2017/06/16発行 ジャピオン920号掲載記事

スペシャリストに聞く

③バックグラウンドチェック

今月のテーマ:米国における雇用・人事労務管理

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。


米国で人材採用を行う際には、日本とは異なるルールに従わなければならない。選考の参考にするためにSNSを閲覧したり、バックグラウンドチェックを実施する際の注意点などについて聞いた。



人材採用の選考過程で試験を実施することは問題ありませんか?

 職務遂行に必要なスキルを持っているかどうかを知るためであれば問題ありません。例えば日常的にエクセルを使う業務があるポジションの採用で、エクセルの習熟度を確かめるための試験などです。日本でよく実施されている性格診断テストのようなものは仕事とは直接関係ないので、実施すべきではありません。



選考に際して応募者のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を閲覧することは問題ありませんか?

 公開されているものであれば閲覧自体は問題ありませんし、実際に多くの企業が参考情報として閲覧していると思います。しかし、非公開の情報を見るために応募者にID、パスワードの提示を求めてはいけません。

 また、応募者のSNSから得た情報だけを理由に採用・不採用を決定することには慎重になった方がいいでしょう。



採用者を決定した際に条件付内定通知書を発行するということですが、雇用契約書ではないのでしょうか?

 米国では多くの場合、雇用契約書は使わず、オファーレターという書類を使います。雇用契約書は、米国では「有期」つまり契約期間が定められている場合に使うもので、例えばエグゼクティブなどの上位職のように一定期間に明確な成果を要求されるポジションや、特別なプロジェクトで期間が決まっているポジションの場合に使われます。

 一方、米国で一般的な雇用関係を成立させる「At- willEmployment(任意雇用)」のもとでは期間が定められないため、多くの場合、オファーレターを使います。「At-willEmployment」とは、理由の有無に関わらず、また、事前通知の有無に関わらず、雇用主も従業員側も、いつでも雇用関係を解消できるというものです。

 オファーレターには、ポジション、雇用開始日、雇用開始時点の給与、雇用関係が「At-will」であること、各種条件(雇用前テストの結果など)が記載されます。



雇用前テストとは、バックグラウンドチェックと言われるものですか?

 そうです。ソーシャルセキュリティー番号が存在するか、犯罪歴があるかなどを調査するもので、学歴や職歴を調査する場合もあります。ドライバーのように業務上で運転が不可欠な職種の場合は、運転歴を調査することもあります。

 犯罪歴に関しては、ニューヨーク市ではオファーレターを発行する前に調査を行ってはいけないと規定されています。また、他にもさまざまな規制があるので、雇用前調査を実施する際には注意が必要です。
 会計・経理などのお金を扱うポジションの場合はクレジットレポートを調査することもあるかもしれませんが、この調査に対して厳格な規定を設けている州もあり、この傾向は、今後多くの州に広がっていくと思われます。

 また、調査結果の使用についても明確なルールがあります。調査結果に基づいた採用・不採用の決定に際しては明確なプロセスが規定されており、それに従わなければなりません。バックグランドチェックを実施する際には、調査を依頼する専門家に詳しく確認してください。

〈おことわり〉
 当社は記事内容に関して一切の責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。


SPECIALIST

三ツ木良太さん

シカゴ生まれ。学習院大学法学部を卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)、ニューヨークに本社を置くコンサルティング会社を経て、2009年からHRM Partnersに在籍。各地の商工会等での数々の講演・セミナーを行い、日系紙でのコラム連載、組織・人事労務管理等に関する記事も多数執筆。

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