2017/06/02発行 ジャピオン918号掲載記事

スペシャリストに聞く

①日米での採用・雇用の違い

今月のテーマ:米国における雇用・人事労務管理

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。


人材の採用・雇用に関する法律や規制は日本と米国では大きく異なる。日本で通用していた意識のままだと、思わぬ問題を引き起こすこともある。米国における雇用や人事・労務管理の基本について専門家に聞いた。



日米の違いを踏まえて、米国で人材を雇用する上で知っておいた方がよいことを教えてください。

 非常に幅広いですが、最低限の雇用法・労働法や規制は知っておいたほうがよいでしょう。

 例えば、「Title VII of the Civil Rights Act of 1964(公民権法第7編)」や「Equal EmploymentOpportunity(雇用機会均等法)」については聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

 ご存知の通り、米国においては採用・昇進・昇給・異動などの雇用上のどのような決定においても、候補者(応募してきた人)や従業員に対して、人種・肌の色・宗教・性別・出身国・年齢などを理由に差別的な扱いをすることが厳しく禁止されており、そのことは前記の法律に加え、その他の多くの差別禁止法で明確に規定されています。日本で言うところの「差別」とはずいぶん違うことに気付くのではないでしょうか。



法律を知ることは大変なことだと思いますが。

 法律の名称や詳細を覚えるのは大変かもしれませんが、まずは「候補者や従業員は何らかの法律で守られている」という程度のレベルでも意識しておくことが重要です。

 また、差別を禁止する以外にも、賃金・労働時間、休暇・休業、福利厚生など、雇用の開始から終了に至るまで、守らなければならない事項は複雑多岐に渡ります。この辺りは日本と似たような部分もありますが、内容が大きく異なることの方が多いです。

 さらに、法律だけで判断できないことも多くあるということに十分注意することが必要です。法律には解釈の余地があり、法律で明確に規定されていなくても、判例に基づいて守らなければならない、もしくは気をつけたほうがよいことは変わっていくためです。



法律以外ではどのような点を意識しておくべきでしょうか?

 どのような場面でも、書面とコミュニケーションの両輪で動かしていくという意識で対処することが重要です。日本から赴任された方は、いまだにコミュニケーションに頼る傾向が強いと感じますが、何か問題が起こったときに「言った、言わない」の議論になることが往々にしてあります。

 コミュニケーションももちろん大事ですが、記録を残しておくことで、そのような事態を避けることができます。こういう話をすると、「手間が掛かって面倒」と言われることもあるのですが、問題に適切・迅速に対処するためにも、面倒がらずに書面での対応も実施するようにしましょう 。



具体的にはどのような場面が考えられますか?

 分かりやすい例としては、採用面接や評価面談が挙げられます。一方、日本の感覚では気付きにくいのが、従業員の勤怠やパフォーマンスが悪いときの対応です。注意したり話し合ったりしますが、それを口頭だけで済ませていることはないでしょうか。

 一度だけで改善されればいいですが、こういうケースでは後になって同じようなことで再度注意したり話し合う必要が出て来ることがあります。いつ、どのようなことが問題になったのかを記録しておくことで、従業員との間の言った言わない議論を避け、状況のさらなる改善や次のアクションにつなげることも可能になります。また、評価の際の参考情報にすることもできるようになります。

〈おことわり〉
 当社は記事内容に関して一切の責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。


SPECIALIST

三ツ木良太さん

シカゴ生まれ。学習院大学法学部を卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)、ニューヨークに本社を置くコンサルティング会社を経て、2009年からHRM Partnersに在籍。各地の商工会等での数々の講演・セミナーを行い、日系紙でのコラム連載、組織・人事労務管理等に関する記事も多数執筆。

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