2017/07/21発行 ジャピオン925号掲載記事

スペシャリストに聞く

③オフィスビルの防犯

今月のテーマ:防犯

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。


近年のニューヨークでは複合ビルだけでなく、シェアオフィスに事務所を構える企業も増えてきている。今回はオフィスビルの防犯では、どんな点に注意したらよいのかを防犯の専門家に聞いた。



近年のオフィスビルを狙った空き巣被害の件数の増減は?

 実は近年、件数は激減しています。9・11米同時多発テロ発生以降、上場企業が入るようなニューヨークのオフィスビル(通称「グレードA」)では、ほとんど全てで入り口に警備員を置くようになったのが大きな理由です。法的な義務ではありませんが、警備員なしのビルは信用を獲得できないという考えが一般的になったからです。そのため、空き巣は徹底的に排除され、オフィスでの被害が減りました。それ以前は、クライスラービルのような場所でもラップトップパソコンが盗まれるといった被害が頻繁にありました。



警備員を置けないようなビルでは、どのような防犯対策をしているのですか?

 警備員を配置するとなると月に1シフト3000ドル以上の経費がかかります。そこまでの予算を出すのが厳しいビルでは、代替案として、建物入り口のドアに電子カードキーシステムを設置するようになりました。本体は「アクセスコントロール」と呼ばれる電子制御装置で、弊社の多くのクライアントも設置しています。かつてはドア1~2枚分の設置で1万ドル以上費用がかかりましたが、現在はコントローラーが安くなりもっと低費用で設置が可能です。毎日警備員を置けないビルにとって電子カードキーシステムは大変役に立つのです。



カードキーは従来の鍵に比べて防犯に効果的なのですか?

 カードキーの利点は、ユーザーの利用記録が全てコンピューターに記憶されることです。オフィスでの空き巣被害で以前よく起こっていたのは元従業員による犯罪です。何か理由をつけて、「退職後に鍵を返却する」と言いながら、結局返さずに数カ月後、あるいは数年後に鍵を使って押し入り、資料やコンピューター、その中に入っている情報を盗み出す手口です。

 特に怨恨(えんこん)を残して会社を去った人がこの手法で顧客リストや製品開発情報、投資情報、福利厚生情報、税金情報などを盗み悪用するケースがマニュアルキーの時代には数多くありました。
 カードキーならば、万一退職者が鍵を返却しなくとも、管理システムでそのカードキーではドアが開かないようにすることができます。また、それと知らずに未返却のカードキーで元の職場に入ろうと試みようものなら、管理システムが警告を発し、逆にすぐ身元がばれてしまいます。



ビルの入り口はカードで守る。では複合オフィスの場合、各事務所のドアは別途防犯装置をつけるべきでしょうか?

 そうですね。ビルの入り口は「第一次防衛線」。これはビルのオーナーが責任義務として守ります。

 一方、各事務所のドアは各企業が個々の責任で財産を守る「第二次防衛線」です。二つの防衛線が同時に機能しないと完璧なオフィスのプロテクションはできません。



二重の防衛線をかいくぐって侵入する犯罪者もいるのですか?

 例えばフードデリバリーを装ってオフィスに入り盗聴器を仕掛けインサイダー情報を盗みだすといった産業スパイ事件もありました。ウォール街の金融系企業のオフィスなどでは、守秘性の大変高い会話が交わされてますからね。最近のグレードAのビルでは、デリバリーを決して入館させません。オーダーした人がロビーまで取りにいくのが一般的です。




同じビルでもアパートで防犯で気をつけることは?

 警備員やドアマン、スーパーを備えた大型の集合住宅は、まず安全ですね。問題はイーストビレッジやブルックリン、クイーンズなどに多い中層アパートです。侵入の手口として一番多いのが「ファイアーエスケープ(非常階段)」を使うものです。非常時の避難用にいつでも降ろせる状態にしてあるのを逆利用して侵入してくるのです。2階まで登ったら、また階段を引き上げてしまえば気づかれません。あとはゆっくり物色して開いている裏窓から侵入するのです。中にはペンキ屋に扮して日中堂々と犯行に及ぶ侵入者もいます。

 侵入を防ぐには、非常階段のある窓をしっかり閉じておくことが重要ですが、厳重に施錠するのも万一の火災を考えると避難する際に障害になるので、悩ましいですね。

〈おことわり〉
 当社は記事内容に関して一切責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。



SPECIALIST

橋本晃宏さん

Safeco Risk Control, Inc.代表。1995年からセキュリティー関連のビジネスを始め、2004年に同社設立。セキュリティーシステム・スペシャリスト、リスクアナリストとして個人・企業向けに防犯管理サービスを提供している。元カリフォルニア州立短大講師。

Safeco Risk Control, Inc.

WEB
http://www.safecosurveillance.com

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