「ターンテーブルズ・オン・ザ・ハドソン」は、今年で11年目と長い歴史を持つ、ニューヨークの夜の野外DJイベントではパイオニア的存在。ハドソン川に停泊する船「フライングパン」を経て、屋内クラブなどにも会場を移しつつ回を重ね、現在はロングアイランドシティーのウォータータクシー・ビーチで、毎週金曜の夜に開催されている。
このイベントをスタートしたのは、国内外で活躍し、来日経験もあるDJニコデマスさんと、DJマリアーノさん。「長く続いている理由?流行に流されず、情熱を持って好きなことをやっていることだと思う」とマリアーノさん。かける音楽は、ダブ、アフロビート、ラテン、ブラジルやインド音楽、ソウル、ファンクとさまざまだ。「リアルな音楽」を選び、時には生演奏も入れてライブ感を大事にする。そもそも彼らが野外イベントを始めたのは、ハコではなくイベント自体が好きで来てくれるお客さんと一緒に、流行の音楽を求める既存のクラブがやっていないことを、一からやりたかったから。流行りなだけのポップやダンス・ミュージックは追わない。
ルイ・ヴェガ、DJスピナ、リッチ・メディーナなどそうそうたる面子がこれまでゲストDJとしてプレーしているが、面識のない人をエージェント経由で呼ぶことはほとんどなく、自然に広がるナマの人脈からブッキング。自分たちで友人知人にプロモートし、当日も出演しと、DJが一貫して〝顔の見える〟運営をしている。だからこそ長いリピーターが増え、動員数が一晩700人を超す大きなイベントながら、会場にはアットホームな雰囲気が漂う。子どもたちが走り回る間をクラブ用に着飾った女性たちが闊歩し、その横ではヨガに行く時のような軽装&裸足で踊っている人も。
「ニューヨークの冬は寒くて、野外で遊べるのは今だけ。だからこそ、貴重で楽しいんだ」。限られた夏の間、金曜の夜はマンハッタンを臨むビーチで、最高の音楽とともに踊りたい。
イーストリバーを挟んだ対岸には、マンハッタン高層ビル群のネオンがまたたき、開放感は抜群。
たっぷり踊りたい人用に、DJブースの周辺の一角にはテントが張られ、ミラーボールが回るダンスフロアが設けられている。
マリアーノさんのイチオシは、イベントのコンピレーションCDの1枚、『Turn-tables on the Hudson 10 Year Anniversary』。女性プロモーター二人組、レッドさんとジョアン・ヒメネスさん。毎週木曜の夜に、サウスストリート・シーポートのピア16で「シーポート・ソウル・シリーズ」、不定期でガバナーズアイランドのビーチにて「シーサイド・ソウル・シリーズ」と、二つのイベントを開催している。どちらも川風に吹かれつつ、ブルックリンとマンハッタン、対岸の夜景を臨みながら踊れるハウス・イベントだ。二人ともニューヨークでのクラブ歴は長い。特にレッドさんは80年代後半からシーンに関わり、プロモーターとしてルイ・ヴェガ、フランソワKなどの有名DJとも仕事歴があるベテランだ。
そんな二人によるイベントのモットーは、「とにかく、自分たちが楽しめること」。「シーポート・ソウル・シリーズ」では、娘と一緒に踊るパパ、本格ブレークダンスを踊り出すドレッドヘアの青年、社交ダンス風のステップがキマっている初老カップルまで、実にさまざまな面々が、ダンスフロアをにぎわしていた。女性カップルのジャニスさんとドラさんは、お客さんの多様性と落ち着いて楽しめる雰囲気が気に入り、もう数回来ているリピーターだという。
レッドさん曰く、「ありとあらゆる人が来るわよ。白人、黒人、ラティーノ、アジア系、ゲイ、英語を話す人、話さない人…。みんなウェルカム!」。レッドさんとジョアンさん、ともにママでもあり、だからこそ「子どもと一緒に、家族で来られるクラブ・イベント」というのも重要なコンセプトだ。ジョアンさん曰く「開放的な気分になるし、屋内のクラブより、周りの人とより親密な雰囲気になれると思う」というのも野外の魅力。
「昔はクラブやDJが少なかったから、みんながいつも同じ場所に集まっていたわ」と、レッドさん。「今は、イベントが人種やセクシュアリティー、年齢で分かれている。私には理解できないわね。ありとあらゆる人が集まるから、イベントは楽しいのよ!」
「シーサイド〜」の風景。年齢、人種を問わず、さまざまな人が訪れる。
娘と手をとり合って踊っていた、ダンサーのステフさん。娘のダリアちゃんは、はにかみながら「パパと踊るの好き!」。
レッドさん(左)とジョアン・ヒメネスさん。この夏、二人がハズせないという1曲は、ニューヨークのハウスDJ、 Brian Coxxの『My Dream』。