2018/06/15発行 ジャピオン971号掲載記事

スペシャリストに聞く

③採用までのプロセス

今月のテーマ:労務

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。


採用決定までのプロセスと注意点について聞いた。日本とは違う採用時のルールをよく理解することが重要。また、複数の採用担当者が一貫性のある判断ができる仕組みを作っておくことで、安全で効率的な採用が可能になる。



選考にあたって重要なことは?

 具体的な選考にあたっては、書類選考から面接、採用決定までのフローなどを標準化しておくことが重要です。多様な応募者に対して、選考に携わる複数の担当者が一貫性のある行動や判断ができる仕組みを作ることで、安全で効果的な採用ができます。

 面接について言えば、マニュアルの作成が挙げられます。米国では面接の際、会社概要は応募者全員に同じ内容を説明し、質問項目は応募者全員に共通するものを用意しておくことが原則です。仮に面接の内容が応募者によって大きく異なった場合、のちのち不採用者から差別クレームをされるリスクがあるからです。

 また、面接では、人柄だけで判断しないことも重要です。「この人は〇〇はできないけど、非常にいい人だ(と感じた)」といった理由で採用を決定してしまう傾向が見られますが、このような場合、就業が始まってから、この人は仕事ができないと評価を下すことになります。

 これは従業員と会社、双方にとって良いこととは言えません。質問項目や選考基準等を標準化してマニュアルに記載しておくことで、問題の発生を未然に防ぐことが可能になります。



面接は誰が行いますか?

米国では通常、 担当マネジャーが行います。ただし、担当マネジャーは人事の専門家ではないので、面接時に不適切な質問を行って問題になることがないように、人事担当者がいる場合は面接に立ち会うといいでしょう。



採用の際に試験を行うことは問題ありませんか?

例えば、エクセルの技術が必要な職種に応募してきた人に、エクセルが使えるかどうかのテストを行うなど、仕事に必要な技術を持っているかどうかを知るためのテストであれば問題ありません。一方、日本でよく実施されている性格診断テストのような試験は、仕事内容と関係がないので行うべきではありません。



雇用開始時の手続きについて教えてください。

署名入りのオファーレターを受け取った後に雇用開始日を迎えます。初日は、会社の中の案内や業務内容の説明、必要な機器のセットアップなどの他、人事労務面では各種ペーパーワーク(「Form I-9」や「Form W-4」の記入・受け取りなど)や給与支払いのセットアップなどの事務的な手続き、会社の規程(従業員ハンドブック)の説明などが行われます。



従業員ハンドブックとは?

 会社における雇用・労働に関するさまざまなルールが記載されたもので、日本の就業規則のようなものと理解すればよいでしょう。従業員にとっては自分の権利・義務を知るためのツールであり、会社にとっては一貫性をもって公平に従業員を処遇するために必須のツールです。

 一般的に、従業員ハンドブックには雇用機会均等の遵守や差別・ハラスメントの禁止などの法規制に加え、就業時間や休憩時間、給与支払いや残業代、休暇や休業、福利厚生、安全・衛生、電子機器の使用、問題が起こった際の対処など、人事労務に関して幅広く記載されます。

 現在の労働市場は売り手市場で、一般的には採用・リテンションが難しいといわれていますし、世間を大きく騒がせたセクハラ問題の余波は広がり続けています。そういったさまざまな課題に対処するためにも、従業員ハンドブックを整備するのは最低限の備えと言えるでしょう。

〈おことわり〉
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圓谷(つむらや)吉基さん

東京都世田谷区出身。米国コネティカット州ブリッジポート大学卒業後、情報通信系アウトソーサーの営業支援事業部、通信インフラ販売企業のカスタマー室、米系弁護士事務所のマーケティング部を経て、2017年に来米し現職。日米両方の人事労務管理を受けた経験を生かし、米国で闘う日系企業の活躍をサポートしている。

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