2017/09/08発行 ジャピオン932号掲載記事

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 「高血糖と高コレステロールは別ものですが、どちらかが高いと一方も高くなることが多い」と、内分泌内科専門医師・柳澤貴裕先生は話す。そのカギを握るのがインスリンだ。「2型糖尿病の原因であるインスリン抵抗性が高くなると、血糖値が上がるだけでなく、血中コレステロールを下げる能力も低くなる=コレステロール値が上がる」—これが合併症の図式だ。

インスリンと血糖値

 インスリンとは糖を分解するホルモンで、膵(すい)臓から分泌される。これが正常に分泌され、機能していれば、食べた糖をエネルギーに変換して体のために使い、余った糖分を脂肪に変換して体に蓄えることができる。ちなみに、糖分(砂糖や炭水化物)を取り過ぎると太るのはこういうメカニズム。「甘いものは少量で高カロリーという側面もありますよ」と柳澤先生。

 そして、長期的に糖の取り過ぎが続くと太るだけでなく、膵臓が酷使される。結果、インスリンの分泌と機能障害が起こる。これが「インスリン抵抗性が高くなった状態」だ。そうなると、糖分がエネルギーにも脂肪にも変換されず、そのまま血液に流れ込むので高血糖になり、その段階で食い止めなければ糖尿病に発展してしまう。

 ではどこまでが高血糖で、どこからが糖尿病なのか。判断する血糖値は2種類ある。一つはグルコースで、食後急激に上がる瞬時の血糖値。もう一つがヘモグロビンA1Cという、3カ月の平均血糖指標だ。

 空腹時のグルコースが125mg/dl以上、または食後で200mg/dl以上が2回続いた場合、もしくはヘモグロビンA1Cが6・5%以上である場合に、糖尿病と診断される。

 ヘモグロビンA1Cとは、赤血球に付着して、常に血中を流れる糖分量のことで、食前食後で値が上下しない。グルコース値は2回の検査が必要になるが、ヘモグロビンA1Cは1回の検査で判断が可能だ。

三つのコレステロール値

 そして、インスリン抵抗性が上がると、コレステロールに関連して次の三つの値が上がる。①善玉(HDL)コレステロール②悪玉(LDL)コレステロール③トライグリセライド(血中を回る中性脂肪)。

 善玉(HDL)は、血管の内壁から悪玉(LDL)を吸収してくれるので、この値は「高ければ高いほどいい」。40mg/dl以上あれば正常だが、150mg/dlある人もいる。

 いうまでもないが問題は悪玉(LDL)。中でも最も危険なのは、血管の内壁に浸透しやすい小型LDL。2型糖尿病の人にこの値が高い人が多い。

 中性脂肪とは、ブヨブヨの皮下脂肪のことで、体のエネルギー源。決して「悪者」ではないが、善玉(HDL)のようにあればあるだけいいものではない。

 そして、コレステロール値にはホルモンも影響する。例えば甲状腺ホルモンが低下すると、コレステロール値は上がる。また、女性ホルモンの一つエストロゲンの作用で、善玉(HDL)は一般的に男性より女性の方に多いと言われるが、更年期でエストロゲン分泌が減ると、コレステロール値が高くなる女性も多い。

 血糖値とコレステロール値、どちらか単独で高い人もたくさんいる。人それぞれであること、生活習慣だけでなく遺伝や体質も関与していることを知っておきたい。食事に気を付けて運動もしているのにと、自分を責める人がいるが、それは体質だから仕方ないという。そうした人は医師の指示を仰ごう。

血液検査から分かる数値

今回、編集部S(50代女性)の血液検査の数値をもとに、柳澤先生に解説とアドバイスをお願いした。

グルコース  83(70-99)
LDL     123(100以下)
HDL     92(50以上)
中性脂肪   65(150以下)
※単位mg/dl、カッコ内が正常値

【柳澤先生のコメント】
 血糖値は正常値内ですね。コレステロール値は、悪玉(LDL)も多めですが、善玉(HDL)が多いので、リスクは低いという診断になります。「CardiovascularRisk Assessment(心血管系リスク評価)」という指標があり、年齢、総コレステロール値、善玉値、血圧、血糖値、喫煙の有無などの総合判断で個々の患者のゴール値が決まります。Sさんはとりあえずリスクは低いですが、食生活を少し見直して運動を心掛けると良いと思いますよ。

血糖値の指標

血糖(グルコース)値

空腹時で70〜99mg/dlが正常値

空腹時で110〜124mg/dlが境界型(予備軍)

空腹時で125mg/dl以上、食後で200mg/ dlが2回続くと糖尿病と診断される

ヘモグロビンA1C(HA1C)

5.7%以下が正常値、5.8〜6.4%は境界型、6.5%以上あると糖尿病

コレステロールの正常値

 
 
 

お話を聞いた
先生

柳澤貴裕先生
Robert T. Yanagisawa, MD
内分泌内科専門医師(Board Certified)。マウントサイナイ・アイカーン医科大学教授、内分泌科研修プログラムディレクター。糖尿病や甲状腺疾患が専門。東京女子医科大学招待教授、東北大学医学部臨床教授、米国日本人医師会副会長。

Mount Sinai Hospital
Endocrine Associates
5 E. 98th St., 3rd Fl.
(bet. Madison & 5th Aves.)
TEL: 212-241-3422
www.mountsinai.org/profiles/robert-t-yanagisawa


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