2016/06/24発行 ジャピオン870号掲載記事

スペシャリストに聞く

④各種の書類や規則

今月のテーマ:労務

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。

米国における一般的な雇用関係である「アットウィル」や、雇用主が用いる「従業員ハンドブック」「ウオーニングレター」について、また新制度「ペイド・ファミリー・リーブ」について専門家に聞いた。


「アットウィル」と雇用関係についてご説明ください。

 「アットウィル」とは米国における一般的な雇用関係で、雇用者側も被雇用者側も、いつでも理由の有無にかかわらず、事前の通知なしに雇用関係を解消できるというものです。

 ただし、1960年代中盤以降、雇用差別を禁じる法律が次々と施行され、「アットウィル」を雇用関係の基本としつつも、雇用主は採用時から雇用中、雇用終了時の対応など雇用全般を通じ、差別的な対応を行わないように十分に注意する必要があります。


「従業員ハンドブック(就業規則)」は?

 会社が決めた雇用のルール、就労規則を記載したものが「従業員ハンドブック」です。会社は「従業員ハンドブック」に定めたルールに違反した従業員に対して、注意、懲戒、解雇処分を行うことができます。ただし、従業員ハンドブックは契約書ではありません。


「ウオーニングレター」とは何ですか。

 遅刻が多い、会社の規則を守らない、パフォーマンスに問題があるなどという場合に、その従業員に対して書面で注意を行うためのレターです。口頭で注意を行うのは当然として、記録があった方が雇用問題に発展した場合に証拠として効力が強くなります。米国では書面で記録を残しておくことが非常に重要です。


守秘義務の観点から、SNSの使用に関して就業規則にはどのような規定を盛り込めばよいですか。

 一般的な情報の守秘に関しては、「企業秘密に当たることは社外に出さない」という規定を就業規則に記載すべきです。企業秘密に接する機会が多い従業員に対しては、「守秘義務同意書」という契約書に別途サインしてもらうことをお勧めします。

 また、自社、他社を問わず、誹謗(ひぼう)中傷をするような書き込みは禁止すべきです。


「ノン・コンピート・アグリーメント(競業避止契約)」とは何ですか。

 会社を辞めた従業員が競合他社に就職することを一定期間制限する契約で、企業秘密が他社に漏れることを防ぐことを目的としています。条件の設定が難しいので、作成に当たっては必ず専門家から助言をもらうようにしてください。


「エグゼンプト」の最低賃金が改定されたそうですね。

 給与が時給によって支払われる「ノンエグゼンプト」の最低賃金は毎年改定されますが、年俸制の「エグゼンプト」の最低賃金は長年据え置かれていました。先月、これをこれまでの週455ドルから、913ドルへ(年俸換算で2万3660ドルから4万7476ドルへ)、大幅に引き上げるという発表がありました。一方、ニューヨーク州における「ノンエグゼンプト」の最低時給は現在9ドルで、地域や企業規模によって施行時期などは異なりますが、今後は段階的に15ドルまで引き上げられることになっています。


人事、労務関連で新しい傾向や話題はありますか。

 ニューヨーク州の「ペイド・ファミリー・リーブ」制度の導入が発表されました。これは、新生児のケアや重篤な状況にある家族のケア等が必要な人が、最長12週間の有給での休業が取得できる制度です。

 従業員のペイロールから一定の金額がファンドに貯まっていき、そのファンドを使って州が補てんするため、雇用主に対する負担はありません。2018年に開始され、2021年に完全施行になる予定です。

〈おことわり〉
 HRМパートナーズ社は、記事内容に関して一切の責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。


スクリーンショット 2016-06-02 14.51.41

三ツ木良太さん

シカゴ生まれ。学習院大学法学部を卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)、コンサルティング会社を経て、2009年からHRM Partnersに在籍。各地の商工会などで講演、セミナーを催しているほか、組織、人事労務管理関連のコラム記事も執筆している。

HRM Partners, Inc.

TEL
212-878-6683
WEB
http://www.hrm-partners.com
MAP
641 Lexington Ave., Suite 1425 (Corner at 54th St.)

バックナンバー

NYジャピオン 1分動画