2018/09/07発行 ジャピオン983号掲載記事

スペシャリストに聞く

①基礎知識

今月のテーマ:米国の義務教育

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。

今月は日本と米国で異なる義務教育の制度、また学校について、専門家に話を聞く。初回は基礎知識として、義務教育の期間、学齢、またニューヨーク市ならではの制度について聞いた。

米国の義務教育の期間と学費について教えてください。

米国の義務教育期間は州や市によって若干の違いが見られます。例えばニューヨーク州では通常6歳から16歳までが義務教育と定められていますが、ニューヨーク市では5歳、すなわちキンダーガーテン(Kindergarten)の年から義務教育が始まります。これは日本でいう幼稚園年長の学年に当たるものです。学費は公立ですと、ランチ代などの諸費以外は全くかかりません。一方、私立は学費が発生し、地域によって大きな差が見られます。特に地方の州では年間1万ドル前後なのが、ニューヨーク周辺では3万〜4万ドルと高額で、私立に数年通わせるには資金計画が必要となります。

日本人が義務教育を受けるには条件はありますか?(たとえば、国籍、居住しているなど)また入学の申請はどのタイミングで、どのように行いますか?

義務教育は本人の国籍や、親が合法、不法移民であるといったことにかかわらず、公立校で受けることができます。基本的に居住する学区内の公立学校に通学することができます。多くの場合、入学前年の11月頃に学校見学や説明会があり、翌年1月頭に申請し、3月ごろに結果が送られてきます。

ニューヨーク市の義務教育の特徴はありますか? また「学区」とは何ですか?

ニューヨーク市は32の学区(School District)に分かれており、またそれぞれの学区はさらに細かい「校区」(School Zone)に分かれています。基本的に小学校は校区内、中学は学区内に通いますが、校区外に越境して通える種類の小学校や例外のケースもあります(詳細は次号で解説) 。ニューヨーク市は、現実問題として地域によって収入格差や住民の人種構成の違いが大きく、この違いはその学区の質や教育レベルに明確に反映されていました。 最近のニューヨーク市の傾向としては、小学校の校区を変更したり、全ての中学に25%の成績の低い子や低所得家庭の子らの入学枠を設けたりして、人種融合の改革を実行しています。しかし、これは教育界や保護者の間では大きな論争を呼んでいるのが実情です。

日米の教育内容、教師の役割の違いは?

米国ではこれまで州や市、学校によって、カリキュラムの特色もまちまちでしたが、現在は、米政府の教育機関が開発した「Common Core State Standards」という一貫したカリキュラムを取り入れている州が増え、ニューヨーク州もこれに沿った指導がなされています。もちろん自由な発想や表現も奨励していますが、基礎を積み上げて学力を重視する公立校が増えてきた印象があります。日米間の教師の役割の違いですが、米国の教師は決められた時間内で決められた内容の仕事に徹します。もちろん子供や親へのサポートはその範囲内でなされますし、面談やメールでの相談なども必要であれば要請できます。しかし、日本の教師のように居残り授業やクラブの顧問などの役割はありません。

子供が英語が第一言語でない場合、英語支援の機会や制度は?

子供の英語力が十分でないと判断された場合は、通常、ESL(English as a Second Language)のクラスを取り、そこで専門の先生がサポートします。しかし、このクラスの質や運営は、学校によって変動します。しっかりしたESLクラスがある所もあれば、予算が少なくてきちんと運営がされていない所、また移民の生徒が多すぎて、普通のクラスでも外国語が飛び交っているようなところもあります。公立の現地校に子供を入学、転入させる場合は、事前にこれらの状況をリサーチして、出来るだけ良い学校環境の校区内に居住することが重要です。〈おことわり〉
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高橋純子さん

教育コンサルタント。コロンビア大学応用言語学博士課程、研究員。著書に「アメリカ駐在:これで安心子どもの教育ナビ」(時事通信社)がある。教育コラムなどの執筆多数。

Junko Takahashi

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