2016/06/17発行 ジャピオン869号掲載記事

スペシャリストに聞く

③雇用契約

今月のテーマ:労務

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。

雇用契約、ジョブディスクリプション、従業員ハンドブックなどの目的や、そこに盛り込むべき内容、使用法について聞いた。最近は、SNSの使用に関してルールを設ける会社も増えているといった現状も解説してもらった。


雇用契約にはどのような内容を盛り込めばいいのでしょうか?

 米国では、多くの場合は雇用契約書を使わず、雇用条件を記載したオファーレター(内定通知書)を使います。オファーレターには、ポジションや雇用開始日、試用期間を設けている場合はその期間、雇用関係がアットウィル(雇用期間が決まっておらず、雇用主も従業員も、いつでも、いかなる理由でも、事前の通知なしに雇用関係を解消できる)であることも明記します。

 エグゼクティブなどの上位職や、特別なプロジェクトで期間が決まっている仕事やポジションの場合は、雇用契約書を交わすこともあります。その場合は、雇用期限や契約途中解除時の対応などを契約書に記載します。


「ジョブディスクリプション」について教えてください?

 「ジョブディスクリプション」とは、そのポジションの職責や職務内容の他、求められる学歴、職歴、経験、身体要件など(例えば、グラフィックデザイナー募集の場合は、色の識別ができるなど)を記載した職務記述書です。仕事の内容や求められる能力について、会社と従業員が共通理解を持つための書類で、人材を募集する際や雇用期間中に使用されます。合理的な理由があれば、会社がジョブディスクリプションの内容を変更することは可能です。


「従業員ハンドブック」とは?

 会社のマネジメントが一貫性を持って公平に従業員を処遇できるように、会社のルールを記載したものです。従業員にとっては、自分の義務と権利を知るためのツールといえます。従業員ハンドブックには、雇用機会均等の遵守、差別やハラスメントの禁止、就業時間や給与の支払い規程、コンピューターの使用に関する規則など、人事労務に関わる多くのことについて記載されます。また、最近では、例えば、「会社側はSNSで得た情報を使って雇用上の決定をしない」、「従業員は顧客情報や企業秘密などを投稿しない」など、SNSの使用に際してのルールを盛り込む会社も増えています。


雇用形態の種類とそれぞれの特徴は?

 雇用形態は、大きくは社員(勤務する会社が給与を支払う)、派遣(派遣元が給与を支払う)、コントラクターまたはフリーランス(グロスで報酬を受け取り、タックスリターンを自分で行う。ベネフィットはなし)に分類できます。

 社員はさらに設定労働時間により、就労時間が週40時間以上のフルタイム と、週40時間未満のパートタイムに分けられます。両者の違いは基本的に労働時間のみです。日本でいうアルバイトは就労時間によりますが、通常はパートタイムに区分されます。

 福利厚生に関しては、会社により対応はさまざまです。フルタイムの場合はほとんどの福利厚生を受けられますが、パートタイムの場合は一部のみ、というのが一般的です。

 さらに、残業代が出ない「エグゼンプト」、残業代が出る「ノンエグゼンプト」という分類もあります。「エグゼンプト」扱いにするには、連邦法や州法等で定められている一定の基準を満たす必要があります。


「ペイド・シックリーブ」の現状は?

 「ペイド・シックリーブ(有給病気休暇)」を法制化する州や市が増えており、ニューヨーク市でも、一昨年から5人以上の従業員がいる企業に対して、「ペイド・シックリーブ(有給病気休暇)」の提供が義務化されました。

〈おことわり〉
 HRMパートナーズ社は、記事内容に関して一切の責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。


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三ツ木良太さん

シカゴ生まれ。学習院大学法学部を卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)、コンサルティング会社を経て、2009年からHRM Partnersに在籍。各地の商工会などで講演、セミナーを催しているほか、組織、人事労務管理関連のコラム記事も執筆している。

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