2018/06/08発行 ジャピオン970号掲載記事

スペシャリストに聞く

②米国における人材採用

今月のテーマ:労務

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。


日本と異なり、米国では空きポジションを埋めていく随時採用が主流。そこで、採用の流れや、採用前に準備すべきことについて話を聞いた。雇用形態の分類についても日本とは異なるので、確認しよう。



人材採用に関して、日米の違いを踏まえてお聞かせください。

まず、日本では一般的な新卒・定期採用が米国ではほとんど見られないことが挙げられます。米国では年齢を理由とした雇用上の決定は差別とみなされるため、日本の定年制のような仕組みを作ることがでません。従って、毎年決まった時期に、予見できる数の従業員が退職するということがないため、通常は、毎年同時期に一定数の人材を雇うことがないのです。このような背景もあり、米国では空きポジションを埋めていく随時採用が主流となっています。



米国における随時採用の一般的な流れは?

人を採用し、基本的な教育をしてから配属を決めていくという日本のやり方とは異なり、米国では採用活動を開始する時点で、採用した人をどのポジションに配置するかが決まっているため、採用の流れも異なってきます。

まず、①配置するポジションの職務範囲・職責、それらを遂行するための要件を明確にします。具体的には、それらを書面にした「ジョブ・ディスクリプション」を用意します。

そして、その後は大きく分けて、②募集、③集まったレジュメのスクリーニング(書類選考)、④面接の実施、⑤採用の決定と条件付き内定通知書の発行、⑥必要な雇用前テストの実施、⑦雇用開始と続いていきます。



「ジョブ・ディスクリプション」とは?

日本語では職務内容記述書と訳されますが、単にそのポジションの職務内容について詳細にリスト化したものというよりは、もう少し幅広く職務内容が記述されることが多いです。さらに、そのポジションの職務を遂行するために求められる知識・スキル・能力・経験・学歴・職歴の他、身体的要件(例えば、グラフィックデザイナー募集の場合は、色の識別ができる)などについても明記します。

それらが明確になっているからこそ、採用した後に「この人は違った」というようなミスマッチが起こる可能性が低くなり、効率的・効果的な採用ができるわけです。



「ジョブ・ディスクリプション」の作成以外にも、人材募集に当たってやっておくことは?

そのポジションの雇用形態や労働条件を決めておくことも大切です。

まず、雇用形態を大きく分類すると、直接雇用か、そうでないかの二つに分けられます。直接雇用に分類されるのは「従業員」であり、直接雇用でない分類としては「派遣スタッフ」や「インディペンデントコントラクター」などがあります。

「従業員」の場合ですと、さらに細かく、週の勤務時間の長さによりフルタイムとパートタイムとに分けられます。米国には、日本でいうアルバイトという区分けはなく、一般的には週40時間以上勤務する場合はフルタイム従業員として扱われます。

福利厚生に関しては、会社により対応はさまざまです。フルタイムの場合は、ほとんどの福利厚生を受けられるがパートタイムの場合は一部のみ、という会社が多いです。

また、残業代が出ない「エグゼンプト」、残業代が出る「ノンエグゼンプト」という分類もあります。

募集するポジションを、勤務時間にかかわらず固定給制となる「エグゼンプト」として扱うためには、連邦法である「FairLabor StandardsAct」や州法などで定められた一定の基準を満たす必要があり、会社の判断だけで「エグゼンプト」か「ノンエグゼンプト」か決定することはできないので注意が必要です。

〈おことわり〉
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圓谷(つむらや)吉基さん

東京都世田谷区出身。米国コネティカット州ブリッジポート大学卒業後、情報通信系アウトソーサーの営業支援事業部、通信インフラ販売企業のカスタマー室、米系弁護士事務所のマーケティング部を経て、2017年に来米し現職。日米両方の人事労務管理を受けた経験を生かし、米国で闘う日系企業の活躍をサポートしている。

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