2016/12/23発行 ジャピオン896号掲載記事

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お話を聞いた人

シェリー・タオさん
中国武漢出身。中国華中科技大学新聞学部卒業後、カンザス州立ピッツバーグ大学院に留学、コミュニケーション学部を卒業。2009年にニューヨークに拠点を移し、中国系メディア「Sinovision」のウェブサイトにフードコラムを執筆。著書に「吃透你了、纽约(Food guide book: A bite of NYC)」(Mr.Q名義)がある。

伝統的な中国鍋の一つ、マーラータンのスープには花椒などのスパイスがたっぷり入っている

NYで進化する中国鍋

今、ニューヨークでは専門店が続々オープンするなど「中国鍋」が人気だ。今回はフードコラムニストのシェリー・タオさんに中国鍋の基礎知識と当地での最新の動向を聞いた。

中国鍋の本流は二つ

 「ニューヨーカーの傾向は、アメリカナイズされた中華料理ではなく、中国本場の料理を求めるようになっています」と話すのは、フードコラムニストとして、中華料理のみならずニューヨークの食文化にも詳しいシェリー・タオさん。昨今の中国鍋人気は、その「伝統的な料理」への探求が根底にあると見ている。

 では中国鍋の中でもどんなものが人気なのかと尋ねると、本流は「鴛鴦(おしどり)鍋」と「麻辣燙(マーラータン)」だと語る。共に中国四川地方の発祥で、鍋を二つに仕切り、辛い麻辣(マーラー)と辛くない白湯(バイタン)スープに、さまざまな具材を入れて食べるスタイルが「鴛鴦鍋」。マーラータンはマーラーに具材をあらかじめ入れた鍋。共通するのは四川発祥だけに、四川料理に必ずといっていいほど使われるスパイス、花椒(ホワジャオ)が入っていること。

 「鴛鴦鍋は、好きなスープに好きな具材を入れて食べられるので大勢で食べるのが普通です。マーラータンは逆にラーメンのように一人で気軽に食べるのが基本で、どちらも中国では代表的な鍋料理として普及しています」とシェリーさんは話す。

 過去10年でニューヨークでも本格的な中国鍋が楽しめるようになっているが、当地独特の進化も遂げているという。本場の中国では通常、牛脂を使うが、ニューヨーカーは健康志向が強いため、それに合わせて菜種油を使うなど、店ごとに工夫が見られるそうだ。また新しいところでは、「麻辣香鍋(マーラーシャングオ)」というスープのない、具材を花椒などのスパイスと一緒に炒めたバージョンの「鍋」も食べられるようになっている。

NYで進化する中国鍋

 ニューヨークでの中国鍋の進化は、中国本土の鍋にも影響をもたらしているとシェリーさんは語る。

 「例えば鴛鴦鍋のマーラーとバイタンという従来の組み合わせだけでなく、スープにカレー味やキムチ味など新しい味が加わっています」という。「新しい味が増え、選択肢が増えたのが現代のスタイル」で、本土もこの影響を受けているという。

 提供の仕方も変化している。最近では、ファストフードのように気軽に楽しめる一人鍋を専門にする店やおしゃれな内装を施した店も増えているそうだ。

 「大衆食のイメージのあった鍋専門店が、おしゃれでキレイになって、若者のデートスポットとしても行きたい場所になっていますよ」

 また近年、アメリカの大学を卒業した中国系の若者たちが、当地の中国鍋人気を受けて、おしゃれで現代風にアレンジした専門店を開業するケースも増えている。シェリーさんによると、「今の若者たちはインターネットを活用して、当地のレストラン事情やニーズをマーケティングし、かつSNSをうまく利用して宣伝しています」という。

 今年の冬は、伝統的なものから最新のものまで中国鍋を食べ尽くしたい。


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