2017/09/08発行 ジャピオン932号掲載記事

スペシャリストに聞く

②費用や納税義務

今月のテーマ:起業

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。


今週は起業とテーマに、知っておくべき基礎知識や法律について話を聞いている。今号では起業に際して、LLC、C法人、S法人それぞれの事業形態によって違う申請料金や初期費用、納税義務について聞いた。



会社の申請手続きに必要な費用について教えてください。

 ニューヨーク州への登記費用は、LLCは200ドル、コーポレーション(法人)は125ドルです。ただし、LLCの場合は、ニューヨーク州の規定により、会社設立を行ったカウンティーの新聞2紙で、LLC設立の告知を行わなければなりません。この費用はカウンティーごとに異なりますが、最も高いニューヨークカウンティー(マンハッタン)の場合は1000~1200ドル程度かかります。LLC以外にはこの規定はありません。

 いずれの形態を選ぶ場合も、弁護士を雇う場合は別途、弁護士費用がかかります。なお弊事務所では会社登記で必要となるさまざまな手続き(株券発行、議事録や附属定款作成など)をパッケージにしたサービスを提供しています。



「S Corporation(S法人)」と「C Corporation(C法人)」の違いを教えてください。

 C法人は日本でいう株式会社に当たり、日本のアメリカ法人の多くはこの形態になります。C法人を設立した後に税務上「Subchapter S Election」をIRSへ申請することで設立されるのがS法人の形態になります。つまりC法人もS法人も形態は株式会社になりますが、税理面で違いがあるということになります。

 例えばS法人の場合、株主は会社の利益と損失を個人の収入として税金申告をすることができます。逆にC法人は、税務上個別の事業体になりますので、会社としての納税義務が発生します。

 S法人は、株主は100人までで、通常、非永住権保持者の外国人は株主になれません。また、株の発行は1種類のみといった制約があります。

 S法人は企業が株主になることはできませんので、日本の多くのアメリカ法人の形態が必然とC法人になります。

 C法人はS法人に比べて事務、税務、法務面において複雑な事業形態になりますので、一般的に規模が大きい会社向きといえるでしょう。



LLC、S法人、C法人、それぞれの税金面の特徴とは?

 税務上、LLCはC法人のように個別の事業体として見なされないため、会社の収益や損失は、LLCの株主が個人の収入と合わせて納税申告することができます。

 前述の通りS法人もLLCと同じく、株主が会社の収益と損失を個人の収入として納税申告することができます。LLCと異なる点は、S法人の株主が会社から妥当な給与額を受け取ることで、会社の収益に対してのみ所得税を支払うことができる点になります。通常支払い義務がある社会保険税は会社の収益に対してではなく、会社から受け取る妥当な給与額に対してのみ発生しますので、節税が可能になります。

 一定のS法人の条件を満たせば、LLCもS法人と同様の節税対策ができる可能性があります。

 それに比べて、C法人は税務上、個別の事業体になりますので、会社の収益が株主に配当された場合ダブル課税となり、税務的には有利な形態ではありませんが、外国人の株主、無限数の株主や複数の種類の株を発行できるなど、LLCやS法人とは別の利点があると言えます。
 
〈おことわり〉
 当弁護士事務所は、記事内容に関して一切の責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。



SPECIALIST

塩原源基(げんき)さん

証券会社勤務を経て、NewYorkLaw Schoolに通い、弁護士資格を取得。2013年11月よりRBLPartners法律事務所にて勤務。会社設立、契約書の作成・レビューを含む一般企業法など、会社にまつわるさまざまな法的事項、商業用不動産、雇用・労務を担当。

RBL Partners PLLC

TEL
212-960-3953
MAIL
Info@rblpartners.com
WEB
http://www.rblpartners.com
MAP
225 Broadway, Suite 3005 (bet. Barclay & Vesey Sts.)

バックナンバー

NYジャピオン 1分動画