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2008/03/21発行 ジャピオン掲載記事
   

主夫と彫刻家・2足のわらじ

門井吾朗さん


彫刻家の門井吾朗さんは、昼は子育てと家事、夜は創作活動を行ういわば「パートタイム主夫」。娘のセリアちゃんが生まれる前後はちょうど彫刻制作に専念していた時期で、病院に勤務する夫人、ジュリーさんの扶養家族になれば保険などの点でメリットがあると、「書類上のことをきっかけに」ジュリーさんが一家の大黒柱に。吾朗さんも日系の幼児教育施設で働いていた経験を生かしたい、子供は実の親の手で育てたいという気持ちから、子育てを引き受けた。元々時間の自由になりやすい吾朗さんが家事を担当していたので、それを続けることにも抵抗がなかったという。


「自分の父などは、口に出しませんが悲しかったのではないでしょうか。でもその分アートで頑張ることが、最良の埋め合わせになると思っているので」と語る吾朗さん。子供と一緒に朝8時に起き、日中はナーサリー・スクールへの送り迎えや家事をこなし、子供が寝た後は毎日電車でスタジオに通って午前2時まで創作活動にいそしむ。


公園デビューの時は、近所の日本人ママグループにすぐ入っていけず、溶け込みやすいだろうと以前働いていた日系施設を選んで、親子遊びなどのクラスを取り、ママ達と徐々に打ち解けた。異性の子供ならではの困った経験はまだないが、「今後女の子の自覚が出てきて、一緒にお風呂入りたくない!なんて言われたら悲しいですね」。


子育てを始めて、創作活動にも変化が現れた。「子供に言うことを聞かせるには、ただ100回言うだけではだめ。『思い』を込めないと伝わらないということが分かったんです。彫刻を作っている時も、いかにして伝えるか、『思い』の込め方を考えるようになりました」。


主夫にして彫刻家の門井吾朗さん(38)と、セリア道子ちゃん(3)。ママのジュリーさん(34)は病院勤務。アストリア在住。

 
 
子供と一緒の時は、遊ぶことに専念。「遊びと家事は、やっぱり同時にできないんです」。

 

   

娘三人を育てるベテラン主夫

ブライアン・サージェントさん


ブライアン・サージェントさんは、三人の娘の子育てに奮闘する主夫歴7年のベテランだ。長女が生まれた時、大手学術系出版社の編集者として働く夫人のシャロンさんは就職したばかり。数学教師だったブライアンさんは、職業柄、復帰後も待遇が変わらず、キャリアへの影響が少ないという理由で、ためらいなく自分が育児休暇を取得することを選んだ。近所ではまだ珍しい存在だが、両親も友達も応援してくれたそうだ。1年の休暇後、修士号の勉強のために2年間のオフを取り、一度復職したものの、双子が生まれると再び主夫に。教師も「子供の世話をする」という点では同じ、ならば自分の子供の面倒を見たい、と思っての選択だった。


家事のうまさでは依然シャロンさんにかなわないが、子供の言うことや気持ちにかけては、ブライアンさんの方が良く分かる。娘達を学校に送ってからの朝9時から12時頃までが唯一の一人の時間で、副業である数学の本の執筆や編集をしたり、パパブログを書いて気分転換したり。夕方シャロンさんが帰宅すると、娘達は大喜びだ。「お父さんと違って、女性は帰宅したらすぐに『お母さん』に戻って子供の世話ができる。ここで少しでも交代してもらえるのは大きいです」。


「お父さんとして子育てするのは楽しい」と断言。ママの場合、育児も家事もできて当たり前と思われることが多く、プレッシャーも感じてしまいがちだが、「パパに完璧を期待する人はいませんから、自由にリラックスしていられるんです!家事をしているだけでほめられますし、ちょっとミスをしても大目にみてもらえるので」と笑うブライアンさん。当分は教師の仕事に戻らず、主夫を続けるつもりだ。


ブライアン・サージェントさん(38)、キャサリンちゃん(7)、双子のライラちゃんとビクトリアちゃん(3)。ママのシャロンさん(39)と共に、ニュージャージー州グレンリッジ在住。
 
 

子供部屋にしている地下室はおもちゃの天国。ブライアンさん自らがリノベート中だ。

 
 

「親業」の専門家に聞く 子育てにおける父親の役割

一般的には、父親と子供の関係や、子育てにおける父親の役割とはどんなものなのだろう?ペアレンティング・インストラクターの皆川久仁子さんに聞いた。


0~1歳の乳児期には、母と子の関係は極めて密で、父親の存在はいわばその外にあるもの。ここでの父親の役割とは、母親を支え、時には家事を助けるなどして、母親がゆとりを持って子供に接することができるよう状況を整えることです。3歳頃になって子供が精神的に母親から独立し始めると、父・子・母が等距離にある、正三角形の関係ができることが理想です。父親が子供に構わないなどの理由でこれが成立しないと、子供は人間関係をうまく作れなくなり、不登校などにつながる可能性があります。


6歳を過ぎ児童期に入ると、特に男の子にとって、父親の存在は大きいです。息子がサッカーやプラモデル作りなどを一緒にやろうと父親にねだるのは、男同士としての親近感を味わい、父親の力や強さを自分のものにして、男性としての自分を形成していく大切な過程なのです。ですから父親は、息子にとって理想の男性になるという自覚を持って、成長を助けてあげて欲しいですね。


子供が10歳以上になってから父親に求められるのは、「母親から子供を引き離す・間を切る」という仕事。母親が過剰に子供の世話にのめりこむと、子供は息がつまり、自立できません。また思春期になると、子供は父親を嫌い敬遠するようになりますが、これはその前に必ずある「構ってほしい」というサインを父親が見逃してしまい、子供が失望した結果なのです。この時期は積極的に、自分から子供に話しかける努力をしてください。また子供の思春期は、父親も男盛りで、仕事でも勢いに乗っている年代に当たります。ここで生き生きと働く姿を見せておくことが、子供が就職して社会に出て行く時の原動力になるのです。


子育て講習会では、こういった父親の役割の大きさを説明し、父親が子育てに参加するようにと呼びかけています。アメリカでは、保護者面談や子供の音楽会などが、働く父親でも参加しやすい平日の夜にも設けられ、みなさん率先して参加しています。子育てにはその国の社会が影響しますから、日本から赴任してきたばかりのお父さんも、日本でよくあるように「子供のことは妻に任せている」と言っていては困ったことになります。そんなお父さんは、まず週末のサッカー教室や補習校の送り迎えをすることから始めてみましょう。子供と会話するチャンスです。


【お話を聞いた人】

皆川久仁子さん
ファミリーカウンセラー。「親業(Parent Effectiveness Training)」をはじめ、複数のペアレンティング・プログラムの公認インストラクター資格を持つ。スイスの帰国子女として育ち、パリで出産、アメリカで子育てをした経験を生かし、マンハッタン、ライ、ニュージャージーなどにて日本人を対象に子育て講習会を開いている。 www.njjp.net

 
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