2016/01/29発行 ジャピオン849号掲載記事


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各国の旧正月の風習を知ろう

ニューヨーク近郊で暮らす、旧正月を取り入れている国の出身者に、故郷での伝統や、当地での祝い方を聞いた。

豊穣を祝い金運を呼込む中国

 ミッドタウンの広東料理店、「フェニックスガーデン」の2代目店主ビクター・チューさん。香港生まれで9歳で来米した。「一口に中国の旧正月と言っても、地方によって祝い方は千差万別」と言うが、唯一の共通項は餃子。縁起のよい「交子」という単語と発音が近いため食される。「各家庭で先祖伝来の製法に従って手作りします」と語る。

 「うちの場合、家業が料理店ですから、食事に重きを置きます」というビクターさん。特別料理の主役は、鶏肉の丸焼きや魚の丸揚げ料理。「尾頭付き」だからおめでたい。一気に食べ尽くさず、数日間かけて食すという。

 中国のラッキーカラーは赤と金色で、共にお金の象徴。赤い色ということでエビ料理が欠かせない。またピラミッド状にミカンを積むのも、色が黄金を象徴するからだとか。

 「昔は豊かな収穫を、今は豊かな収入を祈願します。だから旧正月ではお金が大事な要素です」とのこと。中国版お年玉「圧歳銭」の出費も、ビクターさん宅では例年8000ドル以上になる。「お年玉は、未婚者の場合、その人の母親が用意するのが昔からの習わし。結婚しない限りいつまでも貰えます。僕も19歳の時は総額1万5000ドルぐらい集めたものだけどね」と笑う。

 旧正月の間は、仕事も少なめにして家族とゆっくり過ごす。「この時期は自分の中の中国を静かに再確認する時」と語るビクターさんの店では、旧正月の特別メニューを2月5日より提供している。


Victor Chuさん
Phoenix Gardenオーナー
www.phoenixgardennyc.com



「PhoenixGarden」で提供される旧正月メニューの数々

「福」の字を上下逆さに貼るのは運気が転がり込むようにとの意味から

台湾南部はパイナップルで祝す

 台湾南部出身のバーテンダー、GN・チャンさん。一般的には、旧正月の大みそかと元日は父親側の家族と、二日目は母親側の家族と過ごすが「僕の場合、父方の祖父母は亡くなっており、父が長男なのでわが家に人が集まり、母が料理を作って出していました。母親側の家族は40~50人と大人数なので、レストランで食事をすることが多かったですね」と語る。

 中国同様、縁起の良い言葉と近い発音のものを食べる習慣がある台湾。例えば、「毎年余りが出る」=「財力が増えること」を意味する「年年有餘」という四字熟語があり、その「餘」と発音が近い魚を丸ごと料理したものを食べる。また台湾語で「吉兆」を意味する「好彩頭」という言葉があり、その「彩」と発音が近い大根やパイナップルを食す習慣もある。「母は『潤餅烏魚子』という、カラスミを生春巻きのように包んで食べる料理を出していました」とのこと。

 食事後、子供たちは花火を上げたり、爆竹を鳴らして遊ぶ。一方、大人たちはマージャンやカードゲームをし、ギャンブルにいそしむのだという。その際「赤い色は縁起がいいとされ、赤い下着や靴下を履くのが習慣になっています」と教えてくれた。

 ニューヨークに移住して4年。家族と離れて暮らすこともあり、母国でのようには祝わなくなったが、旧正月には友人たちとチャイナタウンのレストランに集まり食事をするのが習慣になったと言う。

 「旧正月は友人と集まるいいきっかけですからね」


GN Chanさん
Angel’sShareにバーテンダーとして勤務



旧正月は家族が集まる大切なイベントだ

縁起が良いため、魚をまるごと料理したものをいただく

チベット人は馬に乗り弓を引く

 チベットでは陰暦による旧正月「ロサル」を年間で最大のお祭りと考える。「ロサルの準備は2週間前から始まり、家の中を大掃除し、家具や服を新調します」と話すのは、ジャクソンハイツにあるチベット料理店「ヒマラヤン・ヤク」のマネジャー、ジャミヤン・グルンさん。ネパール育ち。両親がかつての「秘境」ムスタン王国出身のチベット人だ。

 ニューヨークに移住してからは正統なロサルをなかなか祝えないと言いつつも、毎年、新年には家族で集まり、民族衣装バクーで着飾って、ダライ・ラマに祈りを捧げ、旧年の豊穣に感謝を表する。

 ロサルの代表的料理は、「グトゥク」と呼ばれる牛骨スープ。大麦を中心に穀物や野菜がふんだんに投入され、滋養たっぷりだ。中に塩や金属、炭、岩塩などを埋め込んだ、まんじゅうのような具が入っていて、食べたときに出て来たものによって新年の吉凶を占うとのこと。

 また、チベット風揚げドーナツ「カプセ」もロサルの定番食。「甘くてパリパリの皮が子供の頃から大好きでした」とジャミヤンさん。そして、祝い酒の「チャン」は、大麦原料のチベット式ビールだ。

 クリーンな部屋で気持ちも新たに、粛々と新年を迎える姿勢は、日本人と似ているが、ジャミヤンさんの故郷での正月遊びは独特。

 「ムスタンでは正月に必ず馬に乗ります。弓術の技を競い合うチベット版アーチェリーも、ロサルの遊戯なんですよ」


Jamyang Gurungさん
Himalayan Yakマネジャー
www.himalayanyak.net



旧正月料理を囲んで。チベット風揚げドーナツ「カプセ」がテーブルに並ぶ

伝統的な衣装を着て、家族で集まるのが慣わし


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