2016/04/22発行 ジャピオン861号掲載記事


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フラッシング
300年の歴史を歩く

7番線の終点、メーンストリート駅周辺の喧噪(けんそう)から一歩路地を入ると、築300年以上の建物が残り、歩くだけで開拓時代にタイプスリップできる。散歩がてらフラッシングの過去・現在・未来の魅力を探ってみよう。

ニューヨークで6番目に古い建築

 フラッシングの心臓といえば、ボウンストリートと37ストリートが交差するあたりに佇むボウンハウス(地図①)。英国人商人ジョン・ボウンが1661年に建てた。熱心なクエーカー教徒のボウンは、この私邸で当時違法のクエーカー集会を開き、時の支配者オランダ人総督ピーター・スタイブサントによって投獄される。オランダ本国で裁判にかけられるも法律に明記されていた宗教の自由を訴え、結果、クエーカー信仰の正当性を勝ち取りフラッシングに返り咲いた。この土地の英雄で、私邸前の道路の名前にもなっている。

 61年は日本で言えば万治4年=寛文元年。江戸時代前期にさかのぼるこの二階建て木造住宅はオランダ式の設計をもとに英国式技法で建築された。ニューヨークで6番目に古い歴史的家屋だ。

 クエーカー禁止令が解けた後、そのボウンが中心になって設立したのがノーザンブルバード沿いにあるクエーカーのミーティングハウス(集会所)。94年の建立。見た目には尖塔(せんとう)も十字架もなく一般家屋と変わらぬ質素な造りだが、320年余に渡る歴史の風雪に耐えてきた(地図②) 。

37-01 Bowne St.
南北戦争時代には逃亡奴隷の避難所の役目も果たした。不定期で一般公開。詳細はwww.bownehouse.orgを参照

137-16 Northern Blvd.
ボウンは私財を投じて現住所に土地を購入して墓地と集会所を作った。18世紀に入るとクエーカーの平和主義が人気を呼び、アメリカの活動の拠点となる
種苗ビジネスの中心

 ボウンストリートを37ストリートで曲がり、西へ進むと小公園になっていて、中に古い木造の邸宅が一軒建っている。1785年の建築。1801年に購入したジョセフ・キング船長にちなんでキングズランド・ホームステッドと呼ばれている。(地図③)貿易商でもあったキング船長の一家はホームステッドと呼ばれている(地図③)。

 貿易商でもあったキング船長の一家はフラッシング周辺に広大な農場を保有していた。息子の代になって、当時すでにこの辺で盛んだった種苗園を義父から買い取りビジネスを拡大。キング一族は1930年代までこの家に暮らしていた。キングズランドは、2回(26年、68年)の移築を経て現在地に落ち着き、今では博物館となっている。2階に保存されている一家の最盛期1870年代当時のインテリアは必見。随時開催されるクイーンズをテーマにした企画展も興味深い。

 キングズランドに隣接するのがウィーピングビーチ(しだれブナ)の大木だ(地図④)。今の季節は枯れているが初夏になると緑の若葉で覆われ壮観。もともとこの場所には、種苗園時代の園芸家サミュエル・ボウン・パーソンズが47年に植えた「しだれブナ」の名木が高さ18メートルにまで成長して立っていたが、1998年に「老衰」ゆえに151年の「樹命」を閉じた歴史がある。現在の木はその後に植えられたものだ。

 世界中から集まる種苗の取引場所として人・モノ・金が集まっていた18世紀のフラッシング。そんな繁栄の時代を象徴するのが、ノーザンブルバードにある旧町議会堂だ(地図⑤)。1862年に地元の建築家が設計したネオロマネスク様式の建物の威容は遠くからでも目を引く。フラッシングがニューヨーク市に併合されてからは、簡易裁判所などに使われていたが、戦後は打ち捨てられ廃墟状態に。1995年に大改修され、現在は文化センターとして「活躍」している。アジアの民族芸能のパフォーマンスなど地元に根ざしたユニークな演目が多い。

143-35 37th St.
邸内はクィーンズ歴史協会の本部で一部博物館として一般公開されている。開館時間は火、土、日の午後2時半〜4時半

143-35 37th St.
しだれブナはヨーロッパ原産。夏になると無数の楕円形の葉をつける。もともとあった大木はベルギーから移植されたものだった

137-35 Northern Blvd.
ノーザンブルバードに面して堂々と立つ元町議会堂。現在ではさまざまな文化背景を持つ移民パフォーマーたちに表現の場を提供する


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