2015/11/13発行 ジャピオン839号掲載記事


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お話を聞いた人


川野作織さん

小学生の頃から有田焼を愛し、「将来は素敵な器に囲まれて暮らしたい」と念じていたという川野さん

時を越えて輝き続ける
人生に寄り添う器たち

日々使うものだけに、器にはさまざまな思いが宿る。和食器や厨房用具、和包丁などを輸入販売するコーリン・ジャパニーズ・トレーディング・コープ社長の川野作織さんに、自身の大切な器について話を聞いた。

横浜にある実家の隣が有田焼の専門商社だった縁で、実家には有田焼の器があふれていた。その影響を受け、「将来もこんな素敵な器に囲まれて暮らしたい」と川野さん自身も、小学生の頃から器を集め始めたという。
そんな川野さんの思い出の器は、高校生のときに思い切って買った有田焼のティーポットとケーキ皿のセット、そして結婚祝いに隣家の夫人から贈られた和皿のセットだという。

何十年経っても変わらずに好き

「高校生のとき、デパートの特選売場で見つけて、どうしても欲しくなってしまったんです」と言って取り出したのは、有田焼のティーポットとケーキ皿5枚のセット。
当時、海外の器にも興味を持ち始めていた川野さん。このティーポットと皿の柄や色使いが、どこかウェッジウッド社製の器を思わせるところが気に入り、おこづかいをはたいて購入した。
「制服姿の女子高生が、本気で買うと思わなかったんでしょうね。店員さんも誰も私に声を掛けなかったわ」とほほ笑む。
もう一つのお気に入りは、25歳で結婚した際に、隣の専門商社の夫人から贈られたもの。有田焼特有の呉須(ごす)という藍色で魚を描いた和皿だ。
夫人は器のカタログ数冊を川野さんに渡し、「何でも好きなものをあげる」と言ったという。そして何日もかけてこの器を選んだ。
「おばさまは、『こんな地味なものじゃなくて、結婚のお祝いらしい華やかなものを選びなさい』と。でも私はこれがいいと言い張って、贈ってもらったの」と川野さんはいたずらっぽく笑う。
絵柄は印刷や転写に頼らず、全て手描き。凹凸のある形状の皿に、これほど繊細な柄を描くには非常に高い技術を必要とする。華やかな色柄の器には目もくれず、この器を選んだ自分を誇らしく思い返す。
「高校生の時に選んだティーポットと結婚した当時に選んだ器。毎日、何十年と使い続けても、変わらずに好きなんです。あの頃から本当に器が好きだったんだな、そしてあの頃すでに、私のテイストは出来上がっていたんだな、と改めて思います」

今に感謝するリマインダー

「ティーポットのふたの取っ手は取れているし、欠けたお皿もあるけれど、毎朝このポットに紅茶を入れ、このお皿を使うんです」
「小さい頃から自分が大好きなことを、一生の仕事にできた幸せを、この器たちは思い出させてくれる。いわばリマインダーなんです」
「今」があるのは、あの頃の自分があったから。毎日そう思い起こしながら、今の仕事に感謝し、そして客に良い物を提供するためには決して妥協しない川野さん。人生に寄り添い、共に歩んできた親友のような器たちが、今日も川野さんを見守っている。

 


有田焼のティーポットとケーキ皿のセット。どこか洋風な趣のある色柄がお気に入り


結婚祝いにもらった有田焼の和皿。手描きの繊細な絵柄にほれ込んで自ら選んだ

KorinJapanese Trading Corp.
57 Warren St.
(bet. Church St. & West Broadway)
TEL:800-626-2172
www.korin.com

 


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