2017/06/09発行 ジャピオン919号掲載記事

スペシャリストに聞く

②ジョブ・ディスクリプション

今月のテーマ:米国における雇用・人事労務管理

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。


米国には新卒一斉採用や定年制度がなく、人材採用は空きポジションを埋めるための随時採用が基本。人材採用の流れも日本とは異なり、「ジョブ・ディスクリプション」が非常に重要になる。



人材採用について、日米の違いも踏まえてお聞かせください。

 米国で人材を雇用する上で知っておいた方がよいことや意識しておいた方がよい基本的なことについては前回述べました。

 人材採用については、よく言われるように、米国には一部の例外を除いて日本のような新卒一斉採用・定期採用がない点が日本とは大きく異なります。

 雇用差別について前回少しお話ししましたが、米国では年齢を理由とした雇用上の決定ができません。言い換えると、日本の定年制のように一定年齢に達した方々が退職するような制度を作れないのです。

 同時期に何人も退職することがないので、同時期に何人も採用するということもないわけです。このような背景があるため、米国では空きポジションを埋めていくような随時採用となります。



米国における一般的な採用の流れは?

 人を採用し、基本的な教育をしてから配置していくという日本式とは異なり、米国では採用活動を開始する時点で、どのポジションに配置するかが決まっているのが前提になるため、当然、流れも変わってきます。

 そこで最初に、①採用した人を配置するポジションの職務範囲・職責、それらを遂行するための要件を明確にします。米国には、それらを書面にした「ジョブ・ディスクリプション」というものがあります。その後は大きく分けて、②募集、③集まったレジュメのスクリーニング(履歴書内容による選考)、④面接の実施、⑤採用の決定と条件付内定通知書の発行、⑥必要な雇用前テストの実施、⑦雇用開始と続いていきます。



ジョブ・ディスクリプションとは?

 簡単に言うと、そのポジションの職務内容を記述したものです。単に職務を細かくリスト化したものというよりは、もう少し幅広く職務内容が記述されるのが一般的です。さらに、そのポジションの職務を遂行するために求められる知識・スキル・能力・経験・学歴・職歴の他、身体的要件(例えば、グラフィックデザイナー募集の場合は、色の識別ができる)などについても明記します。それらが明確になっているからこそ、採用した後に「この人は違った」というようなミスマッチが発生する可能性が低くなり、効率的・効果的な採用ができるわけです。ちなみに、ジョブ・ディスクリプションは評価や給与額決定の際にも非常に重要な役割を果たします。



選考段階全体で注意すべきことは?

 大きく分けて二つあります。一つは人柄だけで判断しないこと、もう一つは応募者全員を公平に扱うことです。

 よく見られるのが、「この人は〇〇はできないけど、非常にいい人だ(と感じた)」といった理由で採用を決定してしまう傾向です。ところがあとになって、この人は仕事ができないという評価をする。これは従業員にとっても会社にとってもよくないことは言うまでもないと思います。

 次に応募者全員を公平に扱うという点ですが、例えば面接の際、会社概要は応募者全員に同じ内容を説明し、質問項目は応募者全員に共通するものを用意しておくことが原則です。仮に面接の内容が応募者によって大きく異なった場合、のちのち不採用者から差別クレームをされるリスクがあるからです。質問内容にも注意が必要です。

 「この人は、このポジションの職務を遂行できるか?」という点に集中し、興味本位で個人の属性に関することは聞かないようにしましょう。

〈おことわり〉
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SPECIALIST

三ツ木良太さん

シカゴ生まれ。学習院大学法学部を卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)、ニューヨークに本社を置くコンサルティング会社を経て、2009年からHRM Partnersに在籍。各地の商工会等での数々の講演・セミナーを行い、日系紙でのコラム連載、組織・人事労務管理等に関する記事も多数執筆。

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