2016/06/10発行 ジャピオン868号掲載記事

スペシャリストに聞く

②バックグラウンドチェック

今月のテーマ:労務

文化、習慣、法律も違う海外で暮らす上で頼りになるのはスペシャリスト。日常生活を送る上で必要となる、また気になるテーマについて、さまざまなジャンルのスペシャリストたちに話を聞く。

試用期間を設ける際の注意点や、バックグラウンドチェックについて聞いた。法改定で、 オファーレターを出す前の犯罪歴調査ができなくなった点に注意が必要。違反するとペナルティーの対象になる可能性がある。


試用期間に関して注意すべきことは?

 試用期間の設定は米国の法律で義務付けられていないため、設定してもしなくても問題ありません。また、期間は 3カ月が一般的ですが、それよりも長くても短くても問題ありません。ただし、試用期間中であるかないかによって給与に大きな差を設けることはあまりしません。日本語では「試用期間」と訳されますが、米国では雇用開始時から正社員であることに変わりはないからです。健康保険などのベネフィットなどを試用期間終了後から提供することはあります。

 試用期間中のパフォーマンスを見て継続雇用するかどうか決定したい場合は、パフォーマンスに関する記録をとっておき、人事決定の裏付けとすることをお勧めします。

 試用期間を設けない企業もあります。理由はさまざまですが、例えば試用期間中に健康保険などのベネフィットを提供しないことによって、優秀な人材が確保しにくくなるといったデメリットがあるためです。


バックグラウンドチェックとは?

 身上調査のことです。基本となるのはソーシャルセキュリティー番号(SSN)と犯罪歴の調査で、ドライバーなど、業務上で運転が不可欠な職種の募集の場合は、運転歴の調査を行うこともあります。犯罪歴に関しては、ニューヨーク市では法律が改定され、オファーレターを出す前に調査してはいけなくなりました。他にもさまざまな規制がありますが、これらに違反した場合、ペナルティーを科せられる可能性があります。

 右記に加え、学歴や職歴を調査する場合もあります。会計などのポジションに採用する場合はクレジットレポートの調査を行うこともありますが、この調査に関して厳格な規定を設けている州もあり、こうした傾向は、今後多くの州に広がっていくと思われます。


バックグラウンドチェックをする理由は?

 後々のリーガルリスクを減らすという理由と、募集するポジションに求める要件を応募者が満たしているかどうかを知るために行います。

 例えば、経理担当マネジャーを募集するとして、経理の職務経験が最低10年程度は必要だとします。採用の世界では、「レジュメの内容と事実が異なる可能性がある」と考えるのが一般的ですので、職歴を調査しない場合、要件を満たさない人材を採用してしまう可能性も考えられます。結果として、採用取り消し、解雇、新規募集をするなど、想定しなかった時間やコストがかかるとともに、リスクが増大します。


バックグラウンドチェックの結果はどのように使用するべきですか。

 まず重要なのは、結果だけを単純に見て、感覚で採用・不採用を決定しないことです。

 例えば調査で過去に犯罪歴があることが分かった場合は、その時期を考慮する必要があります。どの程度過去までさかのぼるかはケースによって異なりますが、7年を一つの目安とするのが一般的です。判断が難しい場合は、人事担当や人事の専門家に相談することをお勧めします。


バックグラウンドチェックの費用と時間について教えてください。

 バックグラウンドチェック調査会社に依頼する場合、調査会社や州によっても異なりますが、SSNと犯罪歴、運転歴だけであれば1人60ドル程度でしょう。勤務歴調査の場合は、過去の勤務先に電話などで確認を行うため、時間もコストもかかります。

〈おことわり〉
 当社は、記事内容に関して一切の責任を負いかねます。詳細は各専門家にご相談ください。


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三ツ木良太さん

シカゴ生まれ。学習院大学法学部を卒業後、日本電信電話株式会社(NTT)、コンサルティング会社を経て、2009年からHRM Partnersに在籍。各地の商工会などで講演、セミナーを催しているほか、組織、人事労務管理関連のコラム記事も執筆している。

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