2015/09/18発行 ジャピオン831号掲載記事

知れば納得!米国子育て&教育事情

真のバイリンガル|③バイリンガルの弊害

 今週は、バイリンガル環境に置かれたために、弊害が生じた可能性のあるケースを見てみましょう。


「セミリンガル」の可能性

息子は小1の時に来米し、もう7年間こちらにいます。英語は一見流ちょうですが、文法的な間違いが多く、成績も振るいません。日本語は話しますが、言葉遣いも小学生のようで幼稚な印象です。

 小1は、母国語構築過程のまだ初期段階です。それが急に新言語環境に突入してしまうことで、この過程が阻止されてしまいます。また最初の2~3年は英語が理解できず、いわゆる「知識の空洞化」も起こりえます。このため小学校低学年から中学年にかけて、抽象的・論理的思考力の発達が遅れてしまった可能性があります。また、7年在米して英会話は流ちょうですが、文法的に間違いの多い英語を話す子も少なからずいます。このように両言語とも発達が遅い状態は「セミリンガル」と言われます。このような状態の子らは、元々の言語能力が高いとは言えず、モノリンガルの環境で母国語をしっかり発達させた方が望ましいでしょう。

 現在7年生の息子さんですが、親御さんは「どちらか一つの言語に絞った方が良いのか」「レベルは低くても、二言語話せたら将来なんとかなるかも」と、いろいろ悩まれていると思います。私個人的には、この際言語を一本に絞り、文法や読み書きをとことん訓練すべきではないかと思います。なぜなら、二言語ともが中途半端になるより、一言語で思考力や理解力が高い方が、将来の仕事や社会生活で重要だと思うからです。



読み書き力

滞米3年、永住予定の小2の娘がいます。普段は現地校、週末は日本語補習校に通っています。両言語話せますが、現地校と日本語の先生から、両方とも読み書き力が低いと指摘されました。

 5歳では日本語の土台もまだまだ流動性があり、周りの言語環境でその発達が左右されます。また、ある程度両言語は話せるけれど、読み書きはどうしても遅れてしまう子も多く存在します。

 考えてみれば、全く違う二言語を同時に発達させるわけですから、頭脳明晰で能力が高い子は例外として、読み書きまで両言語学年レベルで発達維持させるような「完璧」を求めるのは容易なことではありません。娘さんのように永住の子の場合、学習/社会言語である英語は非常に大事です。日本語はサブ言語として、ぜひ英語をメーン言語として伸ばすよう方向転換することも考慮してみてください。



現地校での評価

小6の娘は、英語も日本語も話す5分5分バイリンガルです。しかし、現地校は英語しか見ないので、結局「学習上の表現力や単語力が足りない」という厳しい基準で判断されてしまいます。

 日本でバイリンガル教育学会に出席した時に、「日本語50%、英語50%、足して100%という考え方でなぜ悪い?」という非現実的な意見がありました。しかし、実際そのような言語発達は受け入れられませんし、学習能力も低くなるでしょう。英語圏での教育では当然100%の英語力を求め、日本の教育では100%日本語力を求めます。では重複性のない日本語と英語のバイリンガルの場合、200%習得できる容量が子供にあるのでしょうか?

 今月のテーマの最初に、何がバイリンガルなのかという定義が定かではなく、それを各家庭で決めておくべきだとお話ししました。母国語が大事な一方、毎日の学習言語が英語ならば、英語中心の発達になるのも当然です。また、永住組と帰国組でもかなりの違いが生じます。子供の将来のために、せめて一カ国語は 100%、そしてもう一カ国語はある程度のレベルで、と優先順位を持たせることも重要ではないかと思います。

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高橋純子先生

現地校コンサルタントKOMET代表。
著書に『アメリカ駐在 これで安心子どもの教育ナビ』がある。

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