「スティック(棒)を使って本気で闘います。リアルファイティングをすることで、人間が本来持っているファイティング・スピリットを取り戻せるのです」と熱く語るのは、グロ・ドン・ピアーさん(61)。フィリピンに伝わる武術「アーニス(Arnis)」(別名カリー)の世界チャンピオンに2回輝いたことのあるピアーさんは、現在、イーストビレッジの道場で教えている。
アーニスは、70センチほどの長さの棒を使って戦う武術。13世紀末から16世紀にかけて東南アジアを支配した、マジャパイト王国の武術が原型と言われている。あまりなじみのない武術だが、数々のハリウッド映画、最近では「ボーン・アイデンティティー」シリーズのアクションシーンで使用されるなど、知らず知らずのうちに目にしたことのある人は、多いかもしれない。
初心者はスティックの持ち方から学び、続いて型を習得する。スティックを使いながら五つの防御の型を学び、実際の対決を通して鍛えていく。寸止めをしない、フルコンタクトの武術のため、生徒たちはヘルメットやジャケットなどの防具に身を包み練習。腕にも防具を付けているが、スティックで叩かれると赤く腫れ上がることもあるという。本気で闘うその気迫と緊張感には圧倒されてしまう。
「マーシャルアーツの基本は暴力から自分を守ることです。多くのマーシャルアーツの中でもアーニスは、実際に護身として使えることができる武術です」とピアーさん。習得すれば、その場にある新聞紙や雑誌を丸めたもの、履いている靴、携帯電話やペンをスティックの代わりにして、暴漢から身を守れるそうだ。
稽古では、本気で闘うことで集中力が付き、神経が研ぎ澄まされ、現代人が失った闘争本能を呼び覚ます。だからこそ、戦った後には、互いの健闘を称える気持ちが芽生え、他人を思いやる精神が培われるという。
「いま世の中は自己中心的で、欲にとらわれている人が多すぎます。困っている人に、手を差し伸べられる精神を備えた人格を育成したい。それが40年アーニスを学ぶことで得た、私の哲学です」
現代の生活で失った闘争本能に、新年早々火を付けてみる?
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