2017/11/10発行 ジャピオン941号掲載記事

落語家 桂三輝
落語の笑いは世界どこでも通じる

 
11月16日(木)から12月3日(日)までオフブロードウェー公演を行うカナダ出身の上方落語家の桂三輝(サンシャイン)さんに落語に対する思いを聞いた。

――初めて日本に行った時の目的は?
 能楽と歌舞伎に興味があったので、17年前、ワーキングホリデーで日本に行きました。行く前は、半年ぐらいで帰ろうと思っていましたが、日本が気に入って、到着3日目で、「もうカナダに帰れへんわ~」と思いました。

――桂文枝(当時・三枝)師匠の創作落語を聴いて上方落語に感銘を受けたと聞きました。
 初めて落語を聴いたのは日本に来て3年ほど経ってからです。住んでいた横浜に、小さな焼鳥屋があって、その店主が2カ月に1回、落語会をプロデュースしていました。江戸落語の「二つ目」、「前座」が二人ずつ出て四席。それを聴いて落語に惚れ込みました。それから2年ほど自分で江戸落語を勉強しているうちに、上方落語も勉強したいと思って、大阪に行きました。いろいろ聴いてるうちに、文枝師匠の噺を聴き、一目惚れしました。横浜で落語を初めて聴いたとき、「これ!このために生まれた!」と思って、「絶対に落語家になりたい」と思ったんですが、文枝師匠の噺を聴いて、もう一度落語に惚れ直したという感じです。

――江戸と上方、中でも文枝師匠の寄席は何が違ったのですか?
 師匠の噺に、とにかくお客さんが大爆笑していた。古典落語は2、3回聴いて理解できるものもありますが、師匠の創作落語は、言葉も内容も分かりやすかった。日本の雰囲気はめちゃくちゃ出ているのに、「このまま英語にしても絶対に面白い」と思えるほど、素晴らしかった。

――それは語り?それとも内容として?
 両方です。まずストーリーがよくできている。アイデアはとてもシンプル。その中で登場人物が何かを話すと面白さが見えてくる。もうオチを言う前に笑わされてしまう。
 例えば私が海外でもやる「宿題」という噺。子供が宿題の鶴亀算が分からない。お父さんに聞くと、お父さんはもっと分からない。お父さんは会社で同僚に聞いて、そのまま子供に説明しようとしたら、子供は既に先生に説明されていて、もっと難しい問題を聞いてくる、を繰り返して、お父さんがだんだん疲れてくる。繰り返しだから先は読めるけど、それこそが面白い。「出る」「出る」を積み重ねて、「出た!」ドカーンっていう。天才でしょ。

――上方と江戸の落語の違いは?
 上方は「お客さんに絶対笑ってもらおう」と考える。「笑ってもらえなかったら、申し訳なくて、お金も取りたくなくなる」っていうぐらい、本当に笑いが命なんです。江戸落語の方が、語りを大事にしていて人情話も多い。最初から最後まで一切笑いを取らない落語もあります。あと江戸は、ゆっくり「枕」をやって、いつの間にかすっと話に入っていくのが粋で格好良い。

 とはいっても、上方も江戸も、すごい人、師匠たちは、どっちの良さも持っています。うちの師匠は、江戸のスタイルも結構入っているともいわれています。めちゃくちゃ笑いも取りますが、話にすっと入っていくところは粋だし、本当にマジックみたい。尊敬している江戸落語の師匠もベースはすごいストーリーテラーだけど笑いもたくさん取る。結局、両方を目指さないとだめだと思っています。

――三輝さんが海外で落語をやるときに工夫していることは?
 それぞれの国で笑いのスタイルは違います。ただ、同じ情報を持っていないと笑えないことが多い。それに比べて落語は何百年前からやっているものだから情報は関係なくて、噺の中に純粋な笑いがある。悪い言葉も使わないし、人種や政治のことは何も入らない。

 落語は便利で、説明が必要ならば枕で話せる。笑いを取りながら説明ができるんです。説明が芸に入っている芸なんて他にない。だから必要であれば、文化の違いは最初に説明します。

 あとは笑いのリズムが違ったりする。日本はボケとツッコミがあります。ツッコミは、基本的には、「なんでやねん」とか面白いことは言っていませんよね。でも、それは日本の笑いがそういうリズムになっている。海外では、ボケで笑っているから、「なんでやねん」はいらないんです。これに気づかないと、何回も「確認の言葉」を言って、つまらないことばかり言ってると受け取られる。「笑い」は万国共通だけど、そうした細かい違いに気づく必要はありましたね。

 とはいえ、私も海外公演を始めてあらためて、ここまで落語が世界的にウケることには驚きました。日本人の前で取った笑いはアメリカでも、どこでも全く変わらなかった。本当に落語は日本の貴重な文化。この笑いは世界中どこでも通じます。

桂三輝■カナダ・トロント生まれ。トロント大学で古典演劇を学び、在学中から劇作家、作曲家として活動。能楽や歌舞伎に興味を持ち、1999年に訪日。2003年から英語落語の活動を始める。07年、大阪芸術大学大学院芸術研究科に入学し創作落語を研究。08年に桂三枝(現・六代桂文枝)に弟子入りし「桂三輝」と命名される。09年にカナダで英語落語の初舞台。14年に7カ国での公演を行う。
www.katsurasunshine.com

桂三輝
オフブロードウェー公演


11/16(Thu)〜12/3(Sun)
Soho Playhouse
15 Vandam St.
(bet. 6th Ave. & Varick St.)
www.rakugo.co.uk
チケット:30ドル

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