数世紀を経た荘厳な曼荼羅(まんだら)。サンスクリット文字が刻まれた精緻な仏具。シバやビシュヌなどヒンズー教の神々を象った像──。ヒマラヤ文化に特化した欧米初のミュージアム、「ルービン美術館」は2004年10月、チェルシーのかつてバーニーズ・ニューヨークだった建物を改装してオープンした。世界でも指折りの質を誇る所蔵品約1000点のほとんどが、ヒマラヤ美術を愛した富豪、創設者ルービン夫妻のコレクションだ。約2400平方メートルにわたる展示スペースには、ネパール、インド、ブータン、中国、モンゴルなどから集められた2〜20世紀の美術品がゆったりと配置されている。外界の喧噪とは無縁の落ち着いた空間は、仏教文化の根づいた日本人にはどこか懐かしさを感じさせ、意外にすんなりとその世界に入りこませてくれる。
「展示のテーマは数カ月ごとに変わります。外部の作品による特別展示も随時行っているので、何度来ても新鮮に楽しめますよ」と、広報部のアラナ・シンデウォルフさん。展示以外のイベントに注力しているのも、この美術館の特色だ。梵教の僧によるカリグラフィー、ヒマラヤン・ジュエリーや星座表作りなどのワークショップ、インド舞踊の公演やジャズ・コンサートと、ほぼ毎日何かしら行っている。「つい先日は、エルビス・コステロと少林寺僧の共演、なんていうのもありましたよ」とアラナさん。
毎週金曜の午後6時には、1階のカフェがバーに早変わり。カクテルがサーブされ、ブースではDJがヒマラヤ風の音楽をプレーするイベント「K2ラウンジ」も開催される。7時からは入館料が無料になり、更に9時30分からは、このバーで7ドル以上オーダーすると無料で映画が見られるプログラム「キャバレー・シネマ」も開催。溝口健二からフェデリコ・フェリーニまで実に多彩なラインナップを、お酒と共に地下のシアターで楽しめるのだ。
昼は静謐の中で宗教と美が寄り添う世界、夜は人々がカジュアルに音楽や映画を楽しむサロンと、二つの顔を持つこのミュージアム。ここであなたも、ヒマラヤ文化の奥深い世界に浸ってみては? |