2016/03/11発行 ジャピオン855号掲載記事


不動産購入

不動産に対する考え方、プロセス、商習慣、法律も違うニューヨークで物件を購入する際に知っておきたい知識を専門家に聞きまとめた。


NYの市場の特徴

 「持ち家率の全米平均は約60%ですが、マンハッタンでは約30%。賃貸率が非常に高い市場といえます」と語るのはニューヨーク市内の米系大手コーコランの不動産エージェント、松本哲夫さん。

 同市の不動産市場の特徴は、世界中から人が集まる土地であるため、賃貸需要が高いこと、また住居としてだけでなく、投資や節税を目的とする購入者が集まる傾向が強い。また全米と比較しても、市場が強く下支えられていて、物件価格の変動があっても、比較的早く立ち直る点が、他の市場と決定的に違うという。

 こうした状況から、特に人気が高いマンハッタン、ブルックリンの物件は購入時には入札が複数入り競争率が非常に高いのが現状だ。

物件をどう探す?

 「この業界では『不動産に掘り出し物はない』と言われています」と語る松本さん。近年、インターネット上で不動産情報が公開されるようになり、一般人でも最新の物件情報を瞬時に入手し、自ら比較検討できるようになったため、さらに掘り出し物は見つけにくくなった。

 しかし、実際には膨大な情報を正確に、また複雑に絡み合った要素を読み解けなければ、物件の「本来の価値」を見出すのは難しい。こうした状況から、個々の不動産エージェントの力がより問われる時代になっているという。

 当地で物件を購入するメリットは、物件購入者の個々の状況や購入理由によって異なるが、「米国に長期滞在する場合、資産形成や、上昇していく家賃や物価に対するヘッジ効果、また購入による節税や将来的にファイナンシャルフレキシビリティーが得られることなどをメリットに挙げらる方が多いです」という。

 また財政面のメリットに限らず、マイホームを購入することで得られる充実感、満足感も物件購入の際に考慮したい部分。

物件購入の流れ

 先に述べたように、当地で物件を購入するには競争率の高い入札を勝ち抜く必要がある。

 同じ条件で入札しても、モーゲージ(住宅ローン)の頭金を多く出していることや、現金での支払いがローンよりも有利になるといった傾向もあるので、まずは専門家であるバイヤーズエージェント(不動産ブローカー)を雇い、意見を参考にして戦略を立てる必要がある。

 物件を見る目も大切で、購入後に変更できない点、例えばロケーション、構造、財務状況、ハウスルールなどに注意を払うことが重要なポイントだと松本さんはアドバイスする。

 当地の住宅物件には大きく分けてコンドミニアム(コンド)とコーポラティブハウス(コープ)がある。コンドが不動産とされるのに対して、コープは簡単にいうとビル所有会社の株を購入し、株主になり、ビル内の特定の部屋を使用する権利を得るという形態。コープは、投資目的の購入を禁止している場合が多い。住居として購入する場合でも、モーゲージと収入の比率や購入後の流動資産残高に対する規制があったり、コープを管理するボード(理事会)に購入を拒否する権限があるなど、条件が厳しい。ただし、条件をクリアすれば、コンドに比べ価格の低いことが魅力といえる。

 コンドミニアムは購入条件は緩やかで、投資目的の購入に対してもほとんど規制はないが、価格が高額となるのが一般的だ。

物件購入の流れ

 まず現在の市場を理解した上で、購入可能な物件価格の上限、つまり自分の予算はいくらなのかを把握すること。必要な頭金の金額も、物件の種類、例えばコープにするかコンドにするか、1世帯住宅なのか2世帯住宅かなど物件の種類によっても購入可能な価格の上限は異なってくる。そのため、モーゲージの借り入れも含め、不動産売買の経験が豊富な不動産エージェントに相談しながら、購入に向けた作戦を立てることが重要となってくる。

 予算が確定したら、実際の物件を見て回り、購入したい物件が見つかった段階でオファーを入れる。また契約書作成に関わることになる弁護士は事前に決めておくこと。オファーが受諾された後、約1週間のうちに契約書にサインをすることになる。

 契約書締結前に再度物件を見ることが可能なので、必要に応じてホームインスペクションや、建築家や工事業者などを連れて物件の再確認を行う。

 契約内容に関しても、不動産エージェントと弁護士を通し、この期間に売り手側と交渉を行うことになる。契約内容に合意できれば、買い手側は契約書にサインをし、デポジット(通常は物件購入価格の10%)を支払う。

 その後、売り手側も契約書にサインをし、双方がサインをした契約書が買い手の弁護士に届いた段階で成約となる。

 成約後、コンドの場合はビルディングアプリケーションの準備と提出を、また コープの場合はボードアプリケーションの準備、提出に加え、ボードによる面接を経て購入許可が降りた段階でクロージングへと向かう。モーゲージを使用する場合にはその手続きも同時に進め、全ての準備が整った段階で再度物件の確認を行いクロージングとなる。

 「もちろん実際のプロセスはかなり複雑ですので、不動産エージェントがクロージングまでの全過程をサポートすることになります」

〈おことわり〉
記事内容は一般的な見解です。個々により状況は異なりますので、詳細は各専門家にご相談ください。

ニューヨークに住むなら
知っておきたい住宅用語

Co-op(co- operative/コープ住宅)
日本にはない形態。住居自体ではなく、ビルを所有する会社の株を購入し、ユニットとしての住居の使用権利を得る。ただし入居はビルを管理する理事会の承認が必要。また賃貸に制限をしている物件も多い。価格は同じ立地や物件の状態などのコンドと比較して低い。

Condo(Condominium/コンド)
日本でいう分譲マンションに近い。ビル内の住居ごとにオーナーが違う。賃貸が許可されているため、投資物件としても使用が可能な物件が多い。

Studio(スタジオ)
日本でいうバス、トイレ、キッチン付きワンルーム。

1 Bedroom(1BR/ワンベッドルーム)
ベッドルームとリビング、キッチン、バス、トイレがある日本でいう1LDK。

Duplex(デュープレックス)
日本でいう2世帯住宅に近い。居住空間は左右か上下に分かれている。

Townhouse(タウンハウス)
同じ構造の住居が連なった低層の住宅ビル。

監修
松本哲夫さん
NY州公認不動産エージェント
TEL: 914-374-7195
ted.matsumoto@corcoran.com
www.nycfudosan.com



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