2017/12/15発行 ジャピオン946号掲載記事

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日本のお笑いから発想
即興演技混ぜた新機軸
バツ!

 斬新なライブ音楽や舞台芸術を絶え間なく発信するニューヨークだが、イーストビレッジの片隅で週5日上演されている「バツ!(BATSU!)」ほど型破りなショーはないだろう。

実は脚本のない芝居

 ステージは和食居酒屋「Jebon」の地下にしつらえた板張りの舞台。三方をテーブル席(75人収容)が囲い、観客は飲食しながら鑑賞する「ディナーショー」の体裁だが、うらぶれた温泉旅館の演芸場といった方がしっくりくる。

 「バツ!」とは日本語の「罰」のこと。4人の俳優たちが、次々に出題されるクイズに挑戦し、敗退者が思いもよらぬ過酷な「罰ゲーム」を体験する。その様たるや予想通りの抱腹絶倒だが、単に敗者を笑い物にする悪趣味なショーと思ってはいけない。というのも、登場する4人の挑戦者たちは、正規の演劇訓練を受けたベテランばかり。しかも高度な演技を必要とするインプロ(台本のない即興劇)の専門家。クイズは観客からのお題拝借も多く、彼らはその場で瞬時に回答しなくてはならない。「バツ!」は非常に頭を使う筋書きのない芝居で、演じる方も見る方もハラハラドキドキなのである。

会場を一体化させる

 クイズは全部で7部門。いずれも他愛ない設問で英語が少々分からなくても十分に楽しめる。ネタバレ防止でごく一部しか紹介できないが、例えば「ラップしりとり」。客席から一音節の名前(例、Bill、John、Maryなど)を募ったら、その名前で脚韻を踏むように一節ずつラップを即興で作る。

 「My name is Bill. I was sitting on the hill.」「Waiting for the time to swallow a pill.」という具合。最初は軽快にラップが回るが、やがて「-ill」で終わる単語が底を突き、言い淀んだところで、その人の負け。

 お待ちかねの罰ゲームは「平手打ち」「電気ショック」「ネズミ捕り地獄」など過酷かつナンセンスの連続。罰の執行のたびに観客から「バツ、バツ、バツ」の大合唱。一部門終わるごとに場内全員でおちょこで乾杯。会場は否応なく一体化する。

お笑い+インプロで誕生

 「バツ!」の誕生は今から7年前。ジョー・テックスさん、エリック・ロビンソンさん、ジェイ・ペインターさんの3人の売れないインプロ俳優が、現会場の居酒屋オーナーから「飯を食わせてやるから何か面白いことやれ」とけしかけられ、苦し紛れに日本の罰ゲームとインプロを合体させ、前代未聞のエンタメスタイルができた。

 「日本のテレビ番組は本当によく研究した。素晴らしいアートだよ。特にダウンタウンの『ガキの使いやあらへんで!』は僕らのバイブル」と語るのはジョーさん。「でも罰ゲームだけじゃお金は取れない。そこでインプロの要素を取り入れた。台本のある演劇にはもはや何の感動もない。何が起こるか分からないからドラマチックなんだ」。

 当初は、月曜のみの公演だったのが、今では週5日公演。しかもチケットはほぼ毎日売り切れ。今年からシカゴ公演も始まった。「夢はラスベガス。でもその前に、こいつを日本で上演してみたい。松っちゃん、呼んでくれないかな」と言ってジョーさんは高らかに笑った。

(写真上、中)ただの罰ゲームと思いきや、実は高度な即興劇の要素が加わっている「BATSU!」。(写真下)「BATSU!」のクリエーターで、プロの俳優でもある、左からテックスさん、ロビンソンさん、ペインターさん

 

 
 
 
Batsu!
(Jebon NYC)
15 St. Marks Pl.
(bet. 2nd & 3rd Aves.)
www.batsulive.com/new-york


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