2017/05/19発行 ジャピオン916号掲載記事

 

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鉄 道 の 旅


出発はペンステから

今回の旅の出発点は、「ペンシルべニア・ステーション」(略して「ペンステ」)。まずは、毎日1200本の電車が発着し、1日の平均乗降客数約60万人というこの巨大鉄道ターミナルを解剖してみよう。

 荘厳な駅舎でニューヨークの表玄関といわれるグランドセントラル駅と比べると、ペンステは、マディソンスクエア・ガーデンの地下に潜っているためか、印象が地味だ。そもそもニューヨークなのに、なぜペンシルべニアなの?との疑問も湧くが、歴史をひも解けばすぐに分かる。

なぜ「ペン」?

 1830年代に始まったアメリカの鉄道の開発は爆発的な勢いで進んだ。東海岸で圧倒的な勢力を誇ったのがペンシルべニア鉄道(PRR)だ。46年、ペンシルベニア州内のピッツバーグ=ハリスバーグ間で開業。周辺の弱小鉄道会社を次々に買収して71年にはニューヨークからフィラデルフィア経由ワシントンDC行きの特急が走る。ところがハドソン川に鉄橋がなかったため、「ニューヨーク」とうたいながらも終着駅は長い間、対岸のニュージャージーで、列車に乗るために、まず船に乗らなくてはならない不便さがあった。

 川底トンネルの計画は早くからあったが、蒸気機関車の通行が許可されず、20世紀の鉄道の電化を待って地下駅建設が始まる。そのころには総営業距離が1万6000キロを超え、大企業に成長したPRR社が、威信を賭けて取り組んだのが新ターミナル事業だ。折しも改装中のグランドセントラル駅に負けないためにも駅名に社名の「ペンシルべニア」を冠した。新駅は1910年に完成。一部ガラス張りの巨大な駅舎は「世界一美しい駅舎」とうたわれること

ペンステと電車たち

 その頃、郊外に一戸建てを買うのがはやり、ペンステは長距離急行だけでなく通勤電車の発着駅としても栄えた。第二次大戦中も米国の鉄道は成長を続けたが、45年を境に衰退を始める。理由は戦後のマイカー普及と高速道路の整備が進んだこと。栄華を極めたペンステ駅舎は63年に、PRR社自体も68年に経営難で解体。運行は公営鉄道会社が引き継いだ。

 現在、同駅の地下2階全21ホームに入る電車は3系統に分かれる。一つはニュージャージー・トランジット(NJT)。モリスタウン線、北ジャージー海岸線など5路線が同州の郊外住宅地とニューヨーク中心部を直結する。主力の機関車はボンバルディア社製造の「ALP45DP」(2011年導入)。電気とディーゼル併用動力で内陸部の非電化区間でもディーゼルで走るため機関車の交代が不要。最高時速は201キロ(電)と165キロ(デ)。5365馬力で2階建ての客車12両をけん引する姿は勇壮だ。

 二つめは、ニューヨーク州東部一帯に11路線を展開するロングアイランド鉄道(LIRR)。ペンステを起点にロングビーチやモントーク、ハンプトンなど海水浴場や別荘地などへも伸びている。同鉄道の顔は「M3」。フィラデルフィアのバッド社製造の電車で最長12両編成。スタイリッシュなステンレス車体で、高級感のある乗り心地が魅力だ。

 3番目の系統が、アムトラック。全米に営業網を持つ長距離鉄道だが、これについては、次ページで詳しく紹介する。


年間旅客数約8500万人超のLIRR乗り場へ続く階段
7アベニューからペンステに入ると左手にあるNJTの待合コンコース

ペンステから乗れる電車たち

ペンステから郊外へ運行しているNJT、LIRR、アムトラックの主力車両を紹介。

2階建て客車をけん引して力走するNJTの「ALP45DP」
LIRRのベテラン・エース車両「M3」(1980年代導入)

ワシントンDC行きアムトラックの特急。機関車は独シーメンス社製主力「ACS64」(2014年入)


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