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2007/01/19発行 ジャピオン掲載記事
 
やっぱりブロードウェイ



出口最一さん

出口最一(でぐち・まこと)

演劇プロデューサー。奈良県出身。劇団「四季」他を経て1987年にニューヨーク移住。1991年に顔を青く塗った3人組による無言のパフォーマンス、「ブルーマン」をニューヨークのオフ・ブロードウェーでプロデュース。爆発的なヒットとなり、ドラマ・ディスク賞を獲得。以来、16年のロングラン公演を続けている。現在、2008年のオープンに向けて、8年越しのプロジェクトを進行中。


ブロードウェーとは?

タイムズスクエアを中心とした41ストリートから53ストリートの間に集中する、客席数500席以上の劇場で上演されるミュージカルや演劇のこと。舞台装置、衣装、照明、俳優、すべてトップクラスのスタッフを擁し、最高のエンターテインメントを提供する。チケット代は50〜100ドル程度。
敏腕プロデューサーに聞く
ブロードウェーの魅力


15年前にあの「ブルーマン」を世に送り出した敏腕演劇プロデューサーの出口最一さん。ニューヨークの演劇シーンの真っ只中にいる出口さんに、ブロードウェーの魅力について聞いた。

──空前絶後の活況を呈するブロードウェーですが、ブームの背景は?
ニューヨークの治安が良くなって観光客が激増したためです。ブロードウェーには約50の劇場があり、占席率は約9割。1日平均5万人の観客がミュージカルや芝居を楽しんでいます。そのうち1割が海外からの観光客。それだけに、外国人にアピールする作品や言葉の壁を越える作品がますます人気を呼ぶ傾向にあります。

──オペラにはないミュージカルの魅力とは?
庶民性でしょう。僕はブロードウェーは「松竹新喜劇」に限りなく近いと思っています。隣席でオバちゃんが大声で笑ったり、涙を流したりしている。そんなコミュニティーに密着した気取りのなさがミュージカルの魅力です。メトロポリタン・オペラだったら座席の価格差も半端じゃない。入り口まで違っていてお客同士が「あんた年収いくらなの?」って感じです。

──ではオフ・ブロードウェーとの違いは?
オフは客席500席以下の小劇場公演。実験は比較的自由にできますが、予算規模が小さいため発想に限りがある。一方、ブロードウェーは風呂敷が大きい。大手メディアと連動するなどダイナミックな展開が可能です。

──人気の上昇で作品の質や技術も向上していますか?
実はそうとは言い切れないんですよ。80年代以降、エイズの影響でブロードウェーは多くの偉大な才能を失いました。今は、いわば「恐竜絶滅後の世界」です。伝統の継承も断絶されてしまった。舞台制作の現場で「恐い先輩」的な人間が減って、仕事に対する厳しさが薄れてきたような気もします。かつてのような斬新で意欲的な作品は少ないですね。

──出口さんにとっての「良いミュージカル」の条件とは?
出演者のレベルが高いこと、演出がテーマに向かっていること、インテリジェンスを感じさせること、この3点です。ストーリーや演出がクレバーでなくては名作とは言えません。例えば現在リバイバル中の「コーラスライン」。舞台装置を全く用いずに優れた人間ドラマを描いています。よく見ると照明やシルエットの使い方に知的な工夫があるんです。「オペラ座の怪人」の仮面舞踏会シーンも同様。人形を上手に使って群集のスケール感を膨らませています。

──「ブルーマン」は無言劇。ロングランの理由もそこに?
その通りです。演劇業界ではいくら好評でも国際的な観客に受けないと、ロングランは無理。「マンマ・ミア」や「オペラ座の怪人」が長期公演の記録を塗り替える一方で「ラ・ボエーム」や「パッション」などトニー賞受賞作品が1年ほどで打ち切りになったのはそのためです。80年代以降、ブロードウェーは急速にグローバル化してきました。もはや、アメリカ人観客だけを対象にした作品では大きなヒットは望めないのです。

──出口さんは「日本人らしさ」を売り物にしていませんね。成功の秘訣はなんでしょう?
さぁ。とにかく芝居作りが好きなんです。日本人、アメリカ人関係なく一緒に作りたい。僕にも「作らせてくれよ」の一心でここまで来ました。日本はハイテクや自動車では世界のトップの座にあります。でもエンタメ(娯楽産業)だけは、まだ後進国的な精神がはびこっています。そこでブレークスルーを遂げたいですね。

※記載されている情報は変更されている場合があります。
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