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2010/06/11発行 ジャピオン掲載記事
あるべき自分を求めて NY 女の履歴書
 
京都府生まれ
1981年フジテレビ・ニューヨーク支局、特派員アシスタントになる。米系制作会社に転職。チーフADとして編集技術も磨く
95年カンヌ国際映画祭での最年少最優秀賞受賞で話題となった、是枝裕和監督の通訳として各国の映画祭に参加
96年邦画英字幕作家・通訳としてフリーランスとなる
2007年初監督作『TOKKO 特攻』公開
08年『ANPO』(www.anpomovie.com)制作開始
10年ニューヨークで『ANPO』ショートバージョン、東京で特別ダイジェストバージョン上映

「逃げずに向き合う」

命題は生まれた時から目の前に立ちはだかっていた。宣教師の娘として日本で生まれ育った映画監督リンダ・ホーグランドさんにとって、自身と日本、そしてアメリカとどう向き合うかは、避けて通れない道だった。「特権を受けているという罪悪感みたいなものがあった」とリンダさんは話す。
ドキュメンタリー映画『ANPO』は、自身が肌で感じてきた問題の根源でもある、日米安保条約がテーマ。「しんどい歴史を考える取っ掛かりになれば」と、1960年代安保闘争の渦中、アートをもって抵抗した画家、写真家、歌手らの作品や声を通して、時代の叫びを凝縮した。安保条約締結60年の今年、配給先も決まり、後は公開を待つばかりだ。
エール大学在学時に、仲の良かった院生の代理でフジテレビの仕事を手伝った。それがきっかけで駐在員のアシスタントとして採用される。ロケを仕切り、場数を踏むことで「生に強くなった」と言う。7年後、今度は米系の制作プロダクションに転職。チーフADとしてCM制作など手がけるが、7年が経つころ、再びやり尽くした感を意識し、邦画の英字幕に没頭するようになる。日本の文化的、心情的背景を汲んだリンダさんの英字幕は、是枝裕和、宮崎駿、黒沢清、西川美和監督らから信頼をもって重宝された。監督らの通訳として各国の映画祭を巡り、審美眼を養った。フリーランスとなり、英字幕作家・通訳として得た人脈やノウハウ。「自分にしかできない」という確信を持ったころ、映画を撮るための準備はできていた。
監督として自身が扱うテーマは「人の歴史」だからと誠実に描いてきた。しかし、『ANPO』の荒編集を「誠実過ぎる」と評され、ふっ切れたリンダさんは一から編集し直した。作品を作る上での勇気と覚悟は、亡き深作欣二監督の姿勢を模範にしているという。
時代のうねりの中で自分がやるべきことを見出してきた。「日本でもアメリカでもマイノリティーだったから、人が何を言わんとしているのか感じる能力が必要だったのよね。その延長で、時代が無言で叫んでいるものを感じ取れるのかな。それを無視するわけにはいかない。でもまさか、政権交代までは想像してなかった」と肩をすくめる。
「傷ついたままじゃいやだった」と映画『ANPO』を締めくくる芸術家の言葉がある。安保は人の歴史でも、自身のアイデンティティーに関わる「傷」でもあった。その傷から逃げずに向き合った集大成が今作『ANPO』。ライフワークを世に送り出す節目を、リンダさんは今迎えている。

リンダさん 「今は『ANPO』のことしか考えられない」と話すリンダさん。
通訳者としての顔も持つリンダさん。中央は画家の横尾忠則氏 通訳者としての顔も持つリンダさん。中央は画家の横尾忠則氏。(写真提供/共同通信)
※記載されている情報は変更されている場合があります。
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