2017/09/22発行 ジャピオン934号掲載記事

幹細胞再生医療の現場から
〜幹細胞とは? どこから採取? 何にどんな風に効く?〜

 「幹細胞(ステムセル)再生医療」とは、一言で言えば、自分自身の細胞を使って行う治療のこと。関節の炎症からアルツハイマー病まで、広範囲での臨床が進められている。患者への負担が軽く、分野によっては治療効果も極めて高い。しかも自身の細胞を使うので免疫の拒絶反応がなく安全だ。マンハッタンで臨床実績を積むジョエル・シンガー医師に、未来への希望に満ちたこの新治療について話を聞いた。

Q 幹細胞とはどんな細胞ですか?

A 人間の体に備わっている自然な治癒細胞のことを幹細胞と言います。

骨髄と、新生児の臍(さい)帯血、そして体の脂肪から採取できます。今実用化されている幹細胞再生医療で使用するのは、主に脂肪から採取した幹細胞です。

Q 骨髄・臍帯血由来と脂肪由来の幹細胞は、どう違うのですか?

A 幹細胞としての再生機能が最も「強力」なのは、臍帯血由来のもの。将来必要になった時のために、出産時での採取・凍結保存も可能です。ただ、微量な上にアメリカでは政府から培養認可が降りていないため、現段階では実用化が難しいという現実があります。

 そして、骨髄にある幹細胞の80%は血液を作るためのもの。一方で、われわれが治療のために必要としているのは、体の構成組織、例えば関節の部位(カートリッジなど)を作る「成体幹細胞」。骨髄にはこれが少ない。ではどこに多いかというと、脂肪の中なのです。

 UCLAの研究者が、2003年にこの脂肪由来幹細胞について研究発表をしています。そして、形成外科医である私が、「脂肪が幹細胞の宝庫」だと知ったのは、約7年前に出席した形成外科学会でした。

 脂肪由来幹細胞には、骨髄由来のものと比較してさまざまな利点があります。まず、骨髄由来の幹細胞は年齢を重ねるごとに確実に減りますが、脂肪由来の幹細胞は減りません。しかもその数は骨髄由来の2000倍です。いずれもラボで培養が可能ですが、もともとの数が多い分、培養速度も脂肪由来の方が数倍早い。幹細胞再生治療には大量の幹細胞が必要になるので、その理想の資源は骨髄ではなく脂肪というわけです。

Q 体のどの部分から幹細胞を採取するのですか?

A 採取する脂肪は体のどの部分でも構いませんが、なるべく傷が残りにくく、目立たない部分から採取します。採取方法は、極細のライポサクション(脂肪吸引)用器具による吸引で、所要時間は約20分。局所麻酔下で行います。採取量は50〜200ccで、治療によって異なります。

 そして、患者さんが休んでいる間に、当院内で次の順序で作業を行います。①採取した脂肪を遠心分離機にかけてコラーゲンを分解し、脂肪細胞と幹細胞を分ける②培養器で幹細胞だけを増やす③増やした幹細胞を洗浄する④ろ過する。

 この作業を3時間ほどかけて何度も繰り返し、純粋な幹細胞抽出液を生成します。全過程は無菌・真空状態で行います。そうして作った新鮮な液はその場で治療に使いますが、必要に応じて残りをラボに送り、培養・保存することも可能です。

Q どんな症状を治療できますか?

A 当院で最も多く治療するのが、腰や膝、肩などの関節の炎症です。年齢はさまざまで、90代の方もいます。手術で人工関節を入れるしか治療法がないと診断された人、高齢のためその手術もしてもらえない人、何十年も痛みに耐えながら生活してきた人などを治療しています。

 しわやしみの改善、頭髪の再生など、美容目的の方も多いですよ。また、ALS(筋萎縮性側索硬化症=ルー・ゲリッグ病)、パーキンソン病の患者さんも当院で治療しています。その他、ぜんそくや肺疾患、心筋症など、幹細胞の守備範囲は広いです。

Q 関節痛の場合、どのように治療しますか?

A レントゲンかMRI(核磁気共鳴画像法)で患部の状態を確認した後、幹細胞を患部に直接注射器で注入します。関節の炎症などでは注入後5、6週間もすれば痛みが引き、改善を実感できます。幹細胞再生治療の利点は、入院もせず、治療後すぐに歩いて帰れるところ。リハビリも必要ありません。

 ちなみに、幹細胞が患部をどのように修復・再生するのか、実はまだ明らかになっていません。例えば膝関節のカートリッジがすり減っている場合、注入した幹細胞がカートリッジ組織に変化するのか、もしくは幹細胞が治癒環境を整えることでカートリッジの再生を助けるのか、分かっていません。はっきり言えることは、こうした関節痛の場合、85%の回復が結果として現れていることです。

Q 静脈注射という方法もあるそうですが?

