2016/05/06発行 ジャピオン863号掲載記事


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今シーズン 絶対に見たい、この作品
春・夏シーズンおすすめの演目を、タイプ別に紹介する。ハリヤマバレエの針山真実さん、アメリカン・バレエ・シアター(ABT)のダンサー、相原舞さん、同シアターのワードローブ・スーパーバイザーの上田ダンバー智子さんからも見どころや注目ポイントを聞いた。
For Beginners and Children
親しみやすく、初心者や子供にぴったりの作品

Sarah Lane as Aurora in The Sleeping Beauty
PHOTO: Rosalie O’Connor

 クラシックバレエ鑑賞の初心者にとっては、いくら有名な演目でもストーリーが難しかったり、上演時間が長かったりすると、途中で飽きてしまうこともある。そこで、初心者におすすめするのは、音楽、衣装、演出、ストーリー展開などの全てがエンターテイニングに作られているもの。

 まずは、夏らしくてきらびやかな「真夏の夜の夢」(A Midsummer Night’s Dream)。シェークスピアの戯曲をベースにした、コミカルで奇想天外なストーリー。ハッピーエンドも後味が良い。妖精が出てきたり、魔法をかけたりかけられたりと、ファンタジーの要素がいっぱいの作品だ。

 グリム童話やディズニー映画でおなじみの「眠れる森の美女」(TheSleeping Beauty)は3時間の大作だが、テンポのよい展開で子供も十分楽しめる。ブロードウェーの「ライオンキング」の舞台装置と衣装を手掛けたリチャード・ハドソンによる豪華な衣装も見逃せない。

 もう一つの古典「海賊」(Le Corsaire)もジャンプや回転を多様したエネルギッシュな踊りとエキサイティングな内容。「リーズの結婚」(La Fille mal gardee)は、短めのコメディーでストーリーも分かりやすい。

プロから一言

●小学生なら「眠れる森の美女」と「真夏の夜の夢」、小学校高学年や中学生なら「海賊」と「白鳥の湖」が楽しめます。(針山さん)

●「リーズの結婚」にはプリンシパルがリボンを使って踊るシーンがあります。また鶏役のダンサーが出てくるなど、小さな子供でも楽しめる内容です。(相原さん)

Intriguing Productions
振り付けや演技にプロが注目する全幕もの

Duncan Lyle as the Astrologer and Skylar Brandt as The Golden Cockerel in The Golden Cockerel
PHOTO: Fabrizio Ferri

 見応えのある作品を期待する人は、ABTの新作「金鶏」(The Golden Cocke- rel)を見てほしい。同シアターが2014年にアーティスト・イン・レジデンスとして招いた振付師アレクセイ・ラトマンスキーが手掛けた新作で、プーシキンが書いたロシアの寓話を、円熟期のリムスキー=コルサコフがオペラに仕上げたもののバレエ化。帝政ロシアの体制批判を風刺的に盛り込んだ、少々複雑な話だが、国への思いがこもった、心に訴えかける要素が盛りだくさん。バレエの本場ロシアの真骨頂(しんこっちょう)を発揮する、力強い作品だ。衣装は前出のリチャード・ハドソン。

 シェークスピア原作の「ロミオとジュリエット」(Romeo and Juliet)は一時期ABTの共同芸術監督を務めた英国ロイヤル・バレエのケネス・マクミランの振り付け。ドラマチックなストーリーとプロコフィエフによる重厚な音楽で、観衆を魅了する。 

 前出の「海賊」や「眠れる森の美女」も、高度なテクニックの踊りや作品の大きさ、質の高さでプロをうならせる。

プロから一言

●新作の全幕ものを観たければ「金鶏」がおすすめ。「ロミオとジュリエット」は感情表現を重視していて、踊る人によって演技が異なるので、私も楽しみにしています! (針山さん)

●「眠れる森の美女」はラトマンスキーが振り付けした新しい演目でABTでは昨年初演。アメリカらしいビビッドカラーの衣装にも注目です。(相原さん)

●「眠れる森の美女」はエキストラが85人も出演する大舞台です。エキストラ用の衣装はイタリアにまとめて発注しているんですよ。(上田さん)

Classic Masterpieces
やっぱり一度は見ておきたいこの古典

Hee Seo as Odette and Roman Zhurbin as Rothbasrt in Swan Lake
PHOTO: Gene Schiavone

 三大バレエのうち、冬に上演される「くるみ割り人形」(Nutcracker)を除く2作品「白鳥の湖」(Swan Lake)と「眠れる森の美女」はどちらも夏シーズンに見ることができる。「白鳥の湖」は、オデット(白鳥)とオディール(黒鳥)の二役を一人のダンサーが演じ分けるところや、オディールの32回のグランフェッテ(回転技)をはじめ、美しい「オデットと王子のアダージョ」、4人のダンサーの息の合った動きのコンビネーションが見事な「4羽の白鳥たちの踊り」など、見せ場がたくさん。ABT初の黒人プリンシパルダンサー、ミスティー・コープランドが踊る「白鳥」は特に人気だ。

 120人ものパフォーマーが出演する壮大な「海賊」も1858年初演の古典。バイロンの詩をもとに作られており、ギリシャ娘のメドゥーラと海賊コンラッドの恋を主軸にした活劇が、地中海を舞台に繰り広げられる。海賊が恋人の救出作戦を実行するというハリウッドばりの筋書きでアクション満載。ダンサーにも高度なテクニックが要求される。船が難破するクライマックスは圧巻。

プロから一言
●ミスティーが「白鳥の湖」を演じるようになってから、これまでバレエに触れたことのなかった観客が増えました。(上田さん)

●「海賊」はテクニックがたくさん盛り込まれていて興奮しますが、一方でゆったりした夢のシーンが入っているのもいいですね。(針山さん)


Stella Abrera as Gulnare in Le Corsaire
PHOTO: Geme Schiavone
Choreographer- and Composer Series
振付師や作曲家の作品を集めたシリーズ

Polina Semionova and Marcelo Gomes in Symphony #9
PHOTO: Marty Sohl

 一つの物語を全幕通して見せるのではなく、1人の作曲家や振付師の小作品や、ある一つのテーマにフォーカスした作品を集めて魅力を伝えるシリーズもある。ニューヨーク・シティー・バレエ(NYCB)の創設者で振付師のジョージ・バランシンによる3作を披露する「オール・バランシン」(AllBalanchine)や、ブロードウェーの「王様と私」「ウエスト・サイド・ストーリー」で知られる振付師でNYCBのバレエマスターも務めたジェローム・ロビンズの2作品を上演する「オール・ロビンズ」(All Robbins)は、巨匠たちのスタイルを知るには最適のシリーズ。この他NYCBでは「21世紀の振付師たちⅡ」(21st Century Choreographers II)と題したシリーズも展開。

 ABTも同様のシリーズを上演。同シアターの振付師ラトマンスキーをフィーチャーした「ラトマンスキー・トリプル・ビル」(Ratmansky Triple Bill)や作曲家のドミートリー・ショスタコービッチの音楽をもとに、ラトマンスキーが振り付けた「ショスタコービッチ・トリロジー」(Sho- stakovich Trilogy)は見逃せない。上演する日、作品によってパフォーマーが異なるので、お目当てのダンサーがいる人はウェブサイトで事前に出演日を調べていくと、より楽しめる。

プロから一言

●「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」やバランシン振り付けの「シンフォニー・イン・スリー・ムーブメント」は好きな作品です。どちらも短編なので、初めてバレエを見る人にも入りやすいと思います。(針山さん)


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