2015/08/07発行 ジャピオン825号掲載記事

お話を聞いた人


桑間雄一郎先生
(Yuichiro Kuwama, MD)
内科専門医師。東京海上記念診療所院長兼マウントサイナイ医科大学内科准教授。東京大学医学部卒業後、腫瘍血管外科勤務を経て来米、ベス・イスラエル・メディカルセンター内科研修を修了。若手医師たちの指導に、積極的に携わる。

東京海上記念診療所
Japanese Medical Practice
〈マンハッタン〉
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〈ウエストチェスター〉
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注意! 熱中症の4大要因
直射日光、高温、多湿、無風


 炎天下のハーフマラソンで、熱中症を体験した内科医師・桑間雄一郎先生。自らの経験と医学的な観点の両方から、熱中症と夏バテのメカニズム、予防法について話を聞いた。


熱中症の予防 鍵は発汗にあり

 熱中症とは、暑さで人間本来の体温調節メカニズムが破綻を来した状態のこと。車のオーバーヒートに似ている。

 「恒温動物である人間の体は、わずかな範囲内の体温でしか正常に機能しません。そのため暖房や冷房、衣類の調節によって外的環境を整えながら生活しているのです」と桑間先生。

 そのほかに、人間の体には体温調節機能が備わっている。その中で特に重要なのが発汗作用だ。汗が蒸発し皮膚から熱を奪うことで、人間は体温を下げている。

 ところが、炎天下で長時間過ごしたり、マラソンなどで汗をかき過ぎたりすると、かく汗もなくなり(脱水症状)、体温調節機能が破綻し、体温が急激に上昇。正常な体温の範囲をあっという間に超え、気分が悪くなる。これが熱中症だ。

 桑間先生は、熱中症の4要因を「高温」「多湿」「無風」「直射日光」だと話す。

 高温でも湿度が低ければ、皮膚表面から汗が蒸発しやすいので、熱中症になりにくい。また湿度が多少高くても、風があれば汗の蒸発を助けてくれる。日陰にいれば、直射日光で体温が上がるのを防ぐことができる。

 4要因がそろったときは注意が必要。熱中症は筋肉のけいれんから始まり、めまいや疲労感へと発展し、意識が急激に遠のくこともある。桑間先生が自らの体験から語るように、「いきなり崖っぷちから落ちるように気分が悪くなる」のだ。

 服用中の薬にも要注意。抗ヒスタミン剤、風邪薬、降圧剤、精神安定剤など発汗抑制作用のある薬は、熱中症のリスクを高める。

 さらに、屋内でも油断は禁物。熱中症による死亡の69%は屋内で起きる。「薬を服用する高齢者が、高温多湿の室内で熱中症になるのはよくあることです」と桑間先生は話す。

 予防には4要因を避け、十分に水分補給をすることが大切だ。水よりも、電解質を含むスポーツドリンクを飲むとよい。アルコールやカフェインは利尿作用があり、体温調節に必要な汗を尿として出してしまうので避けること。また屋外でのスポーツ観戦では、日傘や帽子を活用し、直射日光を避けるのが効果的だ。

高温多湿との闘いが夏バテを引き起こす

 熱中症が「急性症状」なら、夏バテは「慢性症状」。高温多湿の環境下で、人間の体は体温調整を続けることで、知らないうちに体力を奪われ、さまざまな症状を来すのが夏バテだ。特に、冷房で冷え過ぎた屋内と高温の屋外の寒暖差に、体温調節機能が適応しきれず、体に不調を来しやすくなる。

 「夏の暑さは疲労や食欲減退、睡眠不足につながり、その悪循環の結果が夏バテです」と桑間先生。

 予防には、日頃から軽い運動をするのがよいという。運動をして、重要な体温調節機能である「発汗」を疑似体験するのがポイントとのこと。

 「運動をすると鼓動が早まり、血管が開いて、汗が出ますね。運動により日ごろから発汗を体験することで、体の反応がよくなり、ありとあらゆる環境下で、体温調節機能を発揮する底力がつくわけです」

 なにも毎日何十キロも走れというのではない。ヨガやストレッチのような静かな運動でも、心臓の鼓動が早まり、汗がじわーっと出てくる。その程度でも十分だそうだ。そして、「屋外でのジョギングやウオーキングは、早朝や夕方に行い、過酷な環境を避けることが、熱中症や夏バテにならないための鍵です」と桑間先生はアドバイスする。


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