2017/01/01発行 ジャピオン897号掲載記事

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矢野莉恵さん
父の海外転勤でデトロイトを皮切りに幼少期をアメリカ、カナダ、メキシコで過ごす。引っ越しは25回経験。上智大学卒業後、三菱商事勤務を経てハーバード大学経営大学院修了。2012年、同大学院で知り合ったジー・ツェンさんと共にマテリアルワールド社を創業。

Material World
www.materialworld.co


2016年9月号の日本版フォーブス、「発見! 世界で闘う日本の女性55」では、事業が大きく取り上げられ、表紙も飾った


現在はブルックリン•サンセットパークを拠点にするが、17年にはより大きな倉庫に一部の機能を移す予定


マテリアルワールドのデビットカードシステムは、古着を売って得た金額が入金され、同社サイトやデパートで利用できる

「共存」を合言葉に世界の常識を変えたい
矢野莉恵さん(実業家)

 矢野莉恵さんが起業、CEOを務めるマテリアルワールド社は、ブルックリンの倉庫街に本拠を置き、中古の高級ブランド品を買い取り、査定した後に手頃な値段で再販するファッション系Eコマースショップ。

 4年半前に起業したが、15年頭まではスタッフわずか6人。「re-invention(再改革)」をキーワードに、15年は売り上げを13倍に。累計資金調達額は1300万ドルを超え、ニューヨークのベンチャー企業の中でも注目株となった。その根本には、「共存」という信念の土台が揺らぐことなく存在し続けている。

 注目度と人気にビジネスパートナーとして名乗り出る大手デパート、ブランドも現れ、事業規模は拡大の一途をたどる。その中で2016年に力を入れたのは、同社のデビットカードシステム。サイト上で古着を売って得たデビットカード入金額で、同社のサイトや提携するデパートで商品が購入できるシステムで15年にローンチさせたものだ。これが評判を呼び、さらなる成長の追い風となった。

 その破竹の躍進ぶりは「日本版フォーブス誌」(2016年9月号)の「発見!世界で闘う日本の女性55」と題した特集で大きく取り上げられ、矢野さんは表紙も飾った。

「良いものを長く」が
ミレニアルから支持

 時代は「サステイナブル(継続可能)」「シェア」「リユース」が当たり前になったが、その中で、ファッション業界に関しては、今も古着イコール汚い、というイメージが残る。「そのイメージを払拭したい」という。

 「ファッション業界、またそれを売るデパートなどは長年低迷が続いています。その時だけはやるものを作って売る時代は終わり、古いものの良さを再発見して、新しい価値を創生する『リユース』こそ、環境に優しいし、希望があります。とはいっても古着屋さんになるためにこのプラットフォームを作ったわけではないんです」

 全米展開するマテリアルワールド社の客層の3分の1はニューヨーカー。中でも思考が柔軟で、新しい仕組みにも順応性が高く、シェア、リユースのアイデアを既に持っているミレニアル世代からの支持も多い。

 「良い商品は長く使おう、長持ちするものはみんなでリサイクルして使い続けよう」、というコンセプトを推奨し、その価値を共有する考えを発信し、ミレニアルだけでなく、すべての消費者のマインドセットを改革したい、というのが起業当初からの矢野さんの変わらないゴールだ。

不透明感漂う中で
発信し続ける信念

 2017年は、米新政権の誕生で、政治、経済はじめ、行く先には不透明感が横たわるが、信念が揺らぐことはない。

 「『世界を相手にするビジネス』『働く人たちの多様性』という自分たちがやってきた意味が真っ向から否定される可能性はあります。ですが、へこたれずに私たちの信じてきた信念である『リユース市場と消費市場の共存』を発信し続けるしかないですよ」と力強く語る。

 「やはり大切なのは『共存』。新品と中古の共存。実店舗とオンラインショップの共存。新しい人は古い人から学び、古いものは新しい発想や技術を取り入れて、共に進化(coevolution)するのが唯一のサバイバル術だと考えています」

 一人の信念が会社を変え、業界を変え、やがて世界を変える。


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