元新聞社勤務の竹永浩之さんが「専業主夫」になったのは、息子の龍馬君が満1歳になった頃だ。最大の理由は「日本語」。子供が小さい頃に多く触れ合ってしっかり教え、現地校に入学して英語での生活がメインになる前に確立させたかったという。「人間がどうやって人間になるか、その過程を見たい」という純粋な興味もあった。まず学校教師である夫人、エリノアさんが1年間の育児休暇を取ったが、それが終わる前、会社の組織改革をきっかけに浩之さんが退職。実の親のどちらかが子供の世話をしたいという考えもあり、龍馬君が小学校に上がるまでという期限付きで「主夫」になった。「子供をベストな形で育てることを第一に考えたら、自然にこうなったんです」とエリノアさんは振り返る。双方の両親も理解を示してくれたが、日本人はここがアメリカなのでかえってこういった新しいスタイルを当たり前と思うのか、意外にアメリカ人の友達の方に否定的な人が多かったという。
浩之さんの「主夫」ぶりを、エリノアさんは「『仕事』をしているみたい」と評する。キッチンの壁には、30分刻みのスケジュール表。神経質に時間を守るためではなく、最大限に龍馬君を学ばせ遊ばせながら、浩之さん自身も自分の時間を確保するための工夫だ。英語のプリスクールや日系の幼稚園、学校外のアクティビティーにも計画的に龍馬君を連れて行き、合間に料理、洗濯、掃除などを片づける。時間短縮を重視して、家事は「徹底的に手抜き」。全部完璧にやろうと親が無理をすると、子供にも悪影響と考えるからだ。「子育ても家事も性格的に合う方が担当して、できない部分は手を抜いて、その分もう一人が助ければ良いと思うんです」。
男性だけに特定のママとプレイデートはしにくかったが、公的な場でのプレイグループに参加することで解決。また一般的に会話能力が女性より低い男性が育てると、子供の言葉の発達が遅くなるとも聞いたが、話題がなくなればとにかく日本の童謡を一緒に歌うようにして心配を解消した。様々に奮闘してきた浩之さんだが、龍馬君からの愛情ではどうしてもママに勝てないとか。「母子の絆は絶対ですね。父親は、尽くしても尽くしても捨てられて…」と苦笑する。
次の子が生まれても、また主夫パパをするつもりだが、その時はパートタイムで働こうと思っている。「その方が精神的に良いのと、スターバックスのコーヒーくらい自分のお金で飲みたいので。今はぜいたくだ!とかみさんに怒られますから(笑)」。いずれは予定通り仕事に復帰する。「でも子供が学校に上がるまでは家にいて、手を離れたから外に出る、という感覚ではないんです。この時期やりたいことが子育てだから、主夫をしているんですよ」。
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