A 内臓疾患やALS、パーキンソン病などの場合は、静脈注射を行います。肺、脳、その他のどんな内臓、組織であれ、問題箇所には、サイトカインという免疫システムから出るタンパク質が存在します。幹細胞は血流に乗って全身を回りながら、それを探知して問題箇所を突き止め、修復・再生するというメカニズムです。ただ、ALS、アルツハイマーなどは、今の医学では完治できない難病で、幹細胞でも「治す」ことはできません。しかし、症状を安定させ、進行を遅らせることに成功しています。

Q 患者からよく聞かれる質問は?

A 保険もカバーせず、治療費も決して安くないので、本当に効くのかと皆さん聞かれます。治療効果を100%保証することはできませんが、関節の炎症などで、85%の患者さんに改善が見られた治療結果の統計を提示できます。これは、かなり高い治癒率だと自負しています。

Q 今後の再生医療はどんな風に発展してくと思われますか?

A そう遠くない未来に、ラボで「膝のカートリッジ再生用の幹細胞」を生成するなど、ピンポイントの再生治療が可能になるのではと期待しています。テクノロジーはすでに進んでいますが、あとは政府の認可が下りるかどうかでしょう。

ジョエル・シンガー先生
Joel B. Singer, MD, MBA
イエール大学医科大学卒業。ジョージ・ワシントン大学経営大学院の保健医療分野でMBA取得。ノーウォーク病院、パークシティー病院、ブリッジボート病院で主任形成医を歴任。
パークアベニューステムセル
Park Avenue Stem Cell
346 E. 51st St. (bet. 1st & 2nd Aves.)
TEL: 917-721-7551(日本語)
www.parkavenuestemcell.com


明るい雰囲気の処置室。脂肪吸引の処置は20分程度で完了する

治療の実例を知ろう

幹細胞再生治療を受けた患者に、何が決め手となって治療を受けたのか、また症状がどのように改善したのかを本人の言葉で語ってもらった。

ケース① Tさん(女性/65歳)

 20年近く体の痛みを抱えながら生活してきました。ひどいと、寝ても、座っても痛くて動けない日もありました。これまで、ありとあらゆる治療方法を試しましたが、目立った効果を得ることはありませんでした。たまたまジャピオンの広告で見た幹細胞再生のクリニックで、思い切って治療を受けてみることにしました。

 自分の脂肪から採取した幹細胞を、患部に注射で注入。そして、なんと翌日からこれまで20年続いた膝・腰の激しい痛みがなくなりました。治療から3週間経ちましたが、これまでの痛みが嘘のように自由に体が動きます。仕事の疲れも、一晩寝れば取れて、毎日すがすがしく朝を迎えられるようになりました。

 ただ、体が動くようになって、つい調子に乗って無理をして働き過ぎてしまい、シンガー先生にお話ししたら、「もう少し自分の体を大事にしなさい」と注意を受けました。

ケース② Nさん(女性/41歳)

 顔にたくさんできたしみが気になり、スパなどで、いろいろな薬剤を使った美白トリートメントを受けていました。あるとき幹細胞治療のことを知り、自分の脂肪を使うなら安心だと思ったので、とりあえず相談に行ったところ、スパのトリートメントよりも料金が安かったため、早速治療を受けることにしました。

 幹細胞を皮下に直接注入して2、3週目から、徐々に、でも目に見えてシミの色が薄くなってきました。まだ完全に消えたとは言いませんが、シンガー先生によると、半年くらいかけてどんどんシミの色が落ちていくらしいので、今から半年後が楽しみです。

ケース③ Aさん(男性/53歳)

 ひどいぜんそく持ちで、いつも発作が起きた時のために吸入ステロイド剤を持ち歩いていました。あるとき、幹細胞治療でぜんそくの症状が改善すると聞き、わらにもすがる思いで相談に行きました。完治が保証されるものではありませんが、試す価値は十分あると思い、治療を受ける決心をしました。保険が利かないので決して安くはないですが、ぜんそくが治るなら金額は問題ではないと思いました。

 クリニックで自分の脂肪を採取して、数時間待つ間に「幹細胞の抽出液」がクリニック内で作られるのにはびっくり。それを静脈注射で血管の中に注入するのですが、その瞬間は正直ドキドキしました。血管を通じて、幹細胞が気管周辺の組織を修復するのだそうです。治療を受けてまだ数週間。まだ念のために吸入ステロイド剤は持ち歩いていますが、治療以来発作は起きていません。私にとっては画期的なことです。

幹細胞再生医療セミナー
10月10日(火)午後6時から

参加無料

●セミナーへ参加をご希望の場合がお電話にて予約してください。
TEL: 917-721-7551(日本語スタッフ直通)

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