エチオピアの蜂蜜ワイン「テチ」は、世界で最も古い飲み物の一つといわれる。旧約聖書において、シバ女王とソロモン王の出会いの祝杯に使われた伝説の酒だ。エチオピアでは家庭でも作られており、家ごとに秘伝のレシピがある。
そのワインがニューヨーク郊外で造られていると聞いて、マンハッタンから車で約2時間のワシントンビルにある「ブラザーフッドワイナリー」を訪ねた。このワイナリーは、1839年創業。アメリカで一番古いワイナリーだ。
老舗のワイナリーがなぜテチを作ることになったのか。それは、「15年前に、ニューヨークに住むエチオピア系3世の女性が、自家製テチを持ってきたのがきっかけでした」とワイン造り35年のシーザー・バエーザさんは語る。その女性に「祖国の味を再現し、同胞のために生産してほしい」と頼まれた。その熱心さに動かされて、バエーザさんはテチ作りに挑んだ。
まず彼女の家に伝わる伝統的なレシピを教わり、バエーザさんは教えられた通りに作った。しかし、どうも何かが違ったという。蜂蜜の発酵の度合いにより、甘さが変わるのだ。その加減と蜂蜜選びに苦心した末、アップステートのイサカにあるリンゴ畑に集まる蜂の蜜を使用することになった。
改良を重ねて13年前に商品化された「シバ・テチ」は、祖国のものよりフルーティーで甘くておいしい!とニューヨークに住むエチオピア人に好評だ。色はほんのり蜂蜜色で、ほのかに甘い蜜の香りが優しい。「スパイシーな料理によく合う」とバエーザさんは言う。
「彼らにとって、テチは文化的遺産であり、このワインを飲むことで自らのアイデンティティーを知ることにもなるのです」と語るバエーザさん。テチへの思いは深い。
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