

ニューヨーク州北部、アディロンダック山系を源流とするハドソン川の周辺エリアは、歴史的建造物やかつての富豪の領地が点在するローワー・ハドソン、ワイナリーが集中するミッド・ハドソン、源流域まで続くアッパー・ハドソンの3つに分けられる。車があればミッド・ハドソンあたりまでは日帰り旅行が可能だが、ニューヨーク市から列車で行くとしたらやはりローワー・ハドソンあたりまで。そのなかでもニューヨーク市内に近く、見どころが集中しているのがタリータウンだ。メトロノースに揺られて40分。窓越しにハドソン川を眺めながらの列車の旅は風光明媚そのもの。グングン列車が走るごとに目の前に広々とした自然が広がり、見る見るうちに気分が晴れ晴れしてくる。
タリータウンの駅から南へ車で7分ほど行くと、元ニューヨーク市長のウィリアム・ポールディングによって建てられた豪邸リンドハーストがある。3度も領主が変わったという歴史を持ち、それぞれの領主の趣向や時代の流行により徐々に邸宅と庭園が変わって行った様子が見られる。1時間のガイドつきツアーでは、その歴史が十分に語られる。そして、リンドハーストから歩いて行ける公園サニーサイド。「リップ・ヴァン・ウィンクル」などの著作で知られる作家ワシントン・アービングの家があり、川沿いではピクニックも楽しめる。
一方、タリータウン駅から北東に車で5分ほどのところにあるカイカットも見逃せない。ここは石油王ロックフェラーが3代にわたって住んだお屋敷と庭園が公開され、美術品や調度品、豪華な建築、整備された庭園をすべて観てまわるには1日かけても足りないぐらい。カイカットに行くには、まず18世紀の暮らしぶりを再現した歴史公園フィリップスバーグ・マーナーを目指す。この敷地内のビジターセンターでチケットを買ってツアーに参加。ツアーは見どころや所要時間によって6種類あり、何を観たいかによって選択できるというしくみ。スタンダードなのは邸宅と庭の一部を観る2時間のツアー。敷地内のあちこちにあるピカソ、イサム・ノグチ、ヘンリー・ムーアなどの彫刻を堪能するツアーもある。
NYジャピオン354号(May 19,2006発行号)より記事・写真抜粋

タリータウンのメイン通りにあるアンティーク風の案内版

タリータウンのダウンタウンは駅から徒歩5分。レストランやアンティークショップが数ブロック内に集中。(C)Akiko Nishimura

ツアーガイドの案内はたっぷり1時間。建築様式、庭園のスタイル、19世紀のトレンドなどが語られる。(C)Akiko Nishimura
タリータウンの駅から北東へ車で約10分、前ページで紹介したカイカットからは約5分という距離のポカンティコ・ヒルズ。ロックフェラー領にあたるこの丘陵地帯に、2年前にできた新名所がある。スローフード・レストランブルーヒル・アット・ストーンバーンズだ。食育を主な目的にしていて、敢えて農場の中にレストランを作ったという。絵画から抜け出たような景色が眼前に広がる敷地内では、ハーブ園や鶏や豚のいる農園を散策できる。食育プログラムとしてレクチャーや卵を集める体験ツアーも用意。もちろんレストランの味は保証付き。2カ月先まで予約がうまるほどの人気だ。日曜のランチは特に競争率が高いので、早めの予約を!レストランで食事を逃しても、隣接のカフェでスナック類のテイクアウトができる。
そして、ブルーヒルからはわずか車で1分ほどのユニオン・チャーチ。一見何のへんてつもない石造りの教会だが、ここには世界的に有名な画家シャガールとマチスが手掛けたステンドグラスがかかっている。もともとロックフェラー家の依頼により作られたという芸術品は感動もの。
コールド・スプリング
コールド・スプリング駅はグランドセントラル駅から約110分。ハドソン川をわたった西側には陸軍士官学校のウエストポイントがあり、マニトガやブレイクネック・マウンテンのハイキング・コースの玄関口でもある。駅から東へ向かうメインストリート沿いのわずか4、5ブロックの間には約20軒ものアンティークショップが建ち並ぶ。多くは小物や食器、美術品、アクセサリー類で、日本では高くて手が出ないファイアーキングやパイレックスの食器も、リーズナブルな価格で手に入る。また鉄道のおもちゃ専門、食器専門の店もあり、通にはたまらない品揃え。品物の入れ替わりが早いので、「これだっ」と思ったら即購入!
そして、ショッピングに疲れたらレストランでひと休み。地元の人々に人気のコールド・スプリング・カフェ、屋外テーブルもあるキャスリンズ・タスカン・グリルがお勧め。ハドソン川沿いのホテルハドソン・ハウス・イン内のレストランには、川を眺めながら食事ができるテラスもあるが、たった6テーブルしかないので、シーズン中は大人気。少々並んででも席を確保してリバービューを楽しみたい。
NYジャピオン354号(May 19,2006発行号)より記事・写真抜粋

地元の素材を使ったスローフード・メニュー。 (ポカンティコ・ヒルズ)

2つずつ揃ったソルト&ペッパーのセット。(コールド・スプリング)

食器もリーズナブル(コールド・スプリング)

