

彼らに一目会おうと、ニューヨーク釣友会の平嶋彬男さんの案内でロングアイランドへ出かけた。
ロングアイランド最果ての地、グリーンポート。海水浴にはまだ早いこの時期、しかも平日の夜中という小さな港で、数十人もの人だかりが漁り火で照らす海面を覗き込む。大きくしなる竿の先、黒い墨を吐きながら目玉を光らせてヌッと出現したのは…、イカ。
「気まぐれで頭のいいヤツ」とイカをまるで友人のように語る平嶋さんも、到着早々彼らの姿を見るなり手早く仕掛けの準備を始めた。
イカ釣りに用いるのは、ジグと呼ばれる魚の姿をした仕掛けと2オンスのおもり。これを結わえた糸をたらし、おもりで海底を感じながら、4、5秒に一度竿を素早くはね上げる。ジグが本物の魚の動きをすることをイメージしながら、この動作をひたすら続ける。平嶋さん曰く、不自然な動きのジグにイカは見向きもしないのだそうだ。さらにイカはその日の気分によって、好む色が異なるという。色違いのジグを複数持参し、その日よく当っている色のジグを用いるのも一手だという。
平嶋さんをはじめ、釣り師たちのリールを巻く手が忙しくなったのは午前1時を少し回った頃。イカ釣りでは、イカが岸壁付近まで上がってくる満潮前後がそのピークになる。この日は、平嶋さんの手ほどきを受けたばかりの取材班も、いくつかのヒットに恵まれた。
3時間ほどのあいだに平嶋さんが釣り上げたイカは10杯以上。これでも食卓は数日間、イカづくしになりそうな量だが、平嶋さんイチオシの食べ方がイカそうめん。足と内蔵を抜いて細切りにしたものを、麺つゆで頂く。少し日が経ってしまった場合は、カラマーリ(スペイン風イカリングフライ)やテンプラがおススメということ。さらに皮を剥いで細切りにした身を、ワタの一部とともに塩辛にすれば、数カ月は保存が可能だ。
この夜、家族連れで来ていた韓国人釣り師たちは、釣り上げたイカをそのまままな板にのせて手際よくさばくと、仲間で囲んでワッセワッセと胃袋の中におさめていた。釣り上げてからその間、ものの3分の出来事。これぞ釣り場でしか味わえない究極の贅沢と言えよう。ベストな状態で食べられるイカたちにとっても、「イカ冥利」につきること間違いない。

様々な色が揃うジグ。よく釣れているジグの色を見極めるのがポイント。

グリーンポート港の桟橋からイカを釣る。シーズンは5月と10月の年に2回。

釣れたてのイカは美しい。刺身にすると透けて見えるような透明感がある。
解禁直後のヒラメに挑戦
日本では冬の魚として知られるヒラメは、ここニューヨークでは夏を代表する魚。ニューヨーク州では先週4月29日(土)、待望のヒラメ釣りの解禁日を迎えた。
この日、ヒラメ釣りの乗合船を運航していたのは、「シークイーンⅦ号」。一日2便、午前と午後に半日コースを出している。週末ということもあり、子供連れの家族や年季の入った釣り師まで、総勢40人ほどが期待を胸に乗り込んでいった。
目的地であるニュージャージーのサンデーフック沖へは、およそ1時間の道のり。この時期のサンデーフック沖は、シーズン最盛期を迎えているカレイと漁場を分かち合うため、どちらが釣れるかは竿を上げてみるまで分からない。しかし、キャプテンの「まだヒラメには少し早いね」という言葉の通り、あちこちで歓声とともに釣り上がるのはカレイばかり。とはいっても、12インチ(約30センチ)を超えるニューヨーク州規定のキーパーサイズ(持ち帰りできるサイズ)も数多く上がり、4時間の半日コースはあっという間に過ぎてしまった。
ところで乗合船なら、釣った魚をさばくのが苦手な人でも安心。メイトたちがその場で大胆にさばいてくれるのだ。港へ戻る道中、船尾の特設まな板の上では、大きなカレイが次々と3枚におろされていく。
もちろんカレイは新鮮そのもの。刺身にできるほどの大ぶりで、活きのいいものにお目にかかるのは貴重な体験。さっそくその晩の酒の肴になったことは言うまでもない。
なお、肝心のヒラメは、「5月中旬から6月に入ると、最盛期を迎えるので、また来いよ」と、前述のキャプテン。

隣でもカレイをゲット。その後、彼は立て続けに3匹釣り上げた。えさに貝を選んだのが秘訣だとか。

帰路に着くまでの間、メイトがカッターナイフを使って、大胆に手際よくさばいてくれる。

