2016/10/28発行 ジャピオン888号掲載記事

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ロリさんおすすめ! 名作短編小説

「The Secret Life of Walter Mitty
(ウォルター・ミティの秘密の生活)」
James Thurber・著
Penguin Books Ltd
2013年

 妻の尻に敷かれている、さえない男、ウォルター・ミティは、ある時は船長、ある時は記者と、目まぐるしい日々を過ごす…?
 ウォルターの日常生活と「秘密」の生活の二つの展開が交じり合い、テンポの緩急差が絶妙。2013年に映画化(邦題:LIFE!)されたが、内容は異なる。
 著者は「ザ・ニューヨーカー」の編集者で風刺漫画家であるジェームス・サーバー。今作の挿し絵も自ら描いている。
「The Lottery(くじ)」
Shirley Jackson・著
「The Lottery : And Other Stories」収録
Macmillan
2005年  

 人口300人程度の小さな村の広場で行われる、毎年恒例のくじ引き。果たしてくじの目的は?そして選ばれるのは誰か?
 細やかで淡々とした描写が、話のリアリティーを倍増させる。衝撃のラストは必見。
 ミステリー、ホラーの名手、シャーリー・ジャクスンの作品。代表作の長編ホラー小説「The Haunting of Hill House(たたり)」は、映画「ホーンティング」などで2度映像化したことでも知られる。
「A&P」
John Updike・著
「The Early Stories : 1953-1975」収録
RandomHouse LLC
2007年

 海のない町にあるスーパー「A&P」でレジ打ちをしているサミーは、ある夏の日、店にやってきた水着姿の女性3人が気になってしまい…。
 シニカルだがユーモラスな文体が特徴。主人公サミーが胸中でつぶやく冗談に、思わずクスリと笑ってしまう。
 著者ジョン・アップダイクは、「RabbitisRich(金持になったウサギ)」「Rabbit at Rest(さようならウサギ)」でそれぞれピュリツァー賞を受賞している。

米文学デビューは短編から!

紀伊國屋書店の英語書籍担当バイヤー、ロリ・ザランさんに、英語の本を1冊も読破したことがない人にこそトライしてほしい短編作品を選んでもらった。

Q今回の選書のポイントは?

Aニューヨークとその近郊出身の作家を中心に選びました。その中でも、比較的平明な英語で書かれた短編、ジョン・アップダイクの「A&P」、シャーリー・ジャクスンの「ザ・ロッタリー(くじ)」、ジェームズ・サーバーの「ザ・シークレット・ライフ・オブ・ウォルター・ミティ(ウォルター・ミティの秘密の生活)」の3作をおすすめします。文中で癖のある言い回しや方言が多用されていると、英語がネーティブでない人にとっては少し読みづらいですからね。3作とも、雑誌「ザ・ニューヨーカー」で発表された、ちょっとシニカルで大人向けのフィクションです。あっという間に読めますが、何度読み返しても飽きません。どれも少し考えさせられる結末なので、読む人によって異なる読み方ができるのも魅力の一つです。

 読んだことのある人と、感想を話し合ってみると、異なる意見が出てきて面白いですよ。

Q今回選んだ以外で、おすすめの作家は?

Aオー・ヘンリーとスティーブン・キングの短編は、短いながらもストーリーがよくまとまっていて、シンプルな英語で書かれています。オー・ヘンリーの作品なら、有名な「ザ・ギフト・オブ・ザ・メージ(賢者の贈り物)」、スティーブン・キングの作品なら、映画「ショーシャンクの空に」の原作でもある、「リタ・ヘイワース・アンド・ショーシャンク・リデンプション(刑務所のリタ・ヘイワース)」が特におすすめです。

 アーネスト・ヘミングウェーも、シンプルな文章と深いストーリー性が評価されている作家です。「ザ・オールド・マン・アンド・ザ・シー(老人と海)」は、そのいい例ですね。こちらも、英語での読書が初めての人におすすめする作品です。

 とはいえ、英語で読み始めるなら、自分が好きなジャンルから入っていくことが大切です。ミステリーが好きなら、ミステリーに挑戦してみてください。いろいろな米文学作品を読みあさっていくうちに、きっと好きな作家も増えていきますよ。最初の1冊を選ぶのに困ったら、異なる作家の作品を1冊にまとめた、アンソロジーを選ぶのも手です。

 また、ある程度知名度がある作品は、日本でも和訳が刊行されています。英語が苦手な人は、和訳と原文を比べながら読み進めてみましょう。

Qロリさん自身が好きな作品は?

Aジョン・スタインベックの「オブ・マイス・アンド・メン(二十日ねずみと人間)」は、大好きな作品の一つです。作中で登場するキャラクター、レニーがウサギを飼うことを夢見て、ウサギの話をしているシーンがあるのですが、レニーの運命を思うと、そのシーンは今でも思い出すだけで涙ぐんでしまうんです。

 スタインベックもあまり難解な英語を使わないので、英語で小説を読み慣れていない人でも無理なく読めると思います。彼の作品では、「トルティーヤ・フラット」も面白いですよ。

ロリ・ザランさん
紀伊國屋書店ニューヨーク店、英語書籍担当バイヤー。1年で読む本は約90冊で、好きなジャンルはミステリー。

Kinokuniya Books New York Main Store
1073 6th Ave. (bet. 40th & 41st Sts.)
TEL: 212-869-1700www.kinokuniya.com


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