2016/11/04発行 ジャピオン889号掲載記事


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フードシーンをリードする、新しいスタイルの北欧料理

世界観は自然との一体化

 ニューヨークのモダン・ノルディック・キュイジーヌの急先鋒といえば、グランドセントラル駅ターミナルにこの春オープンした「エーグルン」を置いて他にはないだろう。北欧料理を世界的なブームにまで至らしめた、デンマークの「ノーマ」レストランの共同経営者、クラウス・メイヤーが満を持して開いたレストランで、徹底的に季節の食材にこだわり、北欧らしい調理法と美的センスを生かした料理を提供する。 
 
 エグゼクティブシェフにはアイスランド出身のグンナー・ギスラスンを起用。彼が創る料理は、「自然をおいしく食べ尽くす」精神に貫かれている。例えば、今が旬のビーツを使った「ビーツの塩釜焼」(写真左上)は、ビーツのピクルスを細かく刻んで、同じくビーツ色をしたマイクロベジタブルとあえたサラダを添え、花びらのように薄くスライスした生のビーツを飾り、ビーツで作ったパウダーをあしらう。一つの食材が調理の仕方で幾通りもの味わいに見事に生まれ変わる。同レストランでは、ディナーのコースを「海と大地コース」「原野と森コース」と銘打ち、あくまでも自然と一体となった世界観を提案する。

 「エーグルン」はファインダイニングだが、同じグランドセントラル駅構内にある「グレートノーザン・フードホール」は、北欧料理をカジュアルに楽しめる一画。これまたメイヤーが仕掛け人で、今やグラセンは北欧料理で埋め尽くされた形だ。
 
和食にも通じるアプローチ

 一方、ニューヨークにおける北欧料理ファインダイニングの老舗「アクアビット」も見逃せない。老舗といっても常に新しい風を吹き込んでおり、2014年にスウェーデン人シェフ、エマ・ベンクトソンをエグゼクティブシェフに迎えて、ミシュランを獲得。レストランの存在感をアピールするとともに、一時代を築いたマーカス・サミュエルソンの後の、新しいアクアビットの顔となった。

 異なる食材の持ち味を生かし、印象派の絵画のように盛り付けられた彼女の料理は、モダンそのもの。しかし本人は、「私の料理はとても伝統的なスタイルだと自分では思っています。世界各国の味を駆使して料理を作りますが、それはスウェーデン自体が世界中のものを使った料理だからなんです」と語る。また、スウェーデンと日本の味はとても似ていると話し、しょうゆやみそは彼女のレギュラー調味料だという。

 同様に日本の味と北欧料理の親和性を意識しているのがダニエル・バーンズさん。グリーンポイントにあるファインダイニング「ルクサス」、そして世界の地ビールと北欧料理とのペアリングをテーマにしたバー「トースト」(デンマーク語で「のどの渇き」という意味)のオーナーシェフだ。しょうゆやみりんはもちろん、海藻や白だし、黒酢も常用するバーンズさんは、日本の梅干しにも似た、北欧のプラムの塩漬けのピューレや発酵させたプラムを、カモやハト、スズキなどの付け合わせとしてよく使うという。

 「このプラムのピューレが、オーク樽で寝かせた、酸味のあるエールには最高に合うんだ」と、ビールには一家言あるバーンズさんらしい発言。マンハッタンにある「エーグルン」や「アクアビット」とは違った形で北欧を体現した、ブルックリンらしいスタイルの北欧料理体験ができる。

 サウスウィリアムズバーグにある「アスカ」も、ブルックリンらしさが際立つレストランだ。19世紀の倉庫を改築して作った、24席のみのダイニングとバーを仕切るのは、ミシュランを獲得したスウェーデン人シェフ、フレデリック・ベルセリウスさん。オープンキッチン・スタイルのダイニングで供されるベルセリウスさんのコース料理は繊細そのもの。ガーデンも併設しており、自然との関わりを大切にし、地産地消への彼の強い思いを、料理だけでなく空間そのもので表現する。

Agern
89 E. 42nd St.
(Inside Grand Central Station)
www.agernrestaurant.com

Great Northern Food Hall
Grand Central Station, Vanderbilt Hall West
www.greatnorthernfood.com

Aquavit
65 E. 55th St.
(bet. Park & Madison Aves.)
www.aquavit.org

Tørst / Luksus
615 Manhattan Ave.
Brooklyn, NY 11222
www.torstnyc.com
www.luksusnyc.com

Aska
47 S. 5th St.
Brooklyn, NY 11249
www.askanyc.com

ディルやパセリ、わさびの葉などの香草に包まれたニジマスのソテー。(Agern)

アラスカ産タラバガニを使ったタルト。ベンクトソン・シェフのマジックで花園のように変身(Aquavit)

秋色の「ビーツの塩釜焼」は、付け合わせやトッピングもビーツで統一。大地の味満載。(Agern)

プラムのピューレをあしらった「ひな鳩のグリル」。落葉の小道を歩いているよう。(Luk- sus)

大地から生える野草を連想させるプレゼンが美しい、キャビアはコース料理のうちの一品。(Aska)

野菜とピーチでかわいく盛り付けられた「サーモンのたたき」は、スモークマヨネーズでいただく。(Aquavit)


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