2017/07/21発行 ジャピオン925号掲載記事

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大御所日本人トランぺッターが語る
ニューヨークの街とジャズ


当地在住43年のジャズトランぺッター、大野俊三さんが、この街で聞くジャズの魅力を語る。

 1910年初頭にニューオリンズで生まれたジャズ。即興の要素が強く、一期一会の演奏を聞けるのが魅力だ。他ジャンルの音楽、そしてその音楽を生んだ文化も溶け合って無限の広がりを見せてきたのがジャズの特徴だと、大野さんは語る。ジャズがニューヨークで愛される理由もここにあるだろう。

 「文化の融合という意味で、ニューヨークは全米一秀でた街ですからね」

 ビッグバンドをはじめとするトラディッショナル、弦楽器が奏でるクラシック、ソウルフルなファンクなど、一口にジャスといっても、一つにまとめきれない幅広さも魅力だという。

 「ジャズメッセンジャーズ」の東京公演に出演した際、ドラマーのアート・ブレイキーに誘われ、74年からこの地を拠点にしてきた大野さんは、今もこの街のジャズに魅了されている。

他にはない、自由な街

 当地でジャズを演奏し始めた大野さんが、日本との違いを最も強く感じた点は、「演奏の基本的なスタンス」だったそうだ。

 「ニューヨークのアーティストは、一つの決められた軸に沿いつつ、その中でよりフリーダムな感性を発揮していると思います。そのおかげで作品もクリエーティブになり、無限の広がりを見せる」

 観客のリアクションも自由気ままだ。大野さんは「感情を内に秘めがちな日本人に比べ、ニューヨークの観客は直接的に反応します」と語る。いいと思ったら声を上げて盛り上げるし、駄目だと容赦なくブーイングを飛ばし、最悪帰ってしまう。

歴史を重ねたクラブたち

 ブレイキーとの共演を皮切りに、名演奏家たちと市内で数々のステージを作り上げてきた大野さん。例えばグリニッジビレッジの「スイート・バジル・ジャズ・クラブ」は、世界に名が知れたピアニストで編曲者のギル・エバンスと、毎週舞台に立った思い出の場所だ。だが同店を含め、当時通ったクラブの多くは姿を消した。

 「ジャズクラブの維持は大変だと思います。ジャズは僕自身がその世界にどっぷり浸かっているから、大きな位置を占めている音楽に見えますが、世の中全体の人口は決して多くない」

 一方、生き残ったクラブはいずれも、老舗の名門として名を馳せるようになった。モダン・ジャズの名手、ベーシストのバスター・ウィリアムスと回った、グリニッジビレッジの「ビレッジバンガード」や「ブルーノート」、ミッドタウンの「バードランド」がその例だ。

生演奏の化学反応

 キャリアを積んだ今でもなお、「いい演奏ができた時は何ものにも代えがたい快感」があるという大野さん。だが不思議なことに、出来に落ち込んだ演奏でも、「今までで一番良かった」と言われることがあるそうだ。

 「つまり、オーディエンスが何を求めて聴きに来るか、そしてその欲求が、プレーヤーの演奏と合致するかが鍵。よい演奏家とは、より多くの人生経験や人間としての資質、感情を持ち、観客により多くの『色彩』を提供できる人ではないでしょうか」

 その性質故、同じ演奏には二度と出合えない。そして、どの音楽が心に響くかは聞いてみないと分からない。だからこそ、ジャズファンたちは今日もジャズクラブへと足を運び、大野さんもトランペットを吹く。

大野俊三さん
1949年、岐阜県出身。19歳からプロのトランぺッターとして活躍し、25歳の時に来米。作曲家としても活動しており、今年度の「国際作曲コンペティション」ジャズ部門最優秀賞、「ザ・ベスト・オブ・ジャズ2016」最優秀賞などを受賞。
www.shunzoohno.net

Blue Note Jazz Club 
131 W. 3rd St.
(bet. Macdougal St. & 6th Ave.)
TEL: 212-475-8592
www.bluenotejazz.com/newyork

Village Vanguard
178 7th Ave., S.
(bet. Perry & 11th Sts.)
TEL: 212-255-4037
www.villagevanguard.com

Birdland
315 W. 44th St.
(bet. 8th & 9th Aves.)
TEL: 212-581-3080
www.birdlandjazz.com


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