2019/01/04発行 ジャピオン1000号掲載記事

実はもう身近に来てるダイキンの空調
ニューヨークに住む多くの日本人にとって、当地の空調システムは何十年も変わっていないように見え、街を歩けば、いまだに建物の窓には昔ながらのウインドーエアコンを見ることが多い。しかし、実は我々が知らない間に、ニューヨークの空調システムには新しい波が訪れている。今回、空調事業において世界規模で1位のシェアを誇る、ダイキン・ノースアメリカの上席副社長の井上隆之さんに話を聞いた。

ーこの建物(インタビューを行なったブルックリン・ダンボの高層住宅)の屋上に並ぶダイキンの室外機を拝見しました(左写真参照)。また同時に他の建物の屋上を見ると、かなりの数の建物にダイキンの室外機が置かれていることに驚きました。

気付かれにくいようですが、屋上から見てもらうと分かるように業務用空調の分野ではダイキンは結構頑張っているんですよ(笑)。主力商品であるVRV(冷媒で熱交換をするタイプ)は、後付けがしやすく、室外・室内機の置き場所を工夫すれば少ない工事で済むので、ニューヨークのように限られたスペースに建てられた建物や改装した古い建物への設置に向いているんです。

家庭用の機器は、日本のように家電量販店に置いていない上、取り付け業者に依頼する必要があるので一般家庭での設置は少しハードルが高いのですが、高層、中層のビルやレストラン、美容室などの商業店舗ではダイキンの空調システムを使っているところが市内でも増えています。

ーダイキンは米国進出の戦略拠点として、長年ニューヨークにオフィスを構えているんですね。

私が2002年にニューヨーク事務所に赴任したとき、当地での実績はゼロだったんです。今では米州だけでも全世界の売り上げの4分の1ほどの規模の事業となりました。

ダイキンは40年ほど前に初めて米国に参入しましたが、うまくいかずに撤退しました。そのあと、中国を中心にアジア、ヨーロッパで市場を作り、各国シェア1位と業績を伸ばしました。

でも世界で1番になるには、やはり米国市場は重要です。それで00年ごろに再参入し、現地の空調会社を買収し、その販路を使ってダイキンの空調システムを売ろうとしました。結果うまくいきませんでしたが、それを契機に、自分たちでやるしかないと05年ごろに日本式の空調システムや機器を販売する会社をダラス郊外につくりました。今年はヒューストンに全米で3番目の規模の工場も建設しました。

ー米国進出の障壁は何だったんですか?

中国、欧州はそもそも空調文化がなく、我々が作り出すことができました。米国は逆に伝統的な空調システムが確立していて、システム、機器も何十年も変わっていない成熟市場でした。そして米国と日本では空調システム自体が全く違うことが障壁となりました。

簡単に言うと当地は1カ所で調整した空気を作り、建物の中に張り巡らせたダクト(換気通路)を使って全館に送る空調が主流。一方、日本はダクトレスといってダクトを用いず、室外機と室内機を冷媒配管でつなぎ熱交換する空調方式が主流。大きな施設だと複数の室外機、室内機で個別の区画でのカスタマイズした利用が可能なのが特徴です。

米国では、我々が得意なダクトレスの空調システムや日本の商品だけ提供してもシェアを広げることはできません。そこで、他のグローバル市場でやってきたようにそれぞれの土地に合ったシステム、機器を作り、さらに空調に対する文化を根底から作るということを米国でも実践しているところです。日本式空調を提示しながらも、それだけでは市場を変えることはできないため、2006年には業務用空調設備に強いマッケイ、12年には住宅用空調設備の大手グッドマンを買収して北米式空調システムや機器に、ダイキン独自のコア技術、インバーター、ヒートポンプを取り入れたものを開発したり、アフターサービスを整備したりと、まさに文化を変えるという取り組みをしてきました。

ー障壁は取り除いたということですね。

そういう空調があるという認知をもっと広げていくことがこれからの取り組みです。われわは商品に「エアインテリジェンス」というタグをつけているのですが、新しい技術や省エネや健康に関心が高い人たちが受け入れてくれています。

テキサスの工場は米国向けの商品の製造拠点でもありつつ、研究開発拠点でもあります。研修施設もあって、備え付け業者のトレーニングも行なっています。まさに空調文化を総合的に作り出すということを推進しているのです。

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ダイキンの空調システムの室外機「VRV」が並ぶ、ダンボの高層住宅の屋上

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ダイキン・ノースアメリカの上席副社長の井上隆之さん(左下)屋上の「VRV」室外機

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