2017/04/21発行 ジャピオン912号掲載記事

 


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 サブカルチャーの発信地イーストビレッジの目抜き通りセントマークスストリートの真ん中で店を構える老舗のコミック店「セントマークス・コミックス」。階段を少し降りて半地下にある店内に足を踏み入れると、縦に細長いスペースの壁には新作や単行本がびっしり、棚にはおびただしい数のフィギュアやキャラクターグッズ。店の最奥のコーナーには、ビンテージものをまとめてある。店内は照明が明るく、初心者でも気軽に入れる雰囲気。店内を見ていると女性客が次から次へと入ってくる。客に対応しているのも女性店員で、コミックは男子だけの趣味ではないことがよく分かる。

 「最近の女性ヒーロー人気の影響?」と、店員のアリーナさんに聞くと、「場所柄女性客が多いのはあるかもしれないけど、昔から男女比は1対1です」とのこと。「コミックヒーローへの憧れは男女関係なく、女性でもバットマンやハルクが大好きな子は大勢いる。大事なのはストーリーが良いかどうかです」とハキハキと答えてくれた。

 オーナーのミッチ・カトラーさんが同店をオープンしたのは34年も前のこと。「最初は、コミックだけを扱っていて、次第にフィギュアやカードといった関連商品、そしてグラフィックノベル(アート性の高い成人向けコミック)までそろえるようになりました」と語る。コミック博士を思わせるミッチさんに、「オススメは?」と尋ねると「あまりにもあり過ぎて一つに絞れません。とにかく一度店に来て、僕に相談してください。お客さまにふさわしい作品を推薦しますから」と笑った。

 「私のイチオシはこれ」と店員のアリーナさんが棚から取り出してきたのは「アイアン・フィスト」。マーベルのキャラで1970年代生まれ。主人公はマーシャルアーツの達人。ぱらぱらとめくると、ほとんどが格闘シーンで埋め尽くされている。

 「3月22日に発売された最新のシリーズでは、格闘シーンで登場する技の名前が、コマの端にキャプションで表現されているの。クールでしょ」とアリーナさん。どこか格闘ゲームにも似た感覚で、新世代のコミックにハマるにはちょうど良さそうだと考え、早速購入した。

 「もう一つは絶対に『スノットガール』。イケてるファッションブロガーの女の子が主人公。ひどいアレルギーで、薬を飲むたびにトラブルを起こす話なの」
 好きな作品をすすめるアリーナさんの瞳はキラキラ輝いていた。

セントマークス・コミックスの店員のアリーナさんのおすすめは、ジャンルが異なる二冊、「IronFist(2017-) #1」(Marvel Comics)と「SNOTGIRL Vol. 1 TP」(Image Comics)

明るい店内は女性に限らず、誰でも入りやすい雰囲気

イーストビレッジの中心で開業して34年になる老舗

St. Mark’s Comics
11 St. Marks Pl.
(bet. 2nd & 3rd Aves.)
http://www.stmarkscomics.com


ミッドタウンにあったコミック店で働いていた二人が、同店の閉店を機に独立し、2013年5月に書店の敷地の半分を借りて開店した「カーマイン・ストリート・コミックス」。

 老舗も多いコミック店の中では新顔で、狭い敷地にコミックが雑然と置かれている様子は一見、どこにでもある店に見える。しかし、実は自費出版コミックを扱う店として業界では知らない人はいない超有名店だ。

 「DCやマーベル系の新作、ビンテージものも扱っていますが、フォーカスは自費出版コミックです」と語るのは店長のパトリック・ライリーさん。店頭にはテーブルが置かれ、作家たちが実際に作業している様子も見学できる。明らかに他店にはない「創る側の目線」が感じられる。

 それもそのはずで、「共同オーナーの一人、ジョン・ゴルガはコミックの編集者で、僕自身もコミックを自費出版しています。店員も皆、コミック製作に携わる人間ばかり。だから創る人たちへの支援に力を入れています」と胸を張る。

 取り扱う自費出版作品は800人ほどの作家による約1200タイトル。ローカルはもちろん、海外の作家のものも置いている。全て持ち込みだそうで、「ほぼ毎日持ち込みはありますよ。小冊子でも物理的に売ることができるなら受け入れています。海外から持ち込みする人もいます」という。自費出版作品はヒーロー、アクションものもあるが、作家自身の体験を基にしたストーリーの作品が多く、「そのオリジナリティーが面白さ」と解説する。

 パトリックさんが最近の動向として感じているのはメジャー、自費出版問わず、「多様性」だという。既存の作品のお決まりのパターンに当てはまらない、これまでにいなかった人種、背景を持つキャラクターが登場し、一風変わったストーリー、独特の世界観を持つ作品が増えているという。パトリックさんが例として挙げる「ミズ・マーベル」(マーベルコミックス)はパキスタン系イスラム教徒のティーンエージャーの女の子が主人公。「ムーンガール・アンド・デビルダイナソー」は黒人の9歳の天才少女が遭遇する世界を描く。

 「女性主人公ものの人気も高く、うちで一番は『ペーパーガールズ』」とパトリックさん。その言葉を聞いた女性客が、「その通りよ、私も大好き」といきなりコミック談義を始めた。こうやって輪が広がっていくのもコミック道の楽しさに違いない。

店長のパトリック・ライリーさんのおすすめは「Super- man TPB (2017 DC Univers eRebirth) #2-1ST」(DCComics)、「PaperGirls」(Image Comics)、自費出版系の「Henchgirl」

レジ横の自費出版作品の棚には約1200タイトルが並ぶ

入り口は別々になっているが、中では書店とつながっている

Carmine Street Comics
34 Carmine St.
(bet. Bleecker & Bedford Sts.)
www.carminestreetcomics.com


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