ブルックリンの北西部、レッドフック・エリアにあるサッカー場に、夏の間の毎週末、南米系の屋台が軒を連ねる。屋台の数は全部で13軒。タコスやケサディーヤなど南米料理が手軽に食べられるとあって、週末サッカーの後のお楽しみとして、また、近所に住む人々の軽食として毎週賑わいを見せている。
ここに初めて屋台が出たのは1973年。元々は南米系サッカー選手のための軽食屋として始まったが、10数年前から現在のように屋台が集まるようになった。今では南米系のみならず、近隣に住む人々にもすっかり定着。「サッカータコス」はレッドフックの一つの文化として、エリアと共に育ってきたのだ。
ところが、今夏限りでこの長い歴史を閉じなければならなくなるかもしれないという、深刻な事態に直面している。このエリアを管轄する公園管理局レクリエーション課が、出店のためのライセンスを、9月以降は入札形式で売り出すと発表したのだ。
ここで家族経営を始めて12年になる、グアテマラ系移民のウンベルト・カリーニョさんが口を開く。「来年からこの場所は入札形式になるって話だよ。今でも出店料はちゃんと払っているのに、これ以上いくら出せって言うんだろうね」。
つまり、今より高値で入札する者が出てくれば、ギリギリの予算でやっている彼らは出店を断念せざるを得なくなる。「サッカータコス」は、実質上今年で最後になる可能性が高いのだ。
店を出して15年になる、メキシコ屋台のリョランダ・マルティネスさんは言う。「最初の10年は平日に他の仕事もしていたけど、繁盛するようになったのでその仕事も辞め、今はこの仕事1本だけなの。オークションでどこかの企業が落札でもしようものなら、私たちはお手上げだわね。来年からここに店を出せないとなると、困ったことになるわ」。
もともとこの周辺は、ドラッグ売買や売春婦がたむろし、劣悪な治安だったという。それが一掃されて今のような安全なエリアになったのは、屋台の繁盛で人々が集まるようになったからこそ。地域の活性化に一役買い、今ではレッドフックになくてはならない存在となった「サッカータコス」。その存続は近隣住民からも叫ばれている。














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