2016/03/11発行 ジャピオン855号掲載記事


老後の生活

老後もニューヨークで暮らす日本人が増え、高齢者人口も年々増加している。そこで老後の生活の選択肢や、それに向けての準備をまとめた。


高齢者住宅とナーシングホーム

 ニューヨーク市の高齢者向け住宅には、民間や州、市が運営する高齢者専用住宅(アパート)と、ナーシングホームがある。その中間に位置するのが、アシステッドリビングで、入居者の自立を尊重した支援サービスを提供する施設だ。また郊外に行くと、高齢者用に開発された街(コミュニティー)があり、指定された年齢に達すると、そうした物件を賃貸または購入できる。

 生命保険会社メットライフが実施した2012年介護費用調査で、アメリカ各地のナーシングホームやアシステッドリビングのコストが明らかになっている。ニューヨーク近郊のデータをまとめたものが左の図だが、コストが非常に高い。多くの人にとって、貯金や資産があっても、払い続けることが難しい金額だ。

 ただ、中には州からの援助がある物件や、政府による公的医療保険が適用されるケースもある。そういった住宅に入居する際、公的医療保険制度のメディケア(高齢者用)と、メディケード(低所得者用)について知っておく必要がある。

 高齢者としてメディケアを受給するには、①65歳以上の米国市民または永住権保持者で、②米国内で本人あるいは配偶者が10年以上就労し、③メディケア税、ソーシャルセキュリティー税を納めていなければならない。メディケアについては意外に知らない人が多い。老後を考える時、何をおいても基礎知識として持っておきたい。

在宅でのケアや介護保険の知識

 ナーシングホームの費用をカバーする介護保険(ロングターム・ケア・インシュアランス)に加入するなどの準備も必要になる。

介護保険は、基本的には在宅介護が必要になったときの費用をカバーするもの。若い頃に加入すれば、掛け金も割安になる。できる限りナーシングホームには入らず、住み慣れた自宅での在宅ケアを受けたいという高齢者も少なくない。結果としてどちらにも対応できるよう、在宅介護とナーシングホームの両方をカバーするプランに入っておく方が賢明だ。

 在宅ケアの場合、保険がカバーする内容はプランによるが、食料品の購入、料理、掃除といった日常生活の手伝いから、オムツの世話や入浴など、高齢者の体に直接触れるケアまでと幅広い。エージェントを通し、看護師や介護士を探すこともできる。「ビジティング・ナース・アソシエーション」(www.vnaa.org)、「ビジティング・ナース・サービス・オブ・ニューヨーク」(www.vnsny.org)などのウェブサイトが便利だ。日本人や日本語を話すヘルパーが必要な場合、市内の日系福祉団体に問い合わせると紹介してくれる。

今から老後に備え公的サービスを研究

 メディケアとメディケードだけでなく、公的年金(ソーシャルセキュリティー)や、IRA(個人年金)、雇用主を通して開く401(k)年金口座など、民間の年金プランについても、きちんと理解しておきたい。

 ニューヨーク市のビル・デブラジオ市長がことし2月、雇用主を通した年金制度の恩恵を受けられない個人のために、市が運営する年金制度を新設する意向を発表。シニア支援団体「AARP」などが、実現に向けて後押ししている。永住を希望するのであれば、若い頃からこうした政府の動向にアンテナを張って、情報を収集しておこう。

 ちなみにAARPは50歳以上の人が少額の会費で入会でき、高齢者の生活について、さまざまな角度から情報を提供している。またメディケアの民間サプリメントプランなど、AARPが認める良質のプランに加入できるなどのメリットがあるため、加入してベネフィットをチェックしてみよう。

 意外に知らない人が多いが、ニューヨーク市には、低所得の高齢者向け住宅や、ケア、サービルを提供する、「Department for the Aging」(www.nyc.gov/aging)という部門がある。市内には高齢者向け集合住宅が多くあり、有資格者は、個人に支給されるソーシャルセキュリティーの30%を家賃として支払うことで入居できる。ただこうした住宅は需要が高く、ウエーティングがある場合が多い。早めに申請するおくことを心掛けよう。

 さらに、50代からの住宅購入は、老後を考え、住宅ローンを払い終えても管理費と不動産税は払い続けなければならないことを考慮に入れておきたい。加えて、玄関や室内の段差が少なく移動がしやすいこと、車が運転できなくなっても代わりの交通手段があること、日本食レストランが近くにあること、日々のグローサリーの配達サービスがあるなどの利便性も考えて、住む場所を選びたい。


ナーシングホームの月額コスト
相部屋の平均コスト 相部屋のコスト幅 個室の平均コスト 個室のコスト幅
ニューヨーク市 $11,64 $8,250 - $11,880 $8,250 -
シラキュース 0 $15,840 $10,260 $15,840
ブリッジウォーター $10,05 $9,540 - $10,320 $9,840 -
スタムフォード周辺 0 $11,250 $13,080 $11,250
フィラデルフィア $9,540 $8,610 - $9,000 $9,150 -

※メットライフの調査による1日の費用を×30日として計算したもの

アシステッドリビングの月額コスト
平均コスト コスト幅
ニューヨーク市 $4,631 $3,000 –
シラキュース $3,651 $7,000
ブリッジウォーター $4,749 $2,195 –
スタムフォード周辺 $5,524 $4,995
フィラデルフィア $4,044 $3,802 –

デイサービスの1日のコスト
平均コスト コスト幅
ニューヨーク市 $128 $30 –
シラキュース $84 $200
ブリッジウォーター $87 $62 –
スタムフォード周辺 $81 $106
フィラデルフィア $67 $63 –

(これらのほとんどは、医療ケア以外のホームケアだが、中には看護師や理学療法士など、医療免許を持つ専門家によってのみ提供可能な医療ホームケアもある)
上記のデータは、メットライフ高齢者市場研究機関による2012年介護費用調査を基に、編集部がまとめたもの




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