうってつけだ。

 もう一つのおすすめ地下終着駅はクイーンズにあるFラインのジャマイカ・179ストリート駅だ。駅前は大通り沿いに商店が並んでいて、こちらはバングラデシュ系の新興コミュニティーが元気だ。

 そんな移民の活況と背中合わせで駅の裏に広がるのがジャマイカエステートと呼ばれる高級住宅地。大きな門の脇を抜けて域内に入るとビバリーヒルズばりの豪邸が次々に姿を現わす。このエリアの開発に携わったのは、何を隠そう、あのドナルド・トランプ大統領の父親。トランプ自身の生家(4歳まで居住)もエリア内に残っている。豪邸かと思いきや意外にこぢんまりの4ベッドルーム。今はエアビーアンドビーになっているので一般人も宿泊できる。

 とかく悲壮な印象のある「最果ての駅」であるが、たまには降車してその先に足を伸ばしてみるといい。終着駅の向こうには、まだ見ぬ愉快な世界が広がっている。次ページからはエリア別に終着駅を図鑑で紹介する。

終着駅を出ると、活気あふれる商店街が続いていて、雰囲気は予想外に明るい街だ。3ブロックほど歩くとインウッド公園。人の手が入っていない原生林が広がる 

駅前大通りではヒジャブをかぶったイスラム系の女性が目立つ。駅の裏は立派な門構えの高級住宅地ジャマイカエステート。トランプ大統領の生家(85-15 Wareham Pl.)もここにある


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