2017/07/07発行 ジャピオン923号掲載記事

スペシャリストに聞く

①ニューヨークの犯罪傾向

今月のテーマ:防犯

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。


最近は安全になったといわれるニューヨークだが、海外での生活に油断は禁物。当地の犯罪率や犯罪傾向の実情は正しく理解しておきたい。日々犯罪事情に目を光らせている防犯の専門家に聞く。



ニューヨークでの犯罪件数の変化は?

 まず犯罪発生率と景気動向の間には因果関係があると考えています。ご存知のように、米国は2000年代以来、右肩上がりで経済が伸張しています。1975年~85年ごろは、麻薬のまん延とギャングの抗争でハーレムをはじめ市内には凶悪地帯が多数ありましたが、今ではそんな危険はありません。ナイフや拳銃を使った路上強盗や現金目当ての暴行はかなり減りました。

 2008年のリーマンショックで一時、ニューヨークの犯罪発生件数が再び増加し不安がよぎりました。失業率が10%を超え、仕事にあぶれた人が犯罪に走ったのですが、オバマ政権下の財務省が巨額の公的資金を市場に注入したおかげで、経済は活気を取り戻し、今では失業率4・5%を割る(2017年5月の米労働省発表は4・3%)ほどです。現政権下でもこの勢いは止まりません。



犯罪が減り、安全になったのですか?

 そうとも言えません。好景気で減ったのは強盗、暴行、殺人、空き巣など犯罪者自身も身の危険を伴う犯罪、「ブルーカラー犯罪」です。一方でコンピューターやハイテクを悪用する「ホワイトカラー犯罪」というものがあります。高度に専門的な技術を使って個人や企業の金融アカウントなどに侵入し、口座情報や顧客情報を盗み出して多額のお金を詐取するといった類のものです。こちらの方がはるかに被害総額が大きいため、全体的な犯罪被害額は、昔と変わらないのです。その意味では、犯罪は形を変えて増えているといえます。「血は見ないけど金は盗られている」ということです。被害総額でも加害総額でも米国は世界で断トツです。



スマホを狙う犯罪は今も多いのですか?

 これは、状況が変化しました。スマホ、特にiPhoneを専門に狙う路上盗難(スニッチング)が急増したのは5~6年前。当時は、iPhoneが大人気で生産が追い付かず、開発途上国では驚くべき高額で中古のiPhoneが売れました。デバイス自体はもちろん、その中に入っていた銀行情報や個人情報も高く売れました。そのため、ポケットからiPhoneをすられた、あるいはグループに囲まれ脅し取られたというような事件が多発しました。当時、ニューヨーークはiPhone盗難の発生件数では全米一でした。中には殺人に至ったケースまであります。ところが、メーカーは対策として指紋認証などを取り入れたため、中古iPhoneの違法売買の市場は壊滅し、この手の犯罪は激減しました。これはテクノロジーが犯罪防止に貢献した例です。



犯罪が多いエリアはまだあるのですか?

 一つは移民の多い地区です。移民が犯罪を起こすのではなく、被害者になりやすいのです。5~6年前にクイーンズのエルムハーストでアジア系女性ばかりを狙った路上強盗やレイプが続発しました。彼女たちは英語が堪能でなく、警察との連絡経路も乏しく、そのために被害届も出さずに泣き寝入りする場合が多いのです。犯罪者にとっては実に都合の良い環境なので、2回目、3回目の犯行に及びます。またアジア系女性が外出時に現金を持って歩くという習慣も、犯罪誘発の原因になっていました。社会の中でも犯罪被害者になりやすい層が存在します。



犯罪多発エリアを見分けるには?

 スポットクライム(www.spotcrime.com)というウェブサイトに行くと全米の犯罪発生地点が地図上に示されています。自宅周辺の地図を開けてみると、軽犯罪は意外に身近に起きていることが分かります。同サイトでは、犯罪発生の場所、日時、犯罪タイプまでシンボルマークで分かりやすく表示しているので参考になります。同サイトによると、ブルックリンのブラウンズビルが群を抜いて犯罪発生が多いですが、これは地元のギャング抗争が原因です。日本人居住者も少ないエリアなので、特に用がない限りは近付かないことです。

〈おことわり〉
 当社は記事内容に関して一切責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。



SPECIALIST

橋本晃宏さん

Safeco Risk Control, Inc.代表。1995年からセキュリティー関連のビジネスを始め、2004年に同社設立。セキュリティーシステム・スペシャリスト、リスクアナリストとして個人・企業向けに防犯管理サービスを提供している。元カリフォルニア州立短大講師。

Safeco Risk Control, Inc.

WEB
http://www.safecosurveillance.com

バックナンバー

NYジャピオン 1分動画