2017/12/22発行 ジャピオン947号掲載記事

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謎多き胃の不調
メカニズムを知ろう


内科専門医の桑間雄一郎先生に、意外と知らない胃についての基礎知識を聞いた。

 胃の基本的な働きは、①食後何時間か食べ物を貯めておき、②その間分泌される胃液と、食べ物をよく混ぜ、③胃液に含まれる消化酵素で化学的にも食べ物を細かく分解すること。 たんぱく質、糖分、脂肪など、それぞれを分解するためのさまざまな消化酵素が、唾液、胃液、すい液、腸液に含まれる。

 よく胃のトラブルを起こす胃酸も、強い酸性の胃液成分だ。「胃酸は、食物と一緒に体内に取り込まれたばい菌を殺すという重要な役割を持ちます」と桑間雄一郎先生は言う。
 胃の形にも理由がある。
 「食べ物が一気に小腸に送られると、小腸での栄養分の消化吸収が追いつきません。そのため、ある程度の時間、胃に食べ物を貯める必要があるので、袋の形をしているわけです。出口が小さいのも、細かくした食べ物を小腸に少しずつ送るためです」

胃痛のタイプを理解しよう

 「体内にある胃は目に見えませんが、皮膚や筋肉の痛みと比較すると、胃痛のメカニズムが見えてきます」と桑間先生。

 胃痛にはまず、胃酸過多などで胃内部の粘膜がただれ、びらん(内壁が剥がれた状態)や潰瘍(かいよう)になったための、どちらかというとキリキリとした痛みがある。これが皮膚でいうならすり傷状態だ。すり傷が食道に生じれば胸焼けになる。

 もう一つは、暴飲暴食で胃が一気に引き伸ばされ、翌朝胃が張ったように感じる痛み。これは、体でいうならストレッチ後の筋肉痛だ。吐き気や食欲不振、もたれ感はそうした状態の副産物と言っていい。

 痛みの原因、感度には個人差がある。何をどれだけ食べたらどんなタイプの胃痛になる、という方程式はない。医学が進んだとはいえ、胃痛には分かっていない部分が多いという。

 「胃痛は、腸の痛みも加味された総合的な症状で、複雑です。胃酸過多の人もいる一方で、検査しても異常がないのに、胃壁の神経過敏のため、ちょっとしたことで胃が痛くなる人もいます」と桑間先生。

酒、油、ストレスは大敵

 忘年会・新年会の定番メニューともいえるアルコール飲料と揚げ物は、胃の不調をきたす定番レシピでもある。そのメカニズムは単純ではないが、油が十二指腸を刺激して、そこから分泌される成分が胃の働きを鈍らせるという説があるそうだ。

 もちろん酒と油はすい臓を酷使する最悪のコンビでもあり、恐ろしい急性すい炎の原因にもなる。

 ストレスや喫煙も胃の大敵だ。精神的なストレスや、タバコの成分は自律神経を介して胃の働きを鈍らせる。胃壁そのものの血流も減少する。桑間先生によると、「胃は食べ物を分解しますが、胃自身まで分解してしまわないよう防御システムを持っています。ところが、血液が十分に行き渡らないと胃が栄養不足となり、その自衛機能が落ちて、自爆状態になってしまうのです」。そうすると、胃と腸のさまざまな不調につながる。

ピロリ菌は退治しておこう

 胃酸の中でも生き延びるのがピロリ菌だ。ピロリ菌があると将来胃がんになる確率が6倍になるという研究結果もある。いつも胃の調子が悪い、胃が痛いような人は、一度検査をしてピロリ菌退治をしておくとよいと桑間先生は話す。

 吐く息か便を検査することで簡単に探知でき、治療も簡単だ。血液検査は不確実という理由で、アメリカではピロリ菌検査の主流ではない。

桑間雄一郎先生
Yuichiro Kuwama, MD
東京海上記念診療所院長。内科専門医師。マウントサイナイ医科大学内科准教授。著書に「極論で語る総合診療」(丸善出版)他。
東京海上記念診療所
Mount Sinai Beth Israel Japan- ese Medical Practice
• 55 E. 34th St., 2nd Fl.
TEL: 212-889-2119
•141 S. Central Ave., #102, Harts- dale, NY 10530
TEL: 914-997-1200

市販薬の基礎知識

昔から日本にある漢方は、胃に「すっきり感」を持たせることで、胃痛や胃もたれの症状を緩和するものだ。対して現代の市販胃薬には、①胃酸の中和剤(Tumsなど)と、②胃酸分泌を抑えるタイプがある。②にはH2ブロッカー(ZantacやPepcidAC)と、PPIことプロトンポンプインヒビター(Prilosecなど)がある。PPIは日本では処方薬で、より強力。これらが登場して以来、胃潰瘍の手術の必要性がなくなったそう。

 処方箋の降圧剤や、骨粗しょう症の薬の中には、胃をムカムカさせ、胸焼けを引き起こすものがある。症状がひどい場合は主治医に相談しよう。

 鎮痛剤の「Advil」や「Aleve」などのNSAID(非ステロイド抗炎症剤)は、胃粘膜の保護物質を阻害するので、必ず食べ物と一緒に服用すること。「Tylenol」は、空腹時に服用しても、胃を傷めることはない。


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