2017/07/14発行 ジャピオン924号掲載記事

スペシャリストに聞く

②防犯対策の抑止効果

今月のテーマ:防犯

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。


好景気の影響で空き巣や強盗が減った近年のニューヨークだが、油断は禁物。現代の犯罪は形を変えて忍び寄る。安全な生活を送るにはどうしたらよいかを専門家が解説する。



住宅を狙う空き巣強盗を防ぐには?

 やはり防犯システムを配備するのが一番です。25年ほど前のニューヨークでは、車のガラス窓を割ってカーラジオを窃盗する犯罪が相次ぎました。その時に防衛策として登場したのがハンドルに施錠する鉄製のロックです。これがかかっていると、まず車の窃盗はできません。そして無骨なロックを見るとラジオ狙いの窃盗犯も二の足を踏む。つまり一種の抑止効果がありました。住宅や事務所も同様で「防犯しているぞ」という姿勢を示すことが大事です。犯罪者は「警戒が甘い」「手入れがおざなり(窓ガラスが割れているなど)」といった物件を狙います。



防犯システムを設置すれば、入り口や玄関先にセキュリティー会社のステッカーが貼られます。

 はい。「防犯システム作動中」表示の抑止効果は絶大です。これがあるだけで、彼らは住宅への侵入をためらいます。また通常の空き巣被害通報では、殺人事件などの重犯罪と違って警察はなかなか出動しません。その点、システムが感知すればセキュリティ会社から警察に直接通報が届き、警官が現場に到着します。そして現行犯逮捕に至るケースも多くあります。犯罪予備軍の人間もそのことをよく知っているので、セキュリティー表示のある物件は避けるわけです。



防犯装置にも進歩があるのでしょうか?

 そうですね。最近の防犯カメラは非常に優れています。例えば、これはウェストチェスターやコネティカットの一軒家にお住いの日本人駐在員の方々に有益な情報ですが、地方出張や一時帰国で家を長時間留守にする場合や深夜の時間帯などには、指定した時間にタイマーをかけておくのです。その間、万一カメラが不審者の家宅侵入を察知すると、直ちにオーナーの携帯に動画を添付したテキストメッセージで通報が入ります。どんな離れたところにいようとも、いち早く自宅の安全管理が手元でできる。直ちに警察に通報すれば、現場に急行してくれます。何と言っても映像に犯人の姿が残りますから、これは強力な証拠となります。また、自宅で就寝中でも同様のテキスト通報を受け、すぐに庭のライトをつけるなどの手段で、コソ泥程度の侵入者はほぼ間違いなく退散します。あと留守中は新聞などが玄関口にたまらないようにしてください。



技術の進歩で住民と警察の距離は極端に縮まったわけですね。

 いま犯罪が減少しているもう一つの理由をお話ししましょう。それは、警察官の増員です。景気の動向と警察官の数は比例関係にあって、先のリーマンショック時には、一時市内に配備されていた4万6000人の警官が3万9000人にまで減らされました。そのため、市内の治安の悪化が危ぶまれたのですが、最近は景気の安定により警察予算が上昇。いま警察官の数は増えています。警官が多くなれば、当然、犯罪は減ります。



危険が伴う察官のなり手は、増加傾向にあるのですか?

 そこにも「経済学」が働くのです。1970年代はニューヨークの警察財政が逼迫(ひっぱく)して、彼らの職務条件が非常に悪かった。給料も低く、身の危険もある仕事です。そんな中で汚職や職務怠慢など腐敗構造ができ、ニューヨーク市警のイメージは非常にネガティブなものでした。酒場では制服姿でビールをあおる警官もいたほどです。

 ところが、最近は不動産価格が高騰していますね。市の不動産税収も増えました。おかげでその一部が警察官の退職パッケージに渡るようになり彼らは今、有利な年金制度の恩恵を受けています。市警は勤続20年で退職できるのですが、現役最後の年間給与支給額の半額を年金として退職後も死去するまで支払われます。したがって、退職前の数年は年金支給額を上げるために、猛烈に残業するのです。それまで年額10万ドルだったところを、死に物狂いで街の治安と犯罪検挙に貢献して、18万ドルぐらいまでに上げる。そうすると残りの生涯ずっと9万ドルの安定収入が約束される、というわけです。




このような状況は続くのでしょうか?

 それは分かりません。ニューヨークの景気動向いかんです。それが下がらないように警察官たちも日夜、街の安全を守っているわけです。

〈おことわり〉
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SPECIALIST

橋本晃宏さん

Safeco Risk Control, Inc.代表。1995年からセキュリティー関連のビジネスを始め、2004年に同社設立。セキュリティーシステム・スペシャリスト、リスクアナリストとして個人・企業向けに防犯管理サービスを提供している。元カリフォルニア州立短大講師。

Safeco Risk Control, Inc.

WEB
http://www.safecosurveillance.com

